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#キシリトールで心臓発作や脳卒中が増える?

#キシリトールで心臓発作や脳卒中が増える?

話題の研究を歯科医師が正直に読み解きます

「先生、ネットで見たんですけど、キシリトールって心臓発作や脳卒中のリスクが2倍になるって本当ですか?」

先日、定期メインテナンスに来られた患者さんから、スマホの画面を見せられながらこんな質問を受けました。

キシリトールは、私たち歯科医師が長年むし歯予防の補助として患者さんにおすすめしてきた甘味料です。そのキシリトールに「血管のリスク」という話が出てくれば、不安になるのは当然だと思います。

今回は、この研究が実際に何を調べ、何がわかって、何がまだわかっていないのかを、元の論文に立ち返ってできるだけ正確にお伝えします。

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## まず、キシリトールとはどんなもの?

キシリトールは、白樺やトウモロコシの芯などに含まれる「糖アルコール」の一種です。ニュースでは「人工甘味料」とひとくくりにされることがありますが、もともと植物に含まれる成分で、実は私たちの体の中でも少量つくられています。

砂糖とほぼ同じ甘さがありながら、むし歯の原因菌(ミュータンス菌)が酸をつくる材料になりにくいため、ガムやタブレット、歯みがき剤などに使われています。

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## どんな研究だったのか

話題のもとになったのは、米国クリーブランド・クリニックのStanley Hazen博士らのグループが、2024年に循環器分野の代表的な学術誌『European Heart Journal』に発表した論文です。研究は大きく3つの部分からできています。

**① 患者さんの血液を調べた観察研究**
心臓の検査を受けた米国・欧州の患者さん約3,300人の、一晩絶食した後の血液中のキシリトール濃度を測り、その後3年間の心臓発作・脳卒中・死亡の発生を追跡しました。その結果、血中キシリトール濃度が最も高いグループは、最も低いグループに比べて、これらの発生リスクが**約1.6倍**(ハザード比1.57)でした。

報道では「2倍」という数字も見かけましたが、論文の検証用データで示された数字は約1.6倍です。

**② 実験室・動物での研究**
キシリトールを血小板(血を固める細胞)に加えると、血小板が反応しやすくなり、マウスでは血栓ができやすくなることが示されました。

**③ ボランティアに飲んでもらう試験**
健康な10人に、キシリトール30gを溶かした水を飲んでもらったところ、血中のキシリトール濃度は1,000倍以上に上がり、30分後には全員で血小板が固まりやすい状態になっていました。この濃度は数時間で元に戻っています。

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## 歯科医師として、冷静に押さえておきたい4つのポイント

### 1. 「関連がある」と「原因である」は別のこと

①の観察研究が示したのは「血中キシリトールが高い人に心血管の病気が多かった」という**関連**です。キシリトールが病気の**原因**だと証明したわけではありません。著者ら自身も、心血管への安全性をさらに調べる研究が必要だと結論しています。

### 2. 測ったのは「食べたキシリトール」とは限らない

観察研究の採血は一晩絶食した後に行われており、参加者が何を食べていたかの記録もありません。キシリトールは体内でもつくられるため、血中濃度が高かった理由が食事なのか、体の代謝の状態なのかは、この研究ではわかりません。

### 3. 試験で使われた量は「30g」

③の試験の30gは、加工食品や飲み物で甘味料として大量に使われる場面を想定した量です。むし歯予防の目的で使うガムやタブレットは1粒あたりの量がずっと少なく、30gは一般的な製品を何十粒もまとめてとるのに相当します。ただし、少量なら確実に安全だと証明した研究もまだありません。

### 4. その後、別の見方も出ている

2025年に『Cardiovascular Research』誌に掲載された総説では、遺伝情報を使った解析(メンデルランダム化研究)や、治療のために大量のキシリトールを点滴された重症患者さんのデータでは、明確な心血管リスクは示されていないと整理されています。一方で、血小板への一時的な影響については今後の検証が必要とされており、結論はまだ出ていない段階です。

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## 歯みがき剤はどうすればいい?

研究を率いたHazen博士自身も、報道発表の中で「キシリトール入りの歯みがき剤を捨てなさいという意味ではない」という趣旨を述べています。そのうえで、キシリトールを多く含む製品をとることには注意を払うべきだ、とも付け加えています。

歯みがき剤は飲み込まずに吐き出して使うものなので、体に入る量はごくわずかです。

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## むし歯予防におけるキシリトールの「本当の実力」

ここも正直にお伝えします。

国際的な医療評価機関コクランが2015年にまとめた検証では、**フッ素入り歯みがき剤にキシリトールを加えると、フッ素だけの歯みがき剤よりむし歯が約13%少なくなる可能性がある**とされました。ただし証拠の質は「低い」と評価されています。ガムやタブレットなど、そのほかのキシリトール製品については、効果があるかどうか判断できるだけの質の高い研究が不足している、という結論でした。

つまり、むし歯予防の柱は今も**フッ素・毎日の歯みがき・食生活(だらだら食べない)・定期的なメインテナンス**です。キシリトールは、その土台の上で使う「補助」と考えるのが、いま言える正確なところです。

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## これからどうすればよいか(当院からのおすすめ)

- **キシリトール入りの歯みがき剤は、これまで通り使って大丈夫です。** しっかり吐き出し、すすぎすぎないようにしましょう。
- **ガムやタブレットは「少量を、目的をもって」。** 製品の表示どおりの量を守り、おやつ代わりに大量に食べることは避けましょう。
- **「シュガーフリー」「糖質ゼロ」の加工食品や飲み物を大量にとる習慣は見直しを。** 甘味料が何g入っているかは成分表示で確認できます。
- **心臓や血管の病気がある方、血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は、** 気になることがあれば主治医に相談してください。歯科でももちろんご相談に応じます。
- **お口の健康と全身の健康はつながっています。** 歯科の定期メインテナンスと、内科での健診・血液検査を両方大切にしてください。

新しい研究が出るたびに、情報は少しずつ更新されていきます。大切なのは、見出しの数字だけで判断せず、「何を調べた研究なのか」を確かめることです。わからないことがあれば、いつでも遠慮なく診療室で聞いてください。

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## 参考文献

1. Witkowski M, Nemet I, Li XS, et al. Xylitol is prothrombotic and associated with cardiovascular risk. *European Heart Journal*. 2024;45(27):2439-2452. https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehae244
2. Beer JH, Allemann M. Xylitol: bitter cardiovascular data for a successful sweetener. *European Heart Journal*. 2024;45(27):2453-2455. https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehae252
3. Wölnerhanssen BK, Meyer-Gerspach AC, et al. Sweeteners: erythritol, xylitol and cardiovascular risk—friend or foe? *Cardiovascular Research*. 2025;121(9):1319-1329. https://doi.org/10.1093/cvr/cvaf091
4. Riley P, Moore D, Ahmed F, Sharif MO, Worthington HV. Xylitol-containing products for preventing dental caries in children and adults. *Cochrane Database of Systematic Reviews*. 2015;(3):CD010743. https://doi.org/10.1002/14651858.CD010743.pub2
5. Cleveland Clinic Newsroom. Cleveland Clinic-Led Study Links Sugar Substitute to Increased Risk of Heart Attack and Stroke. 2024年6月6日. https://newsroom.clevelandclinic.org/2024/06/06/cleveland-clinic-led-study-links-sugar-substitute-to-increased-risk-of-heart-attack-and-stroke

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