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歯ぐきが悪いと、仕事の調子も落ちる? ― 約1万7千人の調査からわかったこと

歯ぐきが悪いと、仕事の調子も落ちる?

 約1万7千人の調査からわかったこと

この記事のポイント

  • 歯周病のある人は、ない人に比べて「仕事の調子が出ない」と感じている人が多いことがわかりました
  • ただし「歯周病が原因で調子が落ちる」とまでは、まだ言えません
  • はっきり言えるのは、健康に長く暮らすために、歯周病の手入れが大切だということです

「最近、仕事に集中できない」
「ちゃんと寝たのに、昼間ぼーっとしてしまう」

こんな経験はありませんか?
原因として、睡眠不足や食生活、運動不足などがよく挙げられます。でも実は、歯ぐきの状態も関係しているかもしれません。

製薬会社の第一三共ヘルスケアと東北大学が一緒に行った研究で、歯周病のある人は、仕事の調子が落ちている人の割合が高いことがわかりました。この結果は、2026年10月末に開かれた「日本公衆衛生学会」という学会で発表されました。

1. どんな調査?

歯周病は、歯を支える歯ぐきや骨に炎症が起きる病気です。
放っておくと歯がぐらぐらして、やがて抜けてしまいます。

今回の研究では、2022年に全国で行われたインターネットのアンケートを使いました。
そのうち、働いている約1万7千人の答えを調べています。

ここで注意したいのは、歯周病があるかどうかも本人の答えだという点です。
歯科医師が実際に診たわけではありません。
歯周病は痛みが出にくいため、「自分は大丈夫」と思っている人の中にも、歯周病の人が混じっているかもしれません。

また、この研究でいう「仕事の調子が落ちている」とは、会社には行っているけれど、体の不調で集中できない、いつもの力が出せない状態のことです。

2. わかったこと

仕事の調子が落ちている人の割合は、

  • 歯周病なし:約5人に1人(22.2%)
  • 歯周病あり:約3人に1人(30.4%)

でした。歯周病のある人のほうが、はっきり多かったのです。

「でも、年齢や、たばこを吸うかどうかなども関係あるのでは?」と思われるかもしれません。
そこで研究チームは、年齢・性別・仕事の種類・たばこ・体調・歯科検診を受けているかなどの影響を取り除いて計算し直しました。
それでも、歯周病のある人は約1.4倍、仕事の調子が落ちている人が多いという結果でした。

男女別、年代別、仕事の種類別に分けて見ても、同じ傾向が出ています。

3. 歯科医師として気になったこと

この結果を読んで、私はひとつ引っかかりました。

昭和の高度成長期に日本を支えた世代の方々は、よくこう言われてきました。
「仕事が忙しくて、歯医者に行く暇なんてなかった」
「気がついたら、歯がボロボロになっていた」

診療室でも、こうしたお話をよくうかがいます。

つまり昔は、**「働きすぎて、歯周病になった」と言われていたのです。
ところが今回の研究は、「歯周病があると、仕事がはかどらない」**という逆の話に見えます。

ボロボロの歯でも、がむしゃらに働いた人たちがいた。
それなのに、歯周病があると仕事の調子が落ちる。
一見、矛盾していますよね。

でも、よく考えると、この二つは両立します。

理由① どちらが先かは、まだわからない
今回の研究は、「歯周病がある人」と「仕事の調子が悪い人」が重なりやすいことを示しただけです。
どちらが原因なのかまでは、わかっていません。研究チームもそう説明しています。

実際には、

  • 忙しくて疲れている → 歯みがきや歯医者が後回し → 歯周病が進む
  • 歯ぐきの腫れ、噛みにくさ、口臭の心配 → 少しずつ集中しにくくなる

という両方の流れがあり、ぐるぐる回る「悪い循環」になっているのではないか、と私は考えています。

理由② 「よく働く」の意味が違う
昔は「長い時間働くこと」が、よく働くことだと考えられがちでした。
今回の研究が見ているのは、働いた時間の長さではなく、仕事中の集中力や効率です。
歯周病を抱えながら長時間働くことはできても、その時間の中身は落ちていたのかもしれません。

そして、その後の人生
大切なのは、その世代の方々のその後です。
若い頃に歯周病を放っておいた結果、年を取ってから多くの歯を失い、
「好きなものが噛めない」「食事が楽しくない」
と困っている方を、私は訪問診療などで数多く見てきました。
若い頃の無理が、何十年も後になって返ってきているのです。

4. 結局、何が大切なの?

「歯周病を治せば、仕事がはかどるようになる」とは、まだ言い切れません。
でも、次のことははっきりしています。

  • 歯周病は、歯を失う原因の第1位(約37%)
  • 歯周病は、お口だけでなく体全体の健康にも関わる
  • 歯周病は、早く見つけて手入れを続ければ、進行をおさえられる

つまり、仕事のためだけでなく、健康に長く暮らすために、歯周病の手入れが大切なのです。
忙しい働き盛りの今こそ、将来も自分の歯でおいしく食べるための準備をしておきましょう。

5. 今日からできること

  • 痛くなる前に、歯医者で検診を
    この1年、歯科検診を受けていない方は、ぜひ一度ご予約ください。歯周病は痛みがないまま進むことが多い病気です。
  • 歯ブラシに、フロスや歯間ブラシをプラス
    歯と歯の間の汚れは、歯ブラシだけでは取りきれません。
  • 定期的に、歯医者でクリーニング
    自分では取れない歯石を取り、歯ぐきの状態をチェックすることで、歯周病の進行をおさえられます。

わかな歯科は「食べられること」を守る歯科医療を大切にしています。
いくつになっても自分の歯でおいしく食べ、元気に過ごせるよう、働く世代の皆さんのお口の健康もしっかり応援します。
気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

参考文献

  1. 第一三共ヘルスケア株式会社. プレスリリース「働く人の口腔の健康と労働生産性の関連に着目 歯周病のある労働者では生産性が低い状態にある人の割合が高いことを確認〜全国17,289人の大規模調査データを活用し、歯周病と労働生産性との関連を分析〜」. 2026年11月4日(第85回日本公衆衛生学会総会〔2026年10月29〜31日〕にて発表). https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/
  2. マイナビニュース「歯の健康が仕事にも関係する? 『労働生産性が低い状態』は歯周病あり30.4%、なし22.2%―第一三共ヘルスケアが発表」. 2026年11月4日. https://news.mynavi.jp/article/20261104-5254673/
  3. 東北大学大学院医学系研究科 公衆衛生学分野. プレスリリース(第一三共ヘルスケア株式会社との共同研究「大規模調査によるヘルスケア領域の生活者実態調査」の継続について). 2026年3月6日. https://www.life.med.tohoku.ac.jp/wp-content/uploads/2026/03/press0306.pdf
  4. 公益財団法人8020推進財団. 第2回 永久歯の抜歯原因調査報告書. 2018年.
  5. JACSIS研究 https://jacsis-study.jp / JASTIS研究 https://jastis-study.jp

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