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酸で歯が溶ける仕事がある?──「歯科特殊健診 実務研修会」を開催しました

酸で歯が溶ける仕事がある?

「歯科特殊健診 実務研修会」を開催しました

10月21日、印旛郡市歯科医師会主催の「歯科特殊健診 実務研修会」が開催されました。印旛郡市内の各地区から、代表者・実務担当者の先生方にお集まりいただきました。

私は口腔ケア支援センター委員長として企画・準備から携わり、当日は身に余ることに全体司会も務めさせていただきました。緊張の連続でしたが、皆様のお力添えで無事に終えることができました。

講師は、渡邉洋次先生(労働衛生コンサルタント/わたなべ歯科医院院長)。明快で熱のこもったお話に引き込まれ、本当にあっという間の時間でした。「明日から現場でどう動くか」がはっきり見える、勇気の湧く講義でした。

今回は学んだ内容を、3つのクイズで皆様にもおすそ分けします。

Q1.「歯が溶ける職業病」は本当にある?

答え:あります。

レモンや炭酸飲料をちびちび飲み続けると歯の表面が溶ける「酸蝕症(さんしょくしょう)」はご存じの方も多いと思います。
実は、塩酸・硝酸・硫酸・亜硫酸・フッ化水素・黄りんなどのガスや蒸気、粉じんが漂う職場では、仕事中に吸い込んだ酸によって同じことが起こり得ます。メッキ工場、金属の表面処理、半導体やガラスの加工などが代表例です。

そこで法律は、こうした職場で働く方に歯科医師による健診を受けてもらうことを、事業者(会社)に義務づけています。これが「歯科特殊健診」です。

 

ふだんの歯科健診

歯科特殊健診

目的

むし歯・歯周病の予防・早期発見

有害物質による歯の職業病の予防

根拠

健康増進法など(任意)

労働安全衛生法 第66条第3項(義務)

費用

自治体・保険・自己負担など

全額事業者負担

頻度

任意

雇入れ時・配置替え時、その後6か月以内ごとに1回

なお、事業者が実施を怠った場合には罰則(50万円以下の罰金)も定められています。

Q2.小さな町工場は報告しなくていい?

答え:いいえ。令和4年10月から、規模に関係なく報告が必要になりました。

以前は、労働基準監督署への結果報告は「従業員50人以上の事業場」だけの義務でした。ところが、小規模な事業場では健診そのものが十分に行われていない実態が分かり、令和4年(2022年)10月1日の労働安全衛生規則改正で、人数にかかわらずすべての対象事業場に報告が義務づけられました。

健診後、事業者は「有害な業務に係る歯科健康診断結果報告書(様式第6号の2)」を労基署へ提出し、健診記録は5年間保存します。地域の歯科医院への健診依頼が増えているのは、この改正が大きな背景です。

Q3.歯を守るには、健診だけで十分?

答え:健診だけでは足りません。カギは「三管理」です。

働く方の健康は、次の3つを組み合わせて守ります。

  • 作業環境管理:換気装置(局所排気装置)などで、空気中の有害物質を減らす
  • 作業管理:防毒マスク・保護メガネの正しい着用や、作業手順の見直し
  • 健康管理:定期的な歯科健診と、その結果に応じた対応・配置の工夫

歯科医師は口の中を診るだけでなく、「なぜこの方の歯が溶けているのか」を職場の環境までさかのぼって考える視点が求められる――ここが今回いちばん心に残った点です。

舞台裏のひと工夫と、これからのサポート

当日は渡邉先生のお話を1分でも長くお聴きいただくため、あえて口頭の質疑応答を省きました。

歯科特殊健診は、実際に依頼が来たときに初めて書類の書き方や判定で迷うことが多く、研修で学んでも時間が経つと忘れがちです。そこで、ご参加いただいた各地区の代表者・実務担当者の先生方を窓口に、地区の先生方の医院で依頼があった際や困ったときには、口腔ケア支援センターでいつでもご相談をお受けする体制を整えています。

感謝を込めて

渡邉先生のご講演のおかげで、法改正の背景から現場での具体的な動き方まで、確かな指針を得ることができました。私自身にとっても、大変学びの多い研修会となりました。

素晴らしいご講義をいただいた渡邉洋次先生、開催にあたり温かいご指導とご理解をいただいた会長をはじめとする理事の先生方、ともに企画・準備に力を尽くしてくださった口腔ケア支援センター委員の先生方、細やかな準備と当日の円滑な運営を一手に支えてくださった事務局長、そしてお忙しい中ご参加くださった各地区の代表者・実務担当者の先生方――本研修会に関わってくださったすべての方々に、心より深く感謝申し上げます。

当院も、地域で働く皆様が安心して仕事に打ち込めるよう、今回の学びを日々の診療と保健活動に生かしてまいります。

参考文献

  1. 労働安全衛生法 第66条第3項(歯科医師による健康診断)
  2. 労働安全衛生法施行令 第22条第3項(歯科健診を行うべき有害な業務)
  3. 労働安全衛生規則 第48条(歯科医師による健康診断)、第51条(健康診断結果の記録の作成・保存)、第52条第2項(健康診断結果報告/令和4年10月1日施行)
  4. 厚生労働省労働基準局長通達「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について」(基発0428第1号、令和4年4月28日)
  5. 厚生労働省「有害な業務に係る歯科健康診断結果報告書(様式第6号の2)」
  6. 一般社団法人千葉県歯科医師会『産業歯科保健マニュアル -初めての歯科健康診断-』(監修:渡邉洋次)

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