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「歯医者さんが減っている」って本当?

「歯医者さんが減っている」って本当?

2026年上半期のデータでわかった、歯科医院が閉じていく理由

「歯医者さんはコンビニより多い」――そんな話を聞いたことはありませんか? 実際、2019年の時点で歯科医院は全国に約6万8,500カ所あり、コンビニ(約5万5,600店)より多かったのです。

ところが今、その歯医者さんが少しずつ減っています。今回は、2026年の1月から6月までの調査データをもとに、「なぜ歯医者さんが閉じていくのか」「患者さんにはどんな影響があるのか」を、できるだけわかりやすくお話しします。

3行でまとめると

  • 歯医者さんは、この半年で全国から差し引き約440カ所減りました
  • 経営が苦しくて閉じる医院もありますが、「診療を引き継ぐ歯科医師がいない」ことが大きな理由です
  • かかりつけの医院が閉じても困らないよう、日頃の備えが大切です

Q1.歯医者さんは、どれくらい減っているの?

A.この半年で、全国から差し引き約440カ所減りました。

厚生労働省は、全国の医療機関の数を毎月発表しています。それによると、歯科医院は2026年の1月から6月まで、毎月減り続けました。1月に152カ所、2月に33カ所、3月に77カ所、4月に142カ所、5月に12カ所、6月に22カ所の減少です。新しく開業した医院を差し引いても、半年で約440カ所が減った計算になります。

5月末の時点で、歯科医院は全国に6万5,057カ所。2019年と比べると、3,000カ所以上減ったことになります。

ちなみに、内科や眼科などの「医科のクリニック」は、同じ時期に増えた月もありました。たとえば5月は121カ所、6月は22カ所増えています。医科のクリニックは増えたり減ったりしているのに、歯医者さんは毎月減り続けている――ここに、歯科ならではの事情が隠れています。

「倒産」はそのうちのごく一部

ニュースでは「歯科医院の倒産が過去最多」と報じられることがあります。調査会社の帝国データバンクによると、今年1~6月の歯科医院の倒産は16件で、過去最も多かった2024年の同じ時期と並ぶ水準でした。別の調査会社・東京商工リサーチの集計でも15件と、前の年より増えています。

でも、「約440カ所減った」のに「倒産は16件」。数が大きく違いますよね。実は、閉じる歯医者さんの多くは、倒産ではないのです。

ことばの説明

  • 倒産:借金が返せなくなり、裁判所の手続きなどで医院をたたむこと
  • 廃業(休廃業):借金で行き詰まったわけではなく、院長などが自分の判断で医院を閉じること

※調査会社の「件数」は経営者の数、国の統計は「施設の数」で、数え方が違うため単純に比べることはできません。また、国の月ごとの数字は速報値(概数)で、後で修正されることがあります。ここでは「倒産は一部にすぎない」という傾向としてご覧ください。

帝国データバンクによると、今年1~9月に倒産した歯科医院は23件でしたが、自ら医院を閉じた「休廃業」は120件と、5倍以上ありました。

Q2.なぜ歯医者さんは閉じていくの?

A.大きく分けて、三つの理由があります。

理由① 診療を引き継ぐ歯科医師がいない

いちばん大きいのが「跡継ぎ」の問題です。

実は、歯科医院の経営そのものは、歯科医師でなくても引き継ぐことができます。ご家族などが経営者となって医院を続けることも、法律上は可能です(歯科医師以外が開設する場合は、都道府県知事の許可が必要です)。

ただし、医院で診療の責任を負う「院長(管理者)」は、歯科医師でなければならないと法律で決まっています。つまり、経営は引き継げても、実際に患者さんを診る歯科医師が見つからなければ、医院は続けられないのです。お子さんが歯科医師にならなかった場合や、医院を任せられる歯科医師が見つからない場合、閉院を選ばざるを得なくなります。

東京商工リサーチによると、医療機関の倒産のうち約3割が「跡継ぎがいない」ことに関係していました。ほかの業種全体では4.9%ですから、医療の世界でいかに深刻かがわかります。同社も、資格が必要なことが跡継ぎ問題の高い壁になっていると指摘しています。

院長先生が一人で診療している医院では、先生が病気になったり亡くなったりすると、代わりに診療できる歯科医師がいない限り、その日から診療ができなくなってしまいます。実際、帝国データバンクは、院長の死去や体調不良が閉院のきっかけになったケースがあると報告しています。

理由② かかるお金は増えるのに、治療費は自由に上げられない

歯科医院でも、スタッフのお給料、治療に使う材料、電気代など、あらゆるものの値段が上がっています。

普通のお店なら、仕入れが高くなれば商品を値上げできます。でも保険の治療費は国が全国一律で決めているため、医院が自由に値上げすることはできません。帝国データバンクは、こうしたコストの上昇に治療費の見直しが追いつかない状況が続いてきたと分析しています。

また、倒産した歯科医院は、いずれも借金2億円以下の小さな医院でした。もともと余裕の少ない小さな医院ほど、コストの上昇が重くのしかかります。

理由③ デジタル化への大きな投資

三つ目は、医療の「デジタル化」です。ここ数年、歯医者さんの受付や事務の仕組みは大きく変わりました。

  • 2023年4月:マイナンバーカードで保険を確認する仕組み(マイナ保険証の読み取り機など)の導入が、原則として義務になりました
  • 2024年12月:これまでの健康保険証が、新しく発行されなくなりました
  • 2030年まで:国は、ほぼすべての医療機関でカルテを電子化することを目指しています

ただ、歯科医院向けの電子カルテについては、どんな機能が必要かを国が検討している最中で、2026年度中に方針を決める予定です。つまり、**「いずれ対応しなければならないのに、何を揃えればいいかはまだ決まっていない」**という状態なのです。

ここで、院長先生の年齢が大きく関わってきます。帝国データバンクによると、医院を閉じた歯科医院の院長の年齢は平均で70歳を超えていました。

たとえば、あと数年でお店を閉めようと考えている店主が、「新しいレジに高額な費用がかかります。数年ごとに買い替えも必要です」と言われたらどうでしょう。「それなら、このタイミングで閉めようか」と考えるのは自然なことですよね。歯科医院でも、同じことが起きているのです。

実際、帝国データバンクは、カルテの電子化の動きをきっかけに、医院を閉じる決断をする院長が増えていると分析しています。

もちろん、デジタル化そのものは悪いことではありません。患者さんの情報を医療機関同士で安全に共有できるようになる、大切な取り組みです。ただ、その変化のスピードが、長年地域を支えてきた医院の引退を早めている面もあるのです。

Q3.もうかっていないから閉めるの?

A.いいえ。黒字なのに閉める医院も多いのです。

帝国データバンクによると、過去5年間に閉院した歯科医院のうち、経営状況がわかった医院の半数以上が黒字でした。

つまり、**「患者さんが来なくてつぶれる」のではなく、「患者さんはいるのに、診療を続ける歯科医師がいない」**というケースが多いのです。高齢の院長先生の前に、「後継者」「お金」「デジタル化」の三つの壁が同時に立ちはだかり、余力のあるうちに医院を閉じる――これが、今の歯科医院の閉院の大きな特徴です。

Q4.患者さんには、どんな影響があるの?

A.住んでいる地域によって、影響の大きさが変わります。

帝国データバンクによると、医院が閉じたあと、患者さんが近くの医院に移ったり、歯科医師が何人もいる大きな医院に集まったりする動きが見られます。

近くに別の歯医者さんがある都市部なら、通う先を見つけやすいでしょう。でも人口が減っている地域では、一つの医院が閉じると、次の医院まで遠くなってしまうことがあります。特に、通院が大変なご高齢の方や、ご自宅や施設で訪問歯科診療を受けている方にとっては、大きな問題です。東京商工リサーチも、医療機関の倒産は地域の患者さんが医療を受ける機会を失うことにつながりかねないと注意を呼びかけています。

Q5.かかりつけの歯医者さんが閉じたら、どうすればいい?

A.日頃から、次の5つを心がけておくと安心です。

✅ 閉院のお知らせがあったら、早めに相談する
治療の途中なら、次の医院への「紹介状」を書いてもらいましょう。これまでの治療の内容が引き継がれます。

✅ お薬手帳を持ち歩く
骨粗しょう症のお薬や、血液をサラサラにするお薬などは、歯を抜くときなどに特に注意が必要です。どこの医院でも見せられるようにしておきましょう。

✅ 入れ歯やインプラントのことをメモしておく
「いつ、どこで作ったか」をメモしておきましょう。インプラントの場合は、種類やメーカーがわかると次の医院で安心です。

✅ マイナ保険証を使う
ご本人が同意すれば、これまでのお薬の情報などを医療機関が確認できます。医院が変わったときにも役立ちます。

✅ 定期検診をやめない
医院が変わったのをきっかけに通院をやめてしまい、気づいたときには虫歯や歯周病が進んでいた……ということは珍しくありません。

おわりに

歯医者さんが減っているのは、単に「経営がうまくいかなかったから」ではありません。「診療は歯科医師にしか担えない」という医療の特性、上がり続けるコスト、そして急速なデジタル化。どれも、一つひとつの医院の努力だけでは乗り越えにくい壁です。

私たちも、地域の皆さんが「食べられること」をこれからも守り続けられるよう、診療を次の世代へつないでいく方法を考えていかなければならないと感じています。歯やお口のことで気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。

参考文献

  1. 帝国データバンク「医療機関の倒産動向調査(2026年上半期)」2026年7月13日.https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260713-iryoukikan2025/(PR TIMES配信:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001387.000043465.html)
  2. 東京商工リサーチ「2026年上半期『医療機関』倒産 増勢続く 上半期で2番目の38件、『後継者難』は最多」TSRデータインサイト,2026年7月26日.https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1203080_1527.html
  3. 東京商工リサーチ「『歯医者さん』の倒産 2024年上半期は15件、前年の2.5倍に急増、過去最多ペースで推移」TSRデータインサイト.https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198724_1527.html
  4. 帝国データバンク「『歯医者』の倒産・休廃業解散動向(2026年1-9月)」2026年10月6日.https://www.tdb.co.jp/report/industry/20261006-dentalclinic26y1-9/
  5. 帝国データバンク「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2025年)」2026年1月23日.https://www.zaikei.co.jp/releases/3272516/
  6. 厚生労働省「医療施設動態調査」令和8(2026)年1月末~6月末概数.https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/m26/is2601.html ほか各月
  7. 厚生労働省「電子処方箋・電子カルテの目標設定等について」2025年7月1日.https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001511375.pdf
  8. 東京都保健医療局「医療DXの推進」資料(国の「医療DXの推進に関する工程表」の電子カルテ目標).https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/2025-07-15-090600-602
  9. 総務省「政策評価 事前分析表(厚生労働省 XIII-2-1)」(オンライン資格確認の原則義務化).https://www.soumu.go.jp/main_content/001069645.pdf
  10. 医療法(昭和23年法律第205号)第7条(開設の許可)、第10条(管理者).e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000205

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