わかな歯科

お知らせ

# 黒字でも閉院する歯医者さん ### 「町の歯医者さん」を、地域ぐるみで守るために

# 黒字でも閉院する歯医者さん

### 「町の歯医者さん」を、地域ぐるみで守るために

「歯医者さんはコンビニより多い」とよく言われます。

ところが今、その歯医者さんが静かに減り始めています。

2026年10月6日、民間の信用調査会社である帝国データバンクが、歯科医院の倒産や閉院に関する最新の調査結果を発表しました。[1]

そこから見えてきたのは、「経営が苦しくて閉院する」という単純な話ではありませんでした。

この記事では調査の内容を紹介し、そのうえで「地域の歯科医療をどう守るか」を考えます。

**この記事のポイント**

- 2026年1~9月に閉院した歯科医院は143件で、同じ期間としては過去最多です。

- 閉院の約8割は倒産ではありません。黒字のまま後継ぎがいないために閉じる「静かな廃業」が増えています。

- 歯医者さんの仕事は、診療室の中だけではありません。学校健診、訪問診療、手術前の口腔ケア、災害時の身元確認まで担っています。

- 一つの医院では守りきれない地域の歯科医療を、歯科医師会が行政・学校・医療機関・介護と連携して「面」で支える。その仕組みがこれから大切になります。

---

## 9か月で143件、これまでで最も多い数

帝国データバンクによると、2026年1~9月に確認された歯科医院の倒産は23件、自分から診療をやめた「休廃業・解散」は120件で、合計143件でした。1~9月としては過去最多です。[1]

つまり、**閉院の約8割は「お金に困って倒産した」のではなく、「自分で診療を終えることを選んだ」もの**です。

国の統計を見ても、全国の歯科診療所の数は2026年5月末時点で65,057施設でした。[2]

毎月の統計でも減少が続いており、たとえば7月には前の月より60施設減っています。[3]

## 黒字なのに閉院する「静かな廃業」

過去5年間に閉院した歯科医院のうち、経営の状況がわかった120件を調べたところ、**半数以上が黒字**でした。閉院したときの院長の平均年齢は**70歳を超えて**いました。[1]

患者さんも通い、経営も成り立っている。それでも、子どもが継がない、引き継ぐ先生が見つからないといった理由で診療を終える。調査では、これを「静かな廃業」と呼んでいます。[1]

背景には、歯科医師の高齢化があります。診療所で働く歯科医師の平均年齢は、2020年の時点ですでに54.3歳でした。[4]

さらに、スタッフの確保の難しさ、歯科用金属や医療機器の値上がり、電子カルテやマイナ保険証の読み取り機などの設備投資も、医院を続けるうえで負担になっています。保険診療の料金は国が決めているため、費用が上がっても医院が自由に値上げすることはできません。[1]

## 歯医者さんの仕事は、診療室の外にもある

「歯医者さんが一つ減っても、別の医院に行けばいい」と思われるかもしれません。

しかし地域の歯科医院は、診療室の外でもさまざまな役割を担っています。

### 子どもたちの歯を守る ― 学校歯科医

学校には学校歯科医を置くことが、法律で定められています。[5] 多くは地域で開業している歯科医師が担当し、健診や歯みがき指導を行っています。

### 肺炎を防ぐ ― 訪問歯科と口腔ケア

介護施設で暮らす高齢の方に歯科医師や歯科衛生士が口腔ケアを行ったところ、肺炎の発症が減ったという研究があります。[6]

通院が難しくなった方のご自宅や施設に伺う訪問歯科診療は、口の健康だけでなく、命を守ることにもつながっています。

### 手術を支える ― 医科歯科連携

がんの大きな手術の前に歯科で口の中を整えておくと、手術後の肺炎が減り、死亡率も下がったという、日本の大規模なデータの分析があります。[7]

病院と地域の歯科医院が連携することで、こうしたケアを受けられる体制が広がっています。

### 「最後の身分証明書」 ― 災害時の身元確認

2011年の東日本大震災では、歯科医師会の歯科医師たちが、ご遺体の歯の状態と、歯科医院に残されていたカルテやレントゲン写真を照らし合わせる身元確認に当たりました。宮城県では、身元確認の約1割が歯によるものでした。[8][9]

歯の治療の記録は、もしものときに「その人がその人である」ことを証明する手がかりにもなるのです。

一つの医院が閉じると、こうした地域の仕組みにも穴が開くおそれがあります。

実際に沖縄県では、歯科医院の不足が学校の歯科健診にも影響しかねないとして、地域の歯科医師会と銀行、歯科医療機器の販売会社が、歯科医院の引き継ぎを支える協定を結びました。[10]

## 「点」ではなく「面」で守る ― 歯科医師会の役割

ここで大切になるのが、地域の歯科医師が集まってつくる**歯科医師会**です。

全国には、市や郡・区の単位で700を超える地域の歯科医師会があります。[11]

一つひとつの医院は「点」にすぎません。しかし歯科医師会がつなぎ役となって地域のさまざまな機関と手を結べば、地域全体を「面」で支えることができます。

たとえば、都道府県と歯科医師会が協力して「在宅歯科医療連携室」という相談窓口を設けている地域が多くあります。訪問歯科診療の依頼の受付や、介護施設・病院との調整を行っています。[11]

日本歯科医師会の調査では、歯科のある病院の約65%、歯科のない病院の約24%が、地域の歯科医師会と連携していました。[11]

医院の「引き継ぎ」を支える動きも始まっています。先に紹介した沖縄県の協定のほか、山梨県歯科医師会では地元の銀行と協力し、会員向けの承継セミナーや個別相談会を開いています。[10][12]

「静かな廃業」の多くが後継ぎの不在から起きていることを考えると、地域ぐるみで引き継ぎを支えることは、閉院を減らす現実的な手段の一つといえます。

国の検討会でも、かかりつけ歯科医の役割、歯科医療機関どうしの役割分担と連携、医科歯科連携・多職種連携を進めることが、これからの歯科医療の課題として挙げられています。[13]

## 患者さんにできること

地域の歯科医療を守るために、患者さんにもできることがあります。

- **かかりつけの歯医者さんを持つ**:定期的に通う医院があると、治療の記録が残り、もしもの時も引き継ぎがスムーズです。

- **学校や市町村の歯科健診を受ける**:健診は、地域の歯科医療の仕組みを支える大切な機会です。

- **困ったときは相談窓口へ**:通院が難しくなったら、地域の歯科医師会の相談窓口や地域包括支援センターに相談できます。

かかりつけの医院から閉院のお知らせが届いたら、慌てずに担当の先生やスタッフに相談しましょう。次のことを確認しておくと安心です。

- 最後の診療日と、閉院後の問い合わせ先

- 治療の途中なら、続きを受けられる紹介先

- これまでの治療内容やレントゲン写真を、次の医院へ伝えてもらえるか(紹介状)

- 作っている途中の入れ歯や被せ物、前払いした治療費の扱い

## おわりに

今回の調査は、歯科医院の経営や事業の継続について調べたものです。個々の医院の治療の質や安全性を評価したものではありません。[1]

歯科医院の閉院は、一つの医院だけの問題ではなく、地域全体の課題です。

行政・学校・医療機関・介護、そして地域の皆さんと歯科医師会がつながることで、「いつもの歯医者さん」がなくなっても、地域の歯と口の健康を守り続けることができるはずです。

数字だけで不安になるのではなく、地域の歯科医療をみんなでどうつないでいくかを考えるきっかけにしていただければ幸いです。

---

## 参考文献

1. 株式会社帝国データバンク.「歯医者」の倒産・休廃業解散動向(2026年1-9月).2026年10月6日公表.  

   https://www.tdb.co.jp/report/industry/20261006-dentalclinic26y1-9/

2. 厚生労働省.医療施設動態調査(令和8年5月末概数).2026年7月31日公表.  

   https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/m26/is2605.html

3. 厚生労働省.医療施設動態調査(令和8年7月末概数).2026年9月30日公表.  

   https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/m26/is2607.html

4. 厚生労働省.令和2年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況(歯科医師).  

   https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/20/dl/R02_kekka-2.pdf

5. 学校保健安全法(昭和33年法律第56号)第23条.e-Gov法令検索.  

   https://laws.e-gov.go.jp/law/333AC0000000056

6. Yoneyama T, Yoshida M, Matsui T, Sasaki H. Oral care and pneumonia. Lancet. 1999;354(9177):515.

7. Ishimaru M, Matsui H, Ono S, Hagiwara Y, Morita K, Yasunaga H. Preoperative oral care and effect on postoperative complications after major cancer surgery. Br J Surg. 2018;105(12):1688-1696.

8. 新潟県歯科医師会.歯科診療情報の標準化に関する検討会(第7回)資料2.厚生労働省,2015年11月25日.  

   https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000104966.pdf

9. 東日本大震災における歯科的身元確認作業.日本補綴歯科学会誌.2015;7:129-134.  

   https://www.hotetsu.com/s/doc/irai2015_2_12.pdf

10. 琉球新報.学校検診にも影響… 歯科医院不足で琉銀・南部歯科医師会・販売業者が連携協定 沖縄.  

    https://ryukyushimpo.jp/tag/事業承継

11. 日本歯科医師会.地域包括ケアシステムと歯科の役割(中央社会保険医療協議会 提出資料).厚生労働省.  

    https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000186984_2.pdf

12. 山梨県歯科医師会・山梨中央銀行.歯科診療所の経営者向け 医業承継対策セミナー(案内).  

    https://www.yamanashibank.co.jp/assets/files/k20260728_s.pdf

13. 厚生労働省.歯科医療提供体制等に関する検討会 中間とりまとめ.2024年5月27日.  

    https://www.mhlw.go.jp/content/001257577.pdf

元のページへもどる