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# 10月8日は「入れ歯の日」——入れ歯で元気を取り戻したロバ「一文字号」と、入れ歯を長持ちさせるお口のケア

# 10月8日は「入れ歯の日」——入れ歯で元気を取り戻したロバ「一文字号」と、入れ歯を長持ちさせるお口のケア

こんにちは。八街のわかな歯科です。

10月8日は「い(1)れ(0)ば(8)」の語呂合わせで「入れ歯の日」。1992年に全国保険医団体連合会が「入れ歯デー」として定め、2005年には日本歯科技工士会も「入れ歯感謝デー・歯科技工の日」としました[1]。

入れ歯は、「食べる・話す・笑う」という毎日の暮らしを支える大切な道具です。今回は、思わず誰かに話したくなる「入れ歯をしたロバ」のお話と、入れ歯を快適に使い続けるためのケアのコツをご紹介します。

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## 1. 上野動物園にいた「総入れ歯のロバ」一文字号

### 戦地から動物園へ

昭和の上野動物園に、「一文字(いちもんじ)号」というロバがいました。1935年に中国・北京の郊外で生まれ、戦時中に物資の運搬で働いたのち、上野動物園にやってきたと伝えられています[2]。動物園では子どもたちを乗せた馬車を引く人気者でした[2]。

### 歯が悪くなり、食べられなくなる

ところが年をとるにつれて歯が悪くなり、1962年にはポップコーンをのどに詰まらせて命が危うくなりました[2]。27歳のロバは、人間でいえば80歳を超える高齢です[2]。大好きな草もうまく噛めなくなり、すっかり元気をなくしてしまいました。

### 前代未聞の「ロバの入れ歯」づくり

「もう一度噛めるようにしてあげたい」——動物園の人たちは東京中の歯科医師に相談しましたが、引き受け手はなかなか見つかりません。そこで名乗りを上げたのが、東京医科歯科大学の石上健次(いしがみ・けんじ)先生でした[2]。

もちろん、ロバ用の材料も道具もありません。

- 大きな口に合う型取り用トレーは、材料メーカーに特注した
- 型取りの材料を口に入れても、ロバは意外にもおとなしく待っていた
- いちばんの難関は「噛み合わせの高さ」決め。ロバは「高い」「痛い」と教えてくれない
- ロバ用の人工歯はないため、ほかのロバの写真を見ながら一本ずつ歯を作った

こうして入れ歯が完成し[2]、読売新聞の報道によれば1963年5月に東京医科歯科大学で装着が行われました[3]。

### 入れ歯を入れたら、また草を食べ始めた

心配された装着の日。一文字号は入れ歯を入れてまもなく自分から草を食べ始め、周りの人たちを大いに喜ばせたそうです[2]。その後すっかり元気を取り戻し、「総入れ歯のロバ」として評判になりました[3]。

後日談もあります。元気になった一文字号は、一緒に暮らす羊が柵を飛び越えるのを見て自分も跳ぼうとし、足を引っかけて転倒。これがもとで腸ねん転を起こし、1965年3月23日、30歳で亡くなりました[2,3]。人間なら90歳を超える大往生です[3]。元気になりすぎたのかもしれませんね。

「噛めること」が食欲や体力、そして生きる意欲につながる——これは人もロバも同じです。

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## 2. 入れ歯の「ぴったり感」を支えているのは唾液

入れ歯を快適に使い続けるには、入れ歯そのものの手入れに加えて、お口のうるおい(唾液)がとても大切です。

### 唾液は「天然の吸着剤」

総入れ歯が歯ぐきにくっついていられるのは、入れ歯と歯ぐきの間にある**ごく薄い唾液の膜**のおかげです。入れ歯がよく合っていて、ふちがしっかり密閉されている(辺縁封鎖)と、この唾液の膜が入れ歯を引きはがす力に抵抗してくれます[4]。「空気の圧力で吸い付いている」とよく言われますが、実際の主役はこの唾液の膜とふちの密閉だと考えられています[4]。

唾液はさらに、入れ歯と歯ぐきの間の潤滑油として、こすれによる痛みや傷も防いでいます。

そのため、お口が乾くと次のようなことが起こりやすくなります。

- 入れ歯が外れやすくなる
- 歯ぐきがこすれて痛みや傷ができる
- 汚れがたまり、においの原因になる

### 唾液を出しやすくするセルフケア

**① 唾液腺マッサージ**

お口の外から唾液腺をやさしく刺激する方法です[5]。食事の前に行うのがおすすめです。

- **耳下腺(じかせん)**:耳たぶの少し前、上の奥歯のあたりに指を当て、後ろから前へ円を描くように10回
- **顎下腺(がっかせん)**:あごの骨の内側のやわらかい部分を、耳の下からあごの先まで数か所、親指でやさしく押す
- **舌下腺(ぜっかせん)**:あごの先の真下を、両手の親指でゆっくり押し上げる(10回)

強く押す必要はありません。痛みが出ない程度の力で行いましょう。

**② よく噛んで食べる**

噛む刺激そのものが唾液の分泌を促します。合った入れ歯でしっかり噛むことが、そのままお口のうるおいにつながります。

※お薬の副作用や持病でお口が乾きやすい方もいます。乾燥がつらいときは、保湿ジェルの使い方なども含めてご相談ください。

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## 3. 入れ歯ケアの「基本のき」

アメリカ補綴歯科学会などがまとめた入れ歯のお手入れガイドライン[6]も参考に、ご家庭で気をつけていただきたいポイントをまとめました。

**① 毎日、外してブラシで洗う**

入れ歯の表面には、細菌やカビ(カンジダ)のかたまり「デンチャープラーク」がつきます。毎日きちんと取り除くことが、入れ歯による口内炎(義歯性口内炎)を防ぎ、お口と全身の健康を守る基本です[6]。食後は外して、入れ歯専用ブラシを使い流水で洗いましょう。

**② 歯みがき粉は使わず、洗浄剤を併用する**

一般的な歯みがき粉には研磨剤が含まれており、入れ歯の表面に細かな傷をつけて、かえって汚れや菌をつきやすくします。ブラシで洗ったあとは、入れ歯用の洗浄剤に浸けておくのがおすすめです[6]。

**③ 熱湯はNG**

熱いお湯につけると入れ歯が変形してしまいます[6]。消毒のつもりでも、熱湯は使わないでください。

**④ 夜は外して歯ぐきを休ませる**

入れ歯は24時間つけっぱなしにせず、寝るときは外して歯ぐきを休ませるのが基本です[6](歯科医師から別の指示を受けている方はそちらに従ってください)。外した入れ歯は乾燥させないよう、水か洗浄液に浸けて保管しましょう。

**⑤ 残っているご自分の歯も念入りに**

部分入れ歯の方は、バネ(クラスプ)がかかる歯に汚れがたまりやすく、むし歯や歯周病になりがちです。ワンタフトブラシなども使って丁寧にみがきましょう。

**⑥ 少なくとも年に1回は歯科でチェック**

あごの骨や歯ぐきの形は、年齢とともに少しずつ変わっていきます。合わなくなった入れ歯を使い続けると、痛みや噛みにくさ、歯ぐきの傷の原因になります。少なくとも年1回は歯科医院で、入れ歯の適合や噛み合わせ、お口の粘膜の状態をチェックしてもらいましょう[6]。

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## まとめ

一文字号のお話は、「噛めるようになると、生きる力が戻ってくる」ことを教えてくれます。わかな歯科では、「食べられること」を守ることを何より大切にしています。

入れ歯の日をきっかけに、ご自身やご家族の入れ歯を見直してみませんか。「最近外れやすい」「痛いところがある」「お口が乾く」など、気になることがあればお気軽にご相談ください。通院が難しい方には訪問歯科診療も行っています。

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## 参考文献

1. 全国保険医団体連合会「入れ歯デー」(1992年制定)、日本歯科技工士会「入れ歯感謝デー・歯科技工の日」(2005年制定)。雑学ネタ帳「入れ歯デー(10月8日 記念日)」 https://zatsuneta.com/archives/110082.html / 今日は何の日〜毎日が記念日〜「入れ歯感謝デー・歯科技工の日」 https://www.bestcalendar.jp/dates/kinenbi/4116
2. 岡崎好秀「No.11 入れ歯を入れたロバの話」ドクター岡崎のおもしろ歯学(歯のページ) http://www.teeth.co.jp/shigaku/article/08072119000065.html
3. 高木圭介「【今日は何の日?】3月23日=上野動物園で総入れ歯のロバが死ぬ(1965年)」介護のみらいラボ(マイナビ介護職), 2023年3月23日(出典:昭和40年3月25日付 読売新聞朝刊) https://kaigoshoku.mynavi.jp/contents/kaigonomirailab/news/today/20230323_00/
4. Darvell BW, Clark RK. The physical mechanisms of complete denture retention. *Br Dent J*. 2000;189(5):248–252. https://www.nature.com/articles/4800734
5. 岩手県口腔保健支援センター「お口の体操と唾液腺のマッサージ」 https://www.pref.iwate.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/025/2019.6mattssaji.pdf
6. Felton D, Cooper L, Duqum I, et al. Evidence-based guidelines for the care and maintenance of complete dentures: a publication of the American College of Prosthodontists. *J Prosthodont*. 2011;20 Suppl 1:S1–S12. doi:10.1111/j.1532-849X.2010.00683.x

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