関節のサプリ「グルコサミン」とアルツハイマー型認知症 ― 新しい論文から考える、サプリメントとの上手な付き合い方
関節のサプリ「グルコサミン」とアルツハイマー型認知症 ― 新しい論文から考える、サプリメントとの上手な付き合い方
こんにちは。わかな歯科です。
ひざや腰の痛みのために「グルコサミン」のサプリメントを飲んでいる方は多いと思います。テレビCMでもおなじみで、ドラッグストアや通販で手軽に買える身近な健康食品です。
ところが2026年6月、このグルコサミンとアルツハイマー型認知症の関係について、気になる研究が科学誌『Nature Metabolism』に発表されました。今回はこの論文の内容をご紹介しつつ、「だからすぐやめましょう」ではなく、**「こういう研究もあるので、サプリメントは専門家と相談しながら使いましょう」**というお話をしたいと思います。
どんな研究だったのか
アメリカ・フロリダ大学の研究チームが、アルツハイマー病の脳で起きている「糖の使われ方の異常」に注目した研究です。
私たちの体のタンパク質には、「糖鎖(とうさ)」という糖のかざりが付けられています。これはタンパク質が正しい形になり、正しい場所へ運ばれ、きちんと働くために欠かせない、ごく正常な仕組みです。
研究チームは、アルツハイマー病の方の脳では、この糖鎖の付け足しが**必要以上に増えている(過剰糖鎖修飾)**ことを見つけました。そして、この「糖鎖の付けすぎ」が病気の結果として起きているだけでなく、病気を進める側の要因になっているのではないか、と考えました。
グルコサミンは、体の中でこの糖鎖を作る材料になりうる物質です。そこで研究チームは、「すでに糖鎖が増えすぎている脳に、材料を追加したらどうなるか」を調べました。
わかったこと
① アルツハイマー病の脳では糖鎖が増えていた
亡くなった方の脳を調べると、アルツハイマー病の脳では糖鎖が多く、病気の進行段階が進むほど増える傾向がありました。
② マウスでは、糖鎖を減らすと記憶が改善した
アルツハイマー病に似た状態のマウスで糖鎖を作る働きを抑えると、記憶のテストの成績がよくなりました。
③ マウスでは、グルコサミンで記憶が悪化した
同じマウスにグルコサミンを2週間飲ませると、脳の糖鎖が増え、記憶のテストの成績が悪くなりました。一方、健康なマウスでは、はっきりした悪影響は見られませんでした。
④ 人の診療記録では「関連」が見られた
2012〜2024年の病院の診療記録を分析したところ、軽度認知障害(MCI:もの忘れが年齢相応より少し多いものの、日常生活はおおむね自立している状態)の方のうち、グルコサミンを飲んでいた人は、飲んでいない人に比べてアルツハイマー型認知症へ進む割合が約25%高いという結果でした。また、すでにアルツハイマー型認知症やそれに関連する認知症と診断されている方では、飲んでいた人のほうが死亡のリスクが高いという関連も示されました。
ここが大事:「グルコサミンがアルツハイマー型認知症を起こす」と証明されたわけではありません
この研究は大変興味深いものですが、次の点に注意が必要です。
● 人のデータは「関連」であって「原因」ではない
診療記録を後から調べる研究では、「飲んでいた人に何が多かったか」はわかっても、「グルコサミンが原因だった」とは言えません。たとえば、グルコサミンを飲んでいる人は関節の痛みが強く、あまり歩けずに運動量が少なかったのかもしれません。運動不足や体の衰え(フレイル)は、それ自体が認知機能に影響しうるため、そうした別の理由が結果に混ざっている可能性があります。研究者自身も、人での臨床試験による確認が必要だと述べています。
● 対象はMCIやアルツハイマー型認知症などの方
今回の結果は、すでにもの忘れのある方についてのものです。健康な方がグルコサミンを飲むとアルツハイマー型認知症になりやすくなる、という結果ではありません。
● 「25%」は割合の差
「25%高い」というのは、100人中25人がアルツハイマー型認知症になるという意味ではありません。もともとのリスクに対して相対的に高かった、という数字です。
● マウスの結果はそのまま人に当てはまるとは限らない
量や期間、体の仕組みは人とマウスで異なります。
そもそも、グルコサミンは関節に効くの?
実は、関節への効果についても、専門家の間で評価は分かれています。
いくつもの研究をまとめた2025年の報告では、症状の改善を示した研究が多く、副作用も少ないとされていますが、製品や飲む量、研究の方法がバラバラで、比べるのが難しいことも指摘されています。
また、米国リウマチ学会などの変形性関節症のガイドライン(2019年)では、ひざや股関節の関節症に対してグルコサミンは推奨されていません。
つまり、「サプリだから安全で、飲めば軟骨がよくなる」とは言い切れないのが現状です。
では、どうすればよいのでしょうか
私からのおすすめは次の3つです。
1. もの忘れが気になる方・アルツハイマー型認知症などと診断されている方は、一度相談を
グルコサミンを飲み続ける意味が本当にあるのか、かかりつけ医や薬剤師に確認してみてください。その際は、製品そのものか写真をお持ちいただくと、成分や量がわかって話が早く進みます。ご家族がサプリを管理されている場合は、ご家族からお伝えいただくのも大切です。
2. 「効いている実感」を振り返ってみる
飲み始めてから、痛みや歩きやすさは実際に変わったでしょうか。はっきりした効果がないまま、なんとなく続けている方も少なくありません。
3. 関節の痛みは、サプリ以外の方法も含めて考える
運動療法やリハビリ、体重管理、お薬など、関節の痛みへの対策はいろいろあります。整形外科の先生と一緒に、ご自身に合った方法を探すのがおすすめです。
歯科医院でもサプリメントのことを教えてください
サプリメントや健康食品は、お薬手帳に載らないことがほとんどです。そのため、医師や歯科医師が把握できていないことがよくあります。
「サプリはお薬じゃないから」と思わずに、ぜひ問診のときに教えてください。歯科の治療でも、飲んでいるものによっては注意が必要になる場合があります。
まとめ
- アルツハイマー病の脳では「糖鎖の付けすぎ」が起きており、病気を進める一因かもしれない、という新しい研究が発表されました。
- マウスではグルコサミンで記憶が悪化し、人の診療記録ではMCIの方のグルコサミン使用とアルツハイマー型認知症への進行に関連が見られました。
- ただし、人でグルコサミンがアルツハイマー型認知症を悪化させると証明されたわけではありません。
- もの忘れが気になる方やアルツハイマー型認知症などの方は、自己判断ではなく、医師・薬剤師と相談して続けるかどうかを決めましょう。
身近なサプリメントだからこそ、「なんとなく」ではなく、専門家と相談しながら上手に付き合っていただければと思います。
参考文献
- Hawkinson TR, Liu Z, Ribas RA, et al. Hyperglycosylation is a metabolic driver of Alzheimer's disease. Nature Metabolism. 2026;8(6):1410-1425. doi:10.1038/s42255-026-01538-4
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42265388/ - University of Florida Health. Study links joint pain supplement to accelerating dementia. News release, June 9, 2026.
https://ufhealth.org/news/2026/study-links-joint-pain-supplement-to-accelerating-dementia-2 - Baden KER, Hoeksema SL, Gibson N, et al. The Safety and Efficacy of Glucosamine and/or Chondroitin in Humans: A Systematic Review. Nutrients. 2025;17(13):2093. doi:10.3390/nu17132093
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12250884/ - Kolasinski SL, Neogi T, Hochberg MC, et al. 2019 American College of Rheumatology/Arthritis Foundation Guideline for the Management of Osteoarthritis of the Hand, Hip, and Knee. Arthritis Care & Research. 2020;72(2):149-162. doi:10.1002/acr.24131
