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入れ歯はなぜ「しっかり固定」する設計が主流になったのか ―― 部分入れ歯の考え方の変化--

# 入れ歯はなぜ「しっかり固定」する設計が主流になったのか

―― 部分入れ歯の考え方の変化--

今回は、部分入れ歯(歯が何本か残っている状態で使う入れ歯)の「設計の考え方」が、歴史の中でどのように変わってきたかをお話しします。少し専門的な内容ですが、「なぜこの入れ歯はこの形になっているの?」という疑問にお答えできる内容だと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。

## 入れ歯づくりで一番大事なこと

部分入れ歯を作るときに歯科医師が最も気をつけているのは、実は「よく噛めるかどうか」だけではありません。それと同じくらい、**「残っている歯や歯ぐき・骨を、これ以上傷めないこと」**が重要なのです。

入れ歯は、噛むたびに力がかかります。その力の逃がし方をどう設計するかによって、支えとなる歯(維持歯・いじし と呼びます)や顎の骨の寿命が大きく変わってくることが、長年の臨床研究でわかってきました。

## むかしの考え方:「力を逃がす」設計

20世紀の前半頃まで主流だったのは、**「緩圧法(かんあつほう)」**という考え方でした。

これは簡単に言うと、「入れ歯と支えの歯とのつながりを、あえて“ゆるく”しておく」という発想です。バネの部分を動きやすくしたり、入れ歯の一部に切れ込みを入れたりして、噛む力が支えの歯に直接伝わらないよう、力を「逃がす」ように設計していました。

一見、歯にやさしそうな発想ですよね。「歯に負担をかけないように、あえて固定を緩くする」というのは理にかなっているように思えます。

## ところが…予想外の結果に

しかし長期的に経過を見ていくと、この方法には落とし穴がありました。

入れ歯と歯の連結を緩くした結果、かえって**入れ歯自体がグラグラと揺れ動くようになってしまった**のです。入れ歯が揺れると、その揺れがまた別の形で支えの歯に負担をかけ、さらに歯ぐきの下の骨が予想以上に早く痩せてしまう、という皮肉な結果を招くことがわかってきました。

「力を逃がしたつもりが、かえって歯や骨を傷めていた」というわけです。

*(なお現在でも、支えの歯がかなり弱っている場合や、逆に歯ぐき・骨がとても丈夫な場合など、限られたケースでは緩圧法的な設計が有効なこともあります。すべてを否定する考え方ではありません。)*

## 発想の大転換:「しっかり固定する」設計へ

こうした反省から生まれたのが、現在主流となっている**「リジッド・サポート」**という考え方です。

「リジッド」とは英語で「硬い・剛性が高い」という意味です。つまり、先ほどとは正反対に、**入れ歯と支えの歯を、あえてがっちりと一体化させて固定する**という発想です。

「揺れを逃がす」のではなく、「そもそも揺れないようにする」。この方が、噛む力を歯と歯ぐきの骨にバランスよく分散でき、結果的に歯や骨に優しいということが、力学的な研究(ドイツのケルバー博士らの研究が有名です)によって裏付けられました。

この考え方をわかりやすく体現しているのが、**コーヌス・テレスコープ義歯**という種類の入れ歯です。支えの歯に被せた内側の金属冠と、入れ歯側の外側の金属冠を、くさびのようにピッタリと固定する仕組みで、1968年にドイツで提案されて以来、長持ちする入れ歯として世界的に発展してきました。

現在では、一般的なバネ(クラスプ)を使う入れ歯でも、金属の骨組み部分を「できるだけ硬く・剛性高く」作ることが、設計の基本原則になっています。

## まとめ:「揺れないこと」が歯と骨を守る

部分入れ歯の設計は、この数十年でこのように大きく変わってきました。

- 昔:力を逃がすために、あえて「緩く」つなぐ
- 今:揺れを止めるために、あえて「固く」つなぐ

もちろん、お口の状態は人それぞれです。歯周病の進み具合、残っている歯の本数や位置、顎の骨の状態などによって、最適な設計は変わってきます。「絶対にこの設計が正解」というものはなく、一人ひとりに合わせて歯科医師が判断しています。

入れ歯を作る際、なぜこの形のバネなのか、なぜこの金属の枠組みなのか、疑問に思うことがあれば、遠慮なくお尋ねくださいね。

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### 参考文献
1. Biomechanics in Removable Partial Dentures: A Literature Review of FEA-Based Studies (PMC8416386)
   https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8416386/
2. Maxillary distal-extension removable partial denture abutments with reduced periodontal support — PubMed
   https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8410732/
3. Role of Stress Breakers in removable partial denture
   https://ternadental.com/wp-content/uploads/10.-Role-of-Stress-Breakers-in-removable-partial-denture.pdf
4. リジッドサポート|キーワード検索(クインテッセンス出版)
   https://www.quint-j.co.jp/dictionaries/keyword/38033
5. An Introduction To RPD Stress Breaking
   https://xdentlab.com/an-introduction-to-rpd-stress-breaking

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