大腸がんに「腸内細菌の毒素」が関わっていた? 最新研究をやさしく解説します
大腸がんに「腸内細菌の毒素」が関わっていた? 最新研究をやさしく解説します
こんにちは。わかな歯科です。
今回は歯科の話題から少し離れますが、患者さんの健康に深く関わる興味深いニュースをご紹介します。2026年8月、大阪大学と東京大学の研究チームが、**日本人の大腸がんの約半数に、腸内細菌が出す「毒素」の影響とみられる遺伝子の変化が見つかった**という研究結果を発表しました。
「腸内細菌」と聞くと、健康に良いイメージを持たれる方も多いと思います。実際、腸内細菌のほとんどは体に良い働きをしています。ただ、そのごく一部の細菌が出す毒素が、長い年月をかけて腸の細胞を傷つけ、がんが生まれるきっかけの一つになっている可能性が、今回の研究で示されました。
当院は「食べられることを守る」ことを診療の軸にしていますので、お口だけでなく、消化器の健康にまつわる話題も、できるだけ正確に、わかりやすくお伝えしていきたいと思います。
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## 何が新しくわかったのか
私たちのおなかの中には、数百種類もの腸内細菌が住んでいます。そのうち、ごく一部の大腸菌は「コリバクチン」という毒素を作り出すことがあります。研究チームが日本人の大腸がん患者さんの遺伝子(DNA)を詳しく調べたところ、この毒素が細胞を傷つけたときに特徴的に残る「変化のパターン」が、多くの患者さんの遺伝子の中に見つかりました。
具体的には、
- 患者さんの**約半数**で、コリバクチンによる遺伝子の変化のパターンが見つかった
- 特に**40歳未満の若い方の大腸がん**では、その割合が**約7割**にのぼった
- 同じパターンが見つかる割合は、海外の患者さんと比べて**2〜3倍多い**と報告されている
という結果でした。なぜ日本人で多いのかは、まだはっきりとはわかっていません。食生活や抗生物質の使われ方、幼少期からの腸内環境の違いなどが関係しているのではないか、と考えられている段階です。
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## 「コリバクチン」とは何か
コリバクチンそのものは、がんではありません。腸の中の一部の大腸菌が作る毒素の名前です。
この毒素が腸の細胞の遺伝子に少しずつ傷をつけ、その傷が長い年月をかけて積み重なることで、がん細胞が生まれるきっかけの一つになりうる、というのが今回の研究のポイントです。
たとえるなら、家の設計図(遺伝子)に少しずつ穴を開けていく毒素のようなもので、穴が増えていくと、いずれ家(細胞)の設計が狂ってしまう、というイメージです。
なお、今回の研究で示されているのは「傷のパターンが、がん組織の中に多く見つかった」という関連性であり、「コリバクチンさえなければ大腸がんは起きない」という単純な話ではありません。大腸がんには、食生活や遺伝的な体質、加齢など、複数の要因が関わることがこれまでの研究でわかっています。今回の発見は、その要因の一つとして腸内細菌の毒素が加わった、という位置づけです。
興味深いことに、この傷のパターンは、がんが見つかるずっと前、子どもの頃からつき始めている可能性も指摘されています。小児期からの食生活が、将来の大腸がんリスクに関わっているかもしれない、という視点です。
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## 腸内細菌そのものが悪者というわけではない
大切なのは、腸内細菌全体が悪いわけではないということです。ほとんどの腸内細菌は、
- 食べ物の消化を助ける
- ビタミンを作る
- 免疫の働きを整える
など、体に良い働きをしています。今回問題になっているのは、あくまで「コリバクチンという毒素を出す、特別なタイプの大腸菌」であり、腸内細菌を減らせばよい、という話ではありません。
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## 今、私たちにできること
現時点では、「検査を受ければコリバクチンを出す菌だけを見つけて、簡単に除菌できる」という段階には至っていません。原因菌の特定方法や除菌法、毒素の働きをブロックする薬の開発は、これからの研究課題です。
そのため、今すぐできる大腸がん予防の基本は、これまでと変わりません。
- 年齢に応じた大腸がん検診(便潜血検査・内視鏡検査)をきちんと受ける
- 野菜・果物・海藻・豆類など、食物繊維を多く含む食品をしっかり食べる
- 加工肉・脂っこい食事・アルコール・喫煙を控えめにする
- 適度な運動を心がける
- 抗生物質は自己判断で使わず、医師の指示通りに使う
これらは、今回の研究結果が出る前から言われてきた、大腸がん予防の基本的な考え方です。今回の発見によって、その大切さが改めて裏付けられた、と捉えていただくのがよいかと思います。
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## 歯科の立場から思うこと
当院がふだんお伝えしている「むし歯・歯周病予防のための食生活」は、腸内環境を整える食生活とも重なる部分が多くあります。よく噛んで食べること、バランスの良い食事を続けることは、お口の健康だけでなく、おなかの中の細菌の環境を整えることにも役立つと考えられます。
これからも、お口から始まる全身の健康について、正確な情報を少しずつご紹介していきたいと思います。
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## 参考文献
1. 大阪大学大学院医学系研究科プレスリリース「日本人大腸がんの主要な原因は"腸内細菌"だった」
https://www.med.osaka-u.ac.jp/activities/results/2026year/yachida2026-8-10
2. 国立がん研究センター プレスリリース(2025年)「日本人大腸がん患者さんの5割に特徴的な腸内細菌による発がん要因を発見」
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2025/0521/index.html
3. 「大腸がんと腸内細菌」『癌と化学療法』総説
https://www.pieronline.jp/content/article/0385-0684/53030/162
4. サイエンスポータル「大腸がん、5割は腸内細菌関与の可能性 分泌毒素で固有の変異」
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20250611_n01/index.html
5. Nature Medicine「がんゲノム:コリバクチンDNA損傷シグネチャーは大腸がんでの変異の影響を示す」
https://www.natureasia.com/ja-jp/nm/26/7/s41591-020-0908-2/
*本記事は一般の方向けに、現時点でわかっていることをできるだけ正確にまとめたものです。診断や治療については、必ずかかりつけの医療機関にご相談ください。*
