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【続編】炎症性腸疾患(IBD)の腸から、なぜ「お口の細菌」が見つかるのか

【続編】炎症性腸疾患(IBD)の腸から、

なぜ「お口の細菌」が見つかるのか

前回は、口の中の細菌が腸へ「お引っ越し」し、全身のいろいろな病気に関わっているかもしれない、というお話をしました。

今回はその中でも特に研究が進んでいる**炎症性腸疾患(IBD:クローン病・潰瘍性大腸炎)**にしぼって、「なぜお口の細菌が腸で見つかるのか」を、できるだけわかりやすくご説明します。

## 腸の中に「お口の菌」が住み着いている

クローン病や潰瘍性大腸炎の患者さんの便を調べると、本来はお口の中にいるはずの細菌が、健康な人よりも多く見つかることがこれまでの研究でわかっています[1][4]。

ある研究では、IBD患者さん14名と健康な方12名の唾液・便を比較したところ、IBD患者さんの唾液そのものの細菌の顔ぶれが健康な方と違っており、なかでも*Veillonella*属や*Prevotella*属という菌が多く見られました。中でも*Prevotella salivae*という菌は、IBDと特に関連が深い「お口の菌」として報告されています[1]。

「お口の中にいるはずの菌が、なぜ腸に…?」と不思議に思われるかもしれません。ポイントは、**腸自体がすでに荒れている状態(ディスバイオーシス)だと、よそから来た菌を追い出す力が弱くなってしまう**ことです。健康な腸であれば胃酸や腸内細菌のバリアで撃退できる口腔細菌も、IBDの腸ではすみつきやすくなってしまうのです[1][6]。

## どんな「お口の菌」がIBDに関わっているのか

代表的な菌を4つご紹介します。

### ① むし歯の原因菌(Streptococcus mutans)の一部
むし歯菌としておなじみのミュータンス菌ですが、その中に「コラーゲン結合タンパク」という特殊な武器を持つ菌株がいます。この菌株は血液中で免疫細胞に見つかりにくく、全身をめぐりやすいという性質があります。マウスの実験では、この菌株を投与すると潰瘍性大腸炎が悪化することが確認されました[2][3]。

### ② Klebsiella pneumoniae(肺炎桿菌)
お口の中にいる分には大きな問題を起こしにくい菌ですが、腸にたどり着くと免疫細胞を強く刺激し、大腸炎を引き起こすことがマウスの実験で示されています[5]。

### ③ Haemophilus parainfluenzae
歯周病を持つクローン病の患者さんでは、この菌が腸に多く定着していることが報告されています。歯周病そのものが、腸への菌の定着を後押ししている可能性を示す結果です[6]。

### ④ Fusobacterium nucleatum(歯周病関連菌)
歯周病の原因菌としても知られるこの菌は、腸のバリア機能を壊し、潰瘍性大腸炎を悪化させることが動物実験で確認されています[7]。

## 歯科からお伝えしたいこと

IBDの治療そのものは消化器内科の領域ですが、「口の中の細菌の量そのものを減らしておく」ことが、腸への負担を減らす一助になるかもしれない、という視点が広がってきています。

* 歯周病やむし歯をそのままにしない
* 定期的に歯科でクリーニングを受ける
* 免疫を調整するお薬を使っている方は、口腔内の感染にも気を配る

どれも特別なことではありませんが、腸だけでなく全身の炎症の「もと」を減らすための、地味だけれど大切な一歩です。IBDで通院されている方も、ぜひ一度お口の状態をチェックしてみてください。

## まとめ

IBDの患者さんの腸から「お口の細菌」が見つかるのは偶然ではなく、腸のバリアが弱まったところに、お口から来た細菌が定着しやすくなっているためと考えられています。お口の健康を守ることは、歯を守るだけでなく、腸の炎症と向き合う上でも意味のある習慣かもしれません。

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## 参考文献

1. Abdelbary MMH, Abdallah RZ, Na HS. Editorial: The oral-gut axis: from ectopic colonization to within-host evolution of oral bacteria. *Front Cell Infect Microbiol*. 2024;14:1378237.
2. Kojima A, Nakano K, Wada K, et al. Infection of specific strains of Streptococcus mutans, oral bacteria, confers a risk of ulcerative colitis. *Sci Rep*. 2012;2:332.
3. Kojima A, Nomura R, Naka S, Okawa R, Ooshima T, Nakano K. Aggravation of inflammatory bowel diseases by oral streptococci. *Oral Dis*. 2014;20(4):359-366.
4. The Oral-Gut Axis: Periodontal Diseases and Gastrointestinal Disorders. *PMC*. 2023 (PMC10320234).
5. Atarashi K, Suda W, Luo C, et al. Ectopic colonization of oral bacteria in the intestine drives TH1 cell induction and inflammation. *Science*. 2017;358(6361):359-365.
6. Sohn J, Li L, Zhang L, et al. Periodontal disease is associated with increased gut colonization of pathogenic Haemophilus parainfluenzae in patients with Crohn's disease. *Cell Rep*. 2023;42:112120.
7. Lin S, et al. Fusobacterium nucleatum aggravates ulcerative colitis through promoting gut microbiota dysbiosis and dysmetabolism. *J Periodontol*. 2023;94:405-418.

*本記事は上記の学術論文をもとに、一般の方向けにわかりやすく解説したものです。個別の症状や治療方針については、必ず主治医・歯科医師にご相談ください。*

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