わかな歯科

お知らせ

# 「ノドから手が出る」は、実は体の話だった? 舌の進化をちょっとまじめに考えてみる

# 「ノドから手が出る」は、

実は体の話だった? 

舌の進化をちょっとまじめに考えてみる

こんにちは。

「ノドから手が出る」という言葉、みなさんも一度は使ったことがあるんじゃないでしょうか。「それほど欲しい」という意味のあの言葉です。

でも先日、この表現をぼんやり口にしながら、ふと思ったんです。

「……待てよ、これ歯科医として聞くと、なかなか深い話じゃないか?」と。

今回は、そんなところから始まった「舌と進化」のお話をしたいと思います。少し理屈っぽくなりますが、最後まで読んでもらえると、舌のことが少し好きになるかもしれません(笑)。

---

## 舌は、じつは手足と「親戚」

いきなりですが、舌と手は生まれが近い、という話があります。

私たちの体は、お母さんのお腹の中で少しずつ形がつくられていきます。その過程で、**「体節(たいせつ)」**と呼ばれる組織のかたまりが並んでいき、そこから手足の筋肉や体幹の筋肉がつくられていきます。

じつは舌の筋肉も、この体節に由来しているんです。

つまり舌は、「口の中にある軟らかいもの」というイメージとはちょっと違って、**発生学的には手足の筋肉とルーツが近い器官**なのです。

---

## カエルを見ていると、腑に落ちる

「それでも舌が手に似ているって、ピンとこない…」という方に、わかりやすい例をひとつ。

**カエルの舌**です。

カエルは虫を捕まえるとき、舌を素早く前に伸ばしてペタッとくっつけます。あのスピードと精度、なかなかのものです。これ、人間が手を伸ばして物をつかむ動きと、役割としてはほぼ同じですよね。

生きものによっては、舌が「手の代わり」として進化してきた側面があります。

そう思って「ノドから手が出る」を聞き直すと、不思議と納得感が出てきます。**喉の奥から、手のような役割を持つ舌が飛び出してくる**――なかなか的を射た表現じゃないでしょうか。

---

## 舌を動かす神経にも、おもしろい共通点がある

さらに話を続けると、舌を動かす神経にも特徴があります。

舌の運動を担うのは**「舌下神経(ぜっかしんけい)」**という神経です。この神経は、進化の歴史をさかのぼると、四肢(手足)を動かす神経と近いルーツを持つと考えられています。

筋肉の生まれ、実際の働き、そして動かす神経――この三つの面で、舌と手足には深いつながりがあるわけです。

---

## じゃあ、歯科ではどう考えているか

「進化の話は面白いけど、うちの院長はなんで舌にこだわるの?」

ごもっともです。お伝えしたいのはここからです。

歯科の現場では、舌は本当に大切な器官のひとつです。舌が関わる機能を並べてみると、

- 食べ物を口の中でまとめる
- 飲み込む(嚥下)を助ける
- 発音をつくる
- 口の自浄作用を支える

と、これだけあります。

特に気になるのが「飲み込み」です。年齢を重ねると、舌の力や動きが少しずつ落ちてきます。すると、

- むせやすくなる
- 食べ物が飲み込みにくい
- 口の中に食べ物が残りやすい

といった変化が出てきます。こうした変化は、食欲の低下や栄養不足につながることもありますし、誤嚥性肺炎のリスクとも関係しています。

「年のせい」で片付けてしまいがちですが、舌の機能低下は、早めに気づいて対処できることも多いのです。

---

## 「ノドから手が出る」、なかなかやるじゃないか

昔の言葉って、侮れませんね。

体のつくりや進化から見ると、「ノドから手が出る」は、かなり正確に舌の性質を言い当てた表現かもしれません。言葉をつくった人たちが意識していたかどうかはわかりませんが(おそらく偶然でしょうが)、面白い一致だと思います。

舌のことが気になった方、ぜひ一度鏡を見ながら動かしてみてください。左右にスムーズに動くか、前後にしっかり伸ばせるか——意外と、自分の舌の動きを意識したことがない方も多いと思います。

気になることがあれば、いつでもご相談ください。

---

## 参考文献

1. Moore KL, Persaud TVN, Torchia MG. *The Developing Human: Clinically Oriented Embryology*. 11th ed. Elsevier; 2020.(体節と舌筋の発生に関する記述)
2. Standring S, ed. *Gray's Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice*. 42nd ed. Elsevier; 2020.(舌下神経と舌の解剖・神経支配)
3. Kardong KV. *Vertebrates: Comparative Anatomy, Function, Evolution*. 8th ed. McGraw-Hill; 2018.(脊椎動物における舌の進化と機能的役割)
4. 才藤栄一、向井美惠 編.*摂食嚥下リハビリテーション*.第3版.医歯薬出版;2014.(舌機能と嚥下・摂食への関与)

元のページへもどる