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骨折・転倒を防ぐために、 カルシウムやビタミンDのサプリは必要?  大規模研究の結果をわかりやすく解説

骨折・転倒を防ぐために、

カルシウムやビタミンDのサプリは必要?

 大規模研究の結果をわかりやすく解説

「骨のためにカルシウムのサプリを飲んでいます」「ビタミンDも一緒にとったほうがいいと聞きました」——患者さんからこうしたお話を聞くことは、診療の場でも珍しくありません。骨折や転倒を防ぎたいという気持ちはとても自然なことです。

ところが2026年4月、医学の世界でもっとも権威ある雑誌のひとつ『BMJ』に、これまでの常識を見直すきっかけになりうる大規模な研究が発表されました。今回はその内容を、できるだけわかりやすくお伝えします。

その「サプリ習慣」、本当に効いている?

骨折や転倒が心配になると、つい手が伸びるのがカルシウムやビタミンDのサプリです。ドラッグストアでも手軽に買えますし、「骨によさそう」というイメージが広く定着しています。

しかし今回の研究では、世界中で行われた69件の臨床試験・合計153,902人分のデータをまとめて分析した結果、驚くべきことがわかりました。カルシウム単独・ビタミンD単独・両方の組み合わせ、いずれの場合も、骨折や転倒を明確に予防する効果は確認されなかったのです。

これは小さな一研究の結果ではありません。これだけ大規模なデータをまとめた結論ですから、「サプリを飲めば骨折が防げる」という考え方は、少なくとも一般的な成人に対しては根拠が薄いといわざるを得ません。

「じゃあサプリは飲まなくていい?」——少し待ってください

ここで誤解してほしくないのですが、この研究は「カルシウムもビタミンDも、すべての人にまったく必要ない」と言っているわけではありません。

今回の参加者の多くは、地域で普通に生活しているリスクの低い人たちでした。そのため、食事量が極端に少ない人、栄養不足が心配な人、日光にほとんど当たらない人、骨折リスクが高い高齢の方、施設で生活している方などでは、個別に補充を考える必要がある場合があります。

大切なのは「みんなに同じようにサプリを出す」のではなく、「その人に本当に必要かどうかを医師と一緒に考える」という姿勢です。自己判断でサプリを始めたりやめたりするのではなく、まずはかかりつけ医に相談することをおすすめします。

では、どうすればいいの?——答えは「食事」と「日光」にあります

この研究が私たちに教えてくれる最も大切なことは、**「サプリより先に、毎日の食事と生活習慣を整えることが骨を守る基本」**だということです。

食事からカルシウムをとる

カルシウムは、錠剤で補うより食品から自然にとるほうが、体への吸収という面でも理にかなっています。日本人の成人が1日に必要なカルシウムの量は、おおよそ650〜800mg程度です(年齢や性別によって異なります)。

特に意識してとりたい食品を挙げてみます。

牛乳はコップ1杯(200ml)で約220mg、プレーンヨーグルト1パック(100g)で約120mg、木綿豆腐半丁(150g)で約180mg、小松菜1束(100g)で約170mg、ししゃも3尾(45g)で約165mg、プロセスチーズ1枚(20g)で約126mgのカルシウムが含まれています。

乳製品が苦手な方でも、豆腐・納豆・小松菜・チンゲン菜・桜エビ・煮干しなど、和食の食材からも十分に補うことができます。「毎食、一品だけでも意識する」というくらいの気軽さで続けることが、長続きのコツです。

日光を浴びてビタミンDを体の中で作る

ビタミンDには、食品からとる方法と、皮膚が紫外線を受けて体内で合成する方法の、大きく2つがあります。そしてじつは、日光を浴びることによる体内合成が、ビタミンDを得るうえでとても効率的な方法です。

目安として、夏の晴れた日中であれば、顔や手の甲程度を15〜30分ほど日光に当てるだけで、1日に必要なビタミンDの多くを体内で作ることができるとされています。ただし、季節・天気・緯度・年齢・肌の色などによって合成量は変わります。冬や曇りの日、室内で過ごすことが多い方、高齢の方は合成量が減りやすいため、より意識的な対策が必要です。

日焼け止めを塗ると紫外線をカットするため合成量は減りますが、皮膚の健康との兼ね合いもあります。「完全に遮断しない程度に、毎日少し外を歩く習慣」を持つだけでも、大きく変わってきます。

食品では、サーモン・サバ・イワシ・サンマなどの脂の多い青魚、干しシイタケ・きくらげなどのきのこ類にビタミンDが比較的多く含まれています。週に2〜3回、魚を食べる習慣はビタミンD補給の観点からもとても理にかなっています。

運動も忘れずに

食事と日光に加えて、体を動かすことも骨を守るうえで欠かせません。ウォーキングや軽い筋力トレーニングは骨密度の維持に有効であることがわかっています。激しい運動でなくてよく、「毎日少し歩く」「階段を使う」といった積み重ねが大切です。

歯と骨は深くつながっています

歯科医院でこの話をするのは意外に思われるかもしれませんが、カルシウムやビタミンDは歯を支える顎の骨(歯槽骨)にも深く関わっています。また、骨粗鬆症の治療薬(ビスホスホネート製剤など)を服用している方では、抜歯などの歯科治療に特別な配慮が必要になることがあります。

栄養状態は口の中の健康とも密接に結びついています。全身の骨の健康と口の健康を一体として考えることは、歯科の立場からもとても重要です。気になることがあれば、歯科医師にもお気軽にご相談ください。

まとめ

—骨を守る本当の基本は「日々の習慣」にある

今回の大規模研究が伝えていることをひと言でまとめると、「骨折や転倒を防ぐために、すべての大人がカルシウムやビタミンDのサプリを飲めばよい、とは言えなかった」ということです。

サプリは手軽ですが、骨を守る本当の土台は毎日の食事・日光・運動という、地道な習慣の積み重ねです。「サプリを飲んでいるから大丈夫」という過信が、大切な生活習慣の見直しを遅らせてしまうことがあります。

まずは食事を見直し、少し外を歩き、太陽の光を浴びる。その当たり前の習慣こそが、骨と体を長く守ってくれる最善の方法です。サプリの必要性については、ぜひかかりつけ医にご相談ください。

参考文献

Massé O, Mei Mercurio C, Dupuis S, Al Sahwi M, Arruda A, Dallaire G, Desforges K, Dugré N, Williamson D. Calcium, vitamin D, or combined supplementation to prevent fractures and falls: systematic review and meta-analysis. BMJ 2026;393:e088050. doi: 10.1136/bmj-2025-088050

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