わかな歯科

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# AIに仕事が奪われる時代に、歯科医師という仕事を考える

# AIに仕事が奪われる時代に、

歯科医師という仕事を考える

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先日、治療中に患者さんからこんなことを言われました。

「先生、AIがどんどん賢くなってるじゃないですか。歯医者さんの仕事も、そのうちなくなったりしませんか?」

椅子に座ったまま、ちょっと笑ってしまいました。でも、正直に言うと——私もときどき考えることなんです。

診断の補助、レントゲンの読影、カルテの記録、予約の管理。たしかに、AIがどんどん得意になっている分野はあります。では、「だから歯科医師は必要なくなる」かというと、私はそう思わない。むしろ、これからの時代の方が、私たちの仕事の「本当の価値」が問われる時代になると感じています。

今日は、そのことを少し掘り下げてお話しします。

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## 「AIに奪われない仕事」のトップに、

医療が並ぶ

アメリカの経済誌 Forbes が2025年に発表した記事があります。「AIに代替されにくく、かつ高収入が期待できる職業」のランキングで、上位を占めたのは、医師・歯科医師・看護師など「人を直接助ける仕事」でした¹。

世界経済フォーラム(WEF)の「Future of Jobs Report 2025」でも、これからの時代に求められる力として、「分析的思考」「柔軟性」「人と対話する力」が挙げられています¹。

なぜ医療の仕事はAIに

取って代わられないのか。

それは、医療が「データを処理する仕事」ではなく、「目の前の一人に合わせて判断する仕事」だからだと思います。

同じ「歯が痛い」という訴えでも、80代で在宅療養中の方と、30代の健康な方では、治療の進め方も、使えるお薬も、ご家族への説明の仕方も、まったく変わります。その一人ひとりの違いをくみ取り、安心してもらいながら、責任を持って治療を進める——これは今のAIが最も苦手とすることです。

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## WHO(世界保健機関)も言っている「AIは道具、主役は人間」

世界保健機関(WHO)は、医療AIの活用に関するガイドラインの中でこう示しています²。

AIは有益な技術である。しかし、安全性・倫理・説明責任を確保しながら、あくまで人間が中心になって使うべきだ——と。

日本医師会も同じ立場をとっています³。画像診断の補助や記録の効率化にAIは役立つ。でも、判断に責任を持つのは、人間の医療者だ、と。

つまり、AIは「医療者の代わり」になるのではなく、「医療者を支える道具」として位置づけられているのです。

これは私も、実感として納得しています。

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## 歯科医師の仕事は

「歯を削る」だけじゃない

私が開業して、もうすぐ16年になります。その間、歯科医師の仕事はずいぶん「広がった」と感じています。

私が日常的に行っていることを挙げてみると——

- **口腔機能の評価と訓練**:食べにくい、むせる、飲み込みにくいといった症状に対応します
- **訪問歯科診療**:病院や施設、ご自宅で療養中の方のところに伺って診療します
- **薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)のリスク管理**:骨粗しょう症やがんの治療薬を服用中の方の顎の骨を守るために、医師・薬剤師と連携して対応します
- **摂食・嚥下リハビリ**:食べる・飲み込む機能のリハビリに関わります
- **障がいのある方への診療**:身体的・知的障がいをお持ちの方への専門的な対応を行っています

これらはどれも、患者さんの生活背景・全身の病気・ご家族の状況・本人のご希望を総合的に理解したうえで、医師・看護師・栄養士・薬剤師・介護士など多くの職種と力を合わせて進めるものです。

数値を入力して答えを出すような仕事では、到底ありません。

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## 必要とされているのに、

まだ届いていない現実

東京都健康長寿医療センター研究所の調査では、要介護の高齢者のうち64.3%に歯科的なケアが必要とされていました⁴。

ところが、実際に過去1年間で歯科を受診していた方は、**わずか2.4%**にとどまっていたのです⁴。

また、訪問歯科診療の供給量は、本来必要とされる量の**約半分**しか満たされていないとも言われています⁵。

「歯科は必要とされなくなっている」のではありません。必要なのに、必要な方のところにまだ届いていないのです。

これをAIが解決できるでしょうか。——私は難しいと思います。必要な方のところに足を運び、顔を見て話し、信頼を積み重ねていくこと。それは人間にしかできないことだと、30年近い臨床経験から確信しています。

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## OECDが示す

「これからの医療人材に求められること」

OECDが2025年に発表したレポート「医療従事者におけるデジタル・AIスキル」では、こんなことが指摘されています⁶。

AIの普及によって医療者の役割は変わっていく。だからこそ、デジタルを使いこなす力と、患者さんと向き合う対人スキルの両方を高めることが必要だ——と。

「AIを活用する力」と「人と真剣に向き合う力」。この両方が、これからの医療者には求められるということでしょう。

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## それでも私が、この仕事を続ける理由

「AIに仕事が奪われる時代」と言われます。でも、歯科医師という仕事の核心——患者さんの話をじっくり聞き、生活ごと見渡して状況を判断し、責任を持って「あなたにとっての最善」を一緒に考える——これはなくなるとは思えません。

むしろ、AIが事務や記録を手伝ってくれる時代になるからこそ、私たちは「人に向き合う時間」をより大切にできるようになるかもしれない。そう思っています。

当院では、治療の技術はもちろん大切にしています。でもそれと同じくらい、「なぜそうなったのか」「どうしたいのか」を一緒に考える対話の時間を、大切にしたいと思っています。

AIがどれだけ進化しても、その時間の価値は変わらない——これが、私の信念です。

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## 参考文献

1. Forbes JAPAN.「AIに奪われない年収1100万円超の職業15選、『人を助ける仕事』が上位独占 米国」; World Economic Forum. *Future of Jobs Report 2025*.
1. World Health Organization. *Ethics and governance of artificial intelligence for health*. 2021. https://www.who.int/publications/i/item/9789240029200
1. 日本医師会.「人工知能(AI)と医療」2018年. https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20180620_3.pdf
1. 東京都健康長寿医療センター研究所.「地域における高齢者の口腔・食支援の取組推進のためのハンドブック」
1. 厚生労働省.「歯科医療提供体制・歯科医師の現状について」
1. OECD. *Digital and AI skills in health occupations*. 2025. https://www.oecd.org/content/dam/oecd/en/publications/reports/2025/05/digital-and-ai-skills-in-health-occupations_f428e5a9/5fbd42ab-en.pdf

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