わかな歯科

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食べることは治療の始まりです ― マクガバンレポートと和食の知恵 ―

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食べることは治療の始まりです
― マクガバンレポートと和食の知恵 ―
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 春の光がやわらかく差し込む季節になりました。今回は「食べること」と「健康」の関係を、少し大きな視点から見直したいと思います。

マクガバンレポートとは
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 1977年、アメリカ上院の特別委員会が全5000ページを超える報告書をまとめました。「マクガバンレポート(Dietary Goals for the United States)」です。(※1,2)

 当時のアメリカでは心臓病・糖尿病・がんが急増していました。委員会はその原因を食事の乱れと結論づけ、「薬より先に、毎日の食卓を見直せ」というメッセージを国の政策として打ち出しました。(※2,3,4)提言の骨子は明快です。

 ・食べすぎを避ける
 ・動物性脂肪・砂糖・塩分を減らす
 ・穀類・野菜・豆類・果物を増やす

■ 日本人には、すでにその知恵があった
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 興味深いのは、このレポートが示した方向性が、昔の日本の食卓にとても近かったことです。(※1,6)ご飯を主食に、味噌汁・野菜・豆腐・海藻・魚を組み合わせる「一汁三菜」は、動物性脂肪が少なく、食物繊維が豊富で、発酵食品も多い。レポートが推奨した内容と、多くの点が重なります。(※2,3,7)

 レポートの発表をきっかけに、日本では「和食こそ健康食の理想に近い」という議論が大きく盛り上がりました。新しい理論のように見えて、私たちの足元には昔からその知恵があった――そう気づかされた出来事でもありました。

 ただし「レポートが日本食を絶賛した」という言い方は少し正確さを欠きます。正しくは「レポートが示した方向性と、日本の伝統食には重なる点が多かった」と理解するのが適切です。(※8)

■ なぜ今あまり語られないのか
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 重要なレポートがあまり知られていない背景には、発表直後からの「修正圧力」があります。「肉の消費を減らせ」という直接的な表現が肉業界の強い反発を招き、より穏やかな言い回しへと書き換えられました。(※9,10)本質的なメッセージが薄まり、当たり障りのない表現へと変わっていった――食と政治と産業の関係が、公衆衛生のメッセージを変えてしまった事実は、日常の健康情報を読むうえでも、大切な視点だと思います。

■ 歯科がこの話を大切にしたい理由
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 歯科が守りたいのは、「食べられる口」です。(※11)どれほど健康によい食事があっても、かみにくい・飲み込みにくい状態では、その恩恵を受けることができません。(※12,14)年齢を重ねると口の機能が少しずつ低下し、食事量の減少や栄養の偏りが全身の健康にも影響します。これが「オーラルフレイル」の問題です。(※15)

 むし歯・歯周病の治療はもちろん、「これからも食べられる口を守る」ことが、当院が大切にしていることの一つです。(※11,12)

■ 今日の食卓から始められること
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 マクガバンレポートが伝えたかったことは、特別な健康法を探すことではありません。「日々の食事こそが健康の土台であり、その知恵は昔からの食文化の中にある」(※2,4,6)――ごく普通の和食の食卓が、世界が注目した健康食の姿に近かった。そう聞くと、毎日の食事を少し丁寧に整えてみようという気持ちになりませんか。

 そして、その食事をきちんと食べられる口を保つこと。この二つが重なるとき、食べることは本当に「治療の始まり」になります。(※13,14)

 お口のことでご不安な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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参考文献
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1. 日本栄養改善学会. 〝和食〟とともにある日本文化.
   https://www.jsa-net.or.jp/wp-content/uploads/2018/10/20151022-1.pdf
1. マクガマン・レポートとは? https://www.sunsedai.com/mcgavan-report/
1. 大阪公立大学. マクガバン・レポートと日本における食の「近代化」の内発的契機.
   https://omu.repo.nii.ac.jp/record/4394/files/2012000013.pdf
1. シェアシマ. マクガバンレポートとは.
   https://shareshima.com/info/3992990771
1. Glico. マクガバン報告から健康日本21.
   https://jp.glico.com/boshi/futaba/no70/con01_01.htm
1. 農林水産省. 日本の伝統的食文化としての和食.
   https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/pdf/01_washoku.pdf
1. 農林水産省. 第3部 コラム編.
   https://www.maff.go.jp/j/study/syoku_vision/manual/pdf/txt5.pdf
1. 食事療法の迷走. マクガバン・レポートは日本食を絶賛した?(1).
   https://shiranenozorba.com/2020_06_07_why-jds-diet-therapy-missed-science14/
1. Oppenheimer GM, Benrubi ID. McGovern’s Senate Select Committee on
   Nutrition and Human Needs Versus the Meat Industry (1976–1977).
   Am J Public Health. 2014;104(1):59-69.
1. Attack on meat has industry seeing red. POLITICO.
   https://www.politico.com/story/2015/02/dietary-guidelines-2015-115321
1. 日本歯科医師会. 歯科関係者のための食育支援ガイド2019.
   https://www.jda.or.jp/dentist/program/pdf/syokuikushiengaido2019.pdf
1. 厚生労働省 e-ヘルスネット. 口腔機能の健康への影響.
   https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-08-001.html
1. 日本歯科医師会. オーラルフレイルとは.
   https://www.jda.or.jp/dentist/oral_frail/pdf/manual_sec_01.pdf
1. 健康長寿ネット. 高齢期の栄養と口腔機能の関わり.
   https://www.tyojyu.or.jp/net/topics/tokushu/koreisha-eiyokanri/eiyou-koukuukinou-kakawari.html
1. 日本歯科医師会. オーラルフレイル.
   https://www.jda.or.jp/oral_frail/

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