Deep Purple 日本武道館公演観戦記――
Deep Purple 日本武道館公演観戦記――「Burn」はなくても、伝説の現在形に触れた夜
4月11日、日本武道館でDeep Purpleのライブを観てきました。
会場に入った瞬間から、ただの来日公演ではない、どこか特別な夜になる気配が漂っていました。Deep Purpleは1968年結成の英国ハードロックを代表するバンドです。日本では武道館公演や名盤『Made in Japan』によって、単なる「外国の有名バンド」を超えた特別な存在感を持ち続けています。
前日には、高市総理がDeep Purpleへの思いを語る中で「Burn」に触れていたこともあり、個人的にはあの名曲が演奏されるのではないかと少し期待していました。けれど、実際の武道館公演で「Burn」が鳴ることはありませんでした。
あとから調べると、現在のメンバー構成ではこれまで一度も「Burn」は演奏されていないとのこと。昨夜のセットリストは、過去の名場面をなぞるためではなく、“いまのDeep Purple”として何を鳴らすかを示すものだったのだと、帰り道になってようやく腑に落ちました。
ところで、Deep Purpleといえば、日本には「王様」という存在がいます。
彼が1995年にリリースした『深紫伝説』は、「Smoke on the Water」を「煙が水の上に」、「Highway Star」を「幹線道路の星」と、Deep Purpleの名曲を直訳日本語で歌い上げたカバーアルバムです。ふざけているようで、実は原曲への深い愛情と敬意に満ちた一枚で、初めて聴いたときには笑いながら感心した記憶があります。
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王様『深紫伝説』(1995年)
「煙が水の上に」「幹線道路の星」――直訳という荒業で、かえって原曲の骨格の強さを再発見させてくれる名盤です。
昨夜の武道館で本物のDeep Purpleを浴びながら、なぜかこのアルバムのことを思い出していました。笑えるほど真剣に向き合った日本語カバーと、いまなお本気で鳴らし続ける本家。どちらも、Deep Purpleへの愛のかたちだと思います。
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公演は「Highway Star」――もとい、「幹線道路の星」で幕を開けました。代表曲が重ねられるたびに会場の熱も自然に高まっていき、「Lazy」「When a Blind Man Cries」「Space Truckin’」「Smoke on the Water」、そしてアンコールの「Hush」と、Deep Purpleの長い歴史と現在の説得力がひとつの流れとして立ち上がっていきました。
今回のツアータイトルは”Mad in Japan Tour”。1972年の名盤『Made in Japan』を思わせる言葉遊びで、日本のファンとの長い関係を改めて意識させるものでした。武道館という場所で彼らの音を浴びていると、好きなバンドのライブを観ているというだけでなく、ロックの歴史の続きに立ち会っているような不思議な感覚になりました。
ステージを見ながら何度も思ったのは、Deep Purpleが”伝説のバンド”であるだけでなく、“まだ終わっていないバンド”でもあるということです。懐かしい曲を聴いて過去を思い出すだけでなく、いまこの瞬間に鳴っている音そのものに身を置ける。そのこと自体が、この夜のいちばん大きな価値でした。
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「Burn」は聴けなかった。でも、不思議と物足りなさは残りませんでした。むしろ、期待していた1曲の不在さえ納得させる現在進行形のDeep Purpleに立ち会えたことが、十分すぎるほどの贅沢でした。
武道館をあとにする頃には、「Burnが聴けなかった夜」ではなく、「Deep Purpleの現在形をしっかり浴びた夜」として、この公演が心に刻まれていました。これだけ満たされた気持ちで帰れるのは、やはりDeep Purpleというバンドの底力なのだと思います。
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https://youtu.be/tfS5h6BilEs?si=dkiowkBApmhRqr8f
「笑えるほど真剣」という王様の姿勢は、ライブ会場でDeep Purpleを浴びながら改めて思い出すと、なんだか妙に納得感がありました。音楽への向き合い方は人それぞれ違っていい。でも、本気であることだけは共通している。そんなことを考えながら、武道館の夜を後にしました。
