「チルで、ちょっとバカっぽい」? 10代が本当に望む歯医者さんの姿
# 「チルで、ちょっとバカっぽい」?
10代が本当に望む歯医者さんの姿
「中学生になってから、歯医者に来たがらなくなった」――診療室でよく伺うお悩みです。実は最近、「思春期の子たちは歯医者をどう見ているのか?」を本気で調べた研究が世界中で増えています。今回はその中から、面白くて本質を突いた知見をご紹介します。
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## “A bit chill, a bit silly”
── ノルウェーの10代が語った理想の歯医者
2025年、国際歯科誌 BMC Oral Health に興味深い論文が掲載されました [1]。ノルウェーの13〜19歳50名に「どんな歯医者なら安心して通える?」と匿名で聞いた研究です。サマーキャンプというリラックスした場で、同世代の協力者が一緒に質問を作るという工夫が光ります。
浮かび上がった10代の本音は、大きく2つ。まず「雰囲気がチル(ゆるい)であること」。ピリピリした空気や威圧感は苦手で、多少ラフでも話しかけやすい雰囲気だと安心できる。次に「ちょっとシリー(冗談も言える)な関わり」。無言で進む治療は怖い。短い冗談や日常会話が挟まるだけで、緊張がぐっとほぐれるというのです [1]。
具体的に好まれたのは、治療前に「今日はここまでやります」と見通しを伝えること、治療中も「水が出ます」「少ししみるかも」と短く実況すること、そして親ではなく本人に向かって話すこと [1, 2]。逆に嫌われたのは、無言の治療、親とだけ話す対応、「なんで磨かないの」という上から目線の叱責でした。
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## 「こわい」の正体を分解する
別の研究では、10代の「歯医者がこわい」という気持ちの中身も分析されています [3]。YouTubeの体験談などを質的に調べた結果、恐怖は「何をされるか分からない不安」「口がふさがる窒息感」「椅子を倒されて身をまかせるしかないコントロール喪失感」「痛みの予期不安」「怒られる恥ずかしさ」に分けられることが分かりました。怖さの種類に合わせて、説明を増やす・休憩のサインを決める・治療を短く区切るなど、対応を変えることが重要だと指摘されています [3, 4]。
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## 「やりなさい」より「一緒に決めよう」
スウェーデンの研究では、歯科衛生士が行動変容理論に基づく技法を使い、10代と「本当はどうなりたい?」「今できる小さな一歩は?」を一緒に話し合う試みが行われました。若者からは「怒られないので話しやすかった」「自分で決めた感覚があって、やる気が出た」という声が聞かれています [5]。複数の研究を整理したレビューでも、行動理論に基づくプログラムは単なる情報提供より効果が高いと報告されています [6]。
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## 当院が大事にしていること
これらの研究が教えてくれるのは、思春期の子どもたちは「だらしないから来ない」のではなく、雰囲気や対応の仕方にとても敏感だということです。
当院では、治療の見通しを最初に短く伝える、治療中も声かけをしながら進める、親御さんだけでなく本人と向き合って話す、できている点を具体的に褒める、そして適度に雑談も交える――こうしたことを日々意識しています。
少し「チルで、ちょっとだけシリー」なくらいが、10代にはちょうど良いのかもしれません。
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### 参考文献
1. Jasbi A, et al. “A bit chill, a bit silly” a qualitative study on adolescents’ views of dental clinical encounters in Norway. *BMC Oral Health*. 2025;25:1644.
1. Høiseth M, Jasbi A. Adolescents’ views on oral health care and promotion in Norway. *Front Oral Health*. 2024;5:1290652.
1. Kalmes RC, et al. Dental Fear and Anxiety in Children and Adolescents: Qualitative Study Using YouTube. *J Med Internet Res*. 2013;15(2):e29.
1. Assessment of Dental Fear and Anxiety Tools for Children and Adolescents. *PMC*. 2025. (PMC12564910)
1. Dimenäs SL, et al. Adolescents’ experiences of a theory‐based behavioural intervention for improved oral hygiene. *Int J Dent Hyg*. 2022;20(4):609–619.
1. Peerbhay F, et al. Effectiveness of oral health promotion in children and adolescents through behaviour change interventions: A scoping review. *PLOS ONE*. 2025;20(1):e0316702.
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*(本記事は海外の研究論文をもとに、患者さん向けに分かりやすくまとめたものです)*
