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「永久帰国」騒動について思うこと

# 「永久帰国」騒動について思うこと

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最近、SNSで「永久帰国」という言葉が話題になっています。

きっかけは日経新聞の記事でした。長年アメリカに住んでいた日本人が、老後は日本に戻って暮らしたいと「永久帰国」を決断した、という内容です。これがX(旧Twitter)で拡散されて、大きな議論になりました。

「若いころは海外で稼いで、年を取ったら日本の医療や介護にタダ乗りか」という批判。一方で「アメリカでちゃんと税金も払ってきた人を叩くのはおかしい」という反論。タイムラインが荒れに荒れていました。

私もこの話題が気になって、少し調べてみました。今回はその中で感じたことを書いてみます。あくまで私個人の意見ですので、気軽に読んでいただければ。

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## そもそも何が問題になっているのか

まず「永久帰国」した人が日本の制度をどう使えるのか、ざっくり整理してみます。

SNSの議論を見ていると、感情論と事実がかなりごちゃ混ぜになっている印象でした。

### 年金と医療保険は別の制度です

ここが一番誤解されているところだと思います。

日本とアメリカの間には「日米社会保障協定」というものがあります。ただ、これは主に年金の二重加入を防ぐ取り決めで、アメリカで年金を払ってきたからといって、日本の医療保険や介護保険が自動的に使えるわけではありません。

つまり「向こうで払ってたんだから日本でも当然でしょ」とはならない、というのがまず押さえておきたいポイントです。

### では、帰国したらどうなるのか

「じゃあ無保険なの?」というと、そうでもありません。

日本に住民票を置けば、健康保険(国保など)にも介護保険にも加入できます。帰国後は他の日本在住者と同じように保険料を払って、医療や介護を受ける形になります。

ただし、帰国した初年度は日本での所得がないため、保険料はかなり低く設定されます。介護保険も、海外にいた期間の保険料を遡って請求されることはありません。

ここに「ずるい」と感じる人がいるのは理解できます。日本で何十年も保険料を払い続けてきた人と、帰国したばかりの人が同じ医療・介護サービスを受けられる。これは制度の仕組み上そうなっているのですが、感情的には引っかかるのも無理はないと思います。

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## 両方の気持ちがわかる、というのが正直なところ

私がこの議論を見ていて思ったのは、「どちらの気持ちもわかるな」ということでした。

日本でずっと働いて、毎月けっこうな額の社会保険料を払っている方からすれば、「自分たちが支えている制度を、後から来た人が同じように使えるのはどうなの?」と思うのは自然です。最近は保険料の負担もどんどん重くなっていますから、なおさらでしょう。

一方で、海外で長く暮らしてきた方の立場で考えると、アメリカの医療費は本当に高額です。しかも年を取って、母国語ではない言葉で複雑な医療の話を聞き、大事な判断をし続けるのは、想像以上に大変なことだと思います。「最期は日本語の通じる場所で安心して暮らしたい」という気持ち自体を否定するのは、ちょっと酷ではないでしょうか。

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## 怒りの向け先は「個人」ではなく「制度」では

今回の騒動で一番気になったのは、怒りが「帰国してくる個人」に向かっていたことです。

SNSだとどうしても、特定の誰かを叩く方向に流れやすいですよね。でも冷静に考えると、その方たちは別にルールを破っているわけではありません。現行の制度に従って手続きをしているだけです。

もし今の仕組みに問題があるなら、変えるべきは制度のほうです。たとえば海外在住期間に応じた保険料の設計とか、帰国後に一定期間の待機期間を設けるとか、やり方はいろいろあるはずです。そういう議論こそ本当に必要なことで、個人を攻撃しても何も解決しないと思うのです。

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## 大事なのは「この制度を守ること」

立場は違っても、「日本の医療や介護の制度がこれからもちゃんと続いてほしい」という思いは、みんな同じではないでしょうか。

帰国される方には、この制度が多くの人の保険料で成り立っている社会インフラだということを知った上で、地域の一員として暮らしていただけたらと思います。

そして日本でずっと暮らしている方には、不満を感じるのは当然として、その声を「制度をどう良くするか」という方向に向けていただけたら、それが結局は自分たちの医療を守ることにつながるのだと思います。

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## おわりに

私は政策の専門家でも何でもありません。ただ、SNSで飛び交う激しい言葉を見ていて、「もう少し落ち着いて考えてみてもいいんじゃないかな」と感じたので、今回記事にしてみました。

この騒動が、誰かを傷つけるだけで終わるのではなく、「じゃあどうすればいいんだろう」と考えるきっかけになればいいなと思っています。

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### 参考文献・参考サイト

1. 日本経済新聞「人生の最後は日本で 米国から『永久帰国』当事者の決断」(2026年1月29日)  
   https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD2443E0U5A221C2000000/
1. 厚生労働省「海外で働かれている皆様へ(社会保障協定)」  
   https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/shakaihoshou.html
1. 在アトランタ日本国総領事館「日米社会保障協定」  
   https://www.atlanta.us.emb-japan.go.jp/nihongo/shakaihosho.html
1. LaLaLa USA「公的介護保険制度は海外帰国者でも受けることができるか」  
   https://lalalausa.com/archives/64893
1. Japan Business Line「日本の介護保険制度」  
   https://www.jbline.org/useful-info/senior/kikoku/JPLTCInsurance
1. 日本年金機構「海外から帰国したときの手続き」  
   https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha2/20120712.html
1. Mailmate「国民健康保険は海外在住者も加入できる?」  
   https://mailmate.jp/ja/blog/national-health-insurance-expats
1. 政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」  
   https://www.gov-online.go.jp/article/202209/entry-10482.html
1. GemMed「高齢者・現役世代各々の『世代内』で医療費負担の公平性を」  
   https://gemmed.ghc-j.com/?p=50805
1. ライフメイツ「日本の健康保険(医療保険)・介護保険について」  
   http://www.life-mates.jp/kenpokaigo
1. Discover Nikkei「41年前に駐在員として渡米後…近く日本に永久帰国」  
   https://discovernikkei.org/ja/journal/2023/5/31/shinya-miyata/
1. ソイソース「日本の公的介護保険制度〜今から考える日本への永住帰国」  
   https://soysource.net/lifestyle/returning-to-japan-permanently/care-insurance/

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*※本記事は2026年2月時点の情報に基づく個人の見解です。制度の詳細は状況により異なりますので、具体的な手続きについては市区町村の窓口や専門家にご相談ください。*

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