令和8年度診療報酬改定で注目される 「リハ・栄養・口腔連携」の方向性
# 令和8年度診療報酬改定で注目される
「リハ・栄養・口腔連携」の方向性
**※本記事は2026年1月時点の中医協資料に基づく予測であり、正式決定ではありません**
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こんにちは。わかな歯科の若菜です。
令和6年度(2024年)の診療報酬改定で新設された「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」について、令和8年度(2026年)改定に向けた議論が進んでいます。まだ正式決定前ではありますが、中医協での議論から見えてきた方向性を、できるだけわかりやすくお伝えします。
## そもそも「リハ・栄養・口腔連携」って何?
入院すると、体を動かさなくなったり、食事が十分に取れなくなったりして、急に体力が落ちてしまうことがあります。特に高齢の方では、数日間ベッドで安静にしているだけで、筋力が低下し、退院後に寝たきりになってしまうリスクが高まります。
こうした状態を防ぐため、入院後できるだけ早い段階から、**理学療法士・作業療法士などのリハビリ専門職、管理栄養士、そして歯科医療職**がチームを組んで患者さんを支える仕組みが作られました。
具体的には、入院後48時間(2日)以内に以下の3つをチェックします:[1][7]
1. **動く力(ADL)**: ベッドから起き上がれるか、歩けるか、身の回りのことができるか
1. **栄養状態**: 体重や筋肉量、食事はきちんと食べられているか
1. **お口の状態**: 歯や入れ歯の状態、飲み込む力、口の中の清潔さ
そして、この評価をもとに、リハビリ・栄養管理・口腔ケアの計画を立てて実践していきます。
## 理想的な仕組みなのに、
なぜ広がっていない?
この「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」は、とても良い考え方なのですが、実際に届出をしている病院は**全体の約9%**にとどまっています。[4][6]
その理由として:
- 土日祝日も含めて、平日の8割以上のリハビリを提供しなければならない
- 専任の管理栄養士や専従のリハビリスタッフを配置する必要がある
- 書類作成やカンファレンス(多職種での話し合い)の負担が大きい
- 地方の病院では、休日も対応できる人員を確保するのが難しい
といった課題が指摘されています。[6][7][10]
「理念は素晴らしいけれど、現場では回しきれない」というのが実情なのです。
## 令和8年度改定で予想される5つの変更点
中医協(中央社会保険医療協議会)での議論を踏まえると、以下のような方向性が見えてきています。
### 1. 「やったかどうか」から
「効果があったか」への転換
現在の加算は、「48時間以内に評価を行ったか」「計画を立てたか」という**やるべきことをやったかどうか**を評価する仕組みです。[5][7]
今後は、それに加えて**実際に効果があったか**も重視される方向です。[1][2][8]
具体的には:
- 入院中に動ける力(ADL)が保たれたか、改善したか
- 体重や筋肉量が維持できたか、食事量は十分だったか
- 口から食べ続けられているか、お口の状態が悪化していないか
つまり、「チームで関わりました」というだけでなく、「その結果、患者さんの寝たきりやフレイル(虚弱)を実際に防げたのか」が問われるようになります。
これは医療全体の流れとして、「医療の質」をより重視する方向性と一致しています。
### 2. 対象となる病棟が広がる可能性
現在は主に急性期の病棟(一般病棟)が対象ですが、今後は以下の病棟にも広がる可能性があります。[1][2][9]
- **地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟**: 急性期治療を終えた後、在宅復帰に向けた医療・リハビリを提供する病棟
- **回復期リハビリテーション病棟**: 脳卒中や骨折後など、集中的にリハビリを行う病棟
高齢の患者さんの多くは、「急性期病院→回復期病院→自宅や施設」という流れで移動します。その各段階で、リハビリ・栄養・口腔のケアが途切れてしまうと、せっかく回復した機能が再び低下してしまうことがあります。
対象病棟が広がることで、入院から退院、そして在宅生活まで、**切れ目のない支援**が受けられるようになると期待されています。
### 3. 現場の実情に合わせた要件の見直し
現在の算定要件が厳しすぎるため、多くの病院が届出を断念しています。そこで、以下のような見直しが検討されています。[1][2][11]
**休日リハビリ要件の柔軟化**
- 土日祝も平日の8割以上のリハビリ提供という条件を、病院の規模や地域の実情に応じて調整
- 地方の小規模病院でも取り組みやすい条件設定
**事務負担の軽減**
- 評価項目や書類を整理し、本当に必要なものに絞る
- カンファレンスの頻度や記録方法の効率化
**人員配置要件の見直し**
- 専任・専従といった厳格な配置条件を、現実的な人材確保状況に合わせて調整
これらが実現すれば、より多くの医療機関で連携体制を整えることができ、結果として多くの患者さんが恩恵を受けられるようになります。
### 4. 歯科の役割をより明確に
現状では「口腔」という言葉が入っているものの、歯科の関与は「口の中の状態をチェックする」「必要なら歯科を受診してもらう」という程度にとどまっています。[1][7][12]
今後は、歯科がより実質的に関わることが評価される方向です。[1][11][13]
**具体的には:**
- 実際に歯科受診につながった件数、専門的な口腔ケアを実施した件数を評価
- 手術前後の口腔管理(周術期等口腔機能管理)との連携強化
- 誤嚥性肺炎の予防や栄養状態の改善に、歯科介入がどれだけ貢献したかをデータで検証
**歯科ができること:**
- 入れ歯が合わなくて食べにくい→入れ歯の調整
- 飲み込む力が弱くなっている→嚥下訓練の指導
- 口の中が汚れている→専門的な口腔ケア、歯石除去
- 虫歯や歯周病がある→治療
これらの歯科治療や指導が、患者さんの「口から食べる力」を守り、栄養状態の改善や誤嚥性肺炎の予防につながります。
当院のような地域の歯科医院が、病院と連携して患者さんの口腔機能を支える役割が、今後さらに重要になってくると考えられます。[14][15]
### 5. 地域全体で「食べる力」を
守る仕組みへ
これらの改定が実現すると、患者さんにとって以下のようなメリットが期待できます。[7][15][16]
**入院中:**
- 入院してすぐに、リハビリ専門職・栄養士・歯科のチームがあなたの状態をチェック
- 「動く力」「食べる力」「お口の健康」を守るための計画を立ててくれる
- 寝たきりや誤嚥性肺炎のリスクを早期に発見し、予防できる
**退院後:**
- かかりつけ歯科医、かかりつけ医、訪問看護、訪問リハビリなどがスムーズに連携
- 在宅や施設でも「口から食べ続ける」ことをチームで支えてもらえる
- 入院中に立てた計画が、退院後も継続される
つまり、病院だけでなく、**地域全体でリハビリ・栄養・口腔ケアをセットで考える仕組み**が整っていくということです。
## 最後に
令和8年度診療報酬改定の具体的な内容(告示・通知)は、これから正式に発表されます。まだ確定していない部分も多いですが、**「口から食べる力を守る」「入院しても寝たきりにならない」という基本方針**は今後も変わらないと考えています。
正式な改定内容が公表され次第、あらためて詳しくお伝えします。
ご不明な点や、ご自身やご家族の口腔機能について気になることがありましたら、いつでもご相談ください。
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## 参考文献
1. 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案)」
<https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001629050.pdf>
1. [1post.jp](http://1post.jp)「【総まとめ】R8年度診療報酬改定 中医協議論でリハはどう変わるか」
<https://1post.jp/8201>
1. 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の基本方針の概要」
<https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001610160.pdf>
1. JIHO「【中医協】リハビリ・栄養・口腔連携体制加算、届出『9%』」
<https://mf.jiho.jp/article/259611>
1. [PT-OT-ST.NET](http://PT-OT-ST.NET)「【リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算】*概要|令和6年度診療報酬改定」
<https://www.pt-ot-st.net/contents4/medical-treatment-reiwa-6/department/2237>
1. [PT-OT-ST.NET](http://PT-OT-ST.NET)「『リハビリ・栄養・口腔連携体制加算』届け出9%にとどまる」
<https://www.pt-ot-st.net/index.php/topics/detail/1743>
1. 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【個別改定事項(Ⅰ)】」
<https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251539.pdf>
1. [PT-OT-ST.NET](http://PT-OT-ST.NET)「【論点まとめ】リハビリテーションの評価はどう変わる? 令和8年度診療報酬改定」
<https://www.pt-ot-st.net/index.php/topics/detail/1832>
1. WISEMAN「【医療業界動向コラム】第165回 令和8年度診療報酬改定について」
<https://www.wiseman.co.jp/column/series/34237/>
1. Knowlety「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の施設基準 – 令和6年度診療報酬改定」
<https://knowlety.jp/ika/r6-ks8-27_2/>
1. GemMed「『より早期のリハビリ実施』に向け、急性期リハ加算・連携体制を見直し」
<https://gemmed.ghc-j.com/?p=70906>
1. Knowlety「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算 – 令和6年度診療報酬改定」
<https://knowlety.jp/ika/r6-a233/>
1. 大徳通信「令和8年度診療報酬改定|支払側が求める『6つの重点事項』と適正化」
<https://www.daitoku0110.news/p/r8-shinryohoshu-shiharaiiken-overview>
1. STROKE LAB「【2025年展望】医療保険とリハビリテーション診療報酬改定」
<https://www.stroke-lab.com/speciality/41337>
1. GemMed「『最上の改定内容』と高く評価できる―日慢協・井川副会長」
<https://gemmed.ghc-j.com/?p=60884>
1. GemMed「急性期病棟への入棟後『48時間』以内に患者のADL、栄養状態などを評価」
<https://gemmed.ghc-j.com/?p=59653>
