# 運動でがんは予防できる？

──最新研究からわかってきた

3つのメカニズム

こんにちは。わかな歯科の若菜です。

「運動が健康によい」とはよく言われますが、実は運動には**がんそのものを予防する力**があることが、世界中の大規模研究で明らかになってきています。

今回は、「なぜ運動でがんが減るのか?」について、できるだけわかりやすくお伝えします。

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## 運動で、本当にがんは減るのか?

結論から言うと、**減ります**。

世界保健機関(WHO)や世界がん研究基金の報告によると、日頃からよく体を動かしている人は、そうでない人に比べて、乳がん・大腸がん・子宮体がん・胃がん・肝がん・腎がんなど、**多くのがんのリスクが10〜20%ほど低い**ことがわかっています。[1][2][3]

さらに驚くべきことに、**すでにがんと診断された方でも**、無理のない範囲で運動を続けていると、がんで亡くなるリスクが2〜4割ほど低くなるという報告もあります。[4][5]

つまり、運動は**がんの予防だけでなく、治療中・治療後の経過にも良い影響を与える**可能性があるのです。

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## なぜ運動でがんが減るのか?──3つのメカニズム

研究が進むにつれて、運動が次の**3つの仕組み**を通じてがんを防いでいることがわかってきました。

### ① ホルモンバランスと代謝が整う

現代人の生活では、座っている時間が長く、食べ過ぎてしまいがちです。その結果、**インスリン**や**IGF-1**といったホルモンが過剰になることがあります。[2][6]

これらのホルモンは本来、血糖値を下げたり細胞を育てたりする大切な働きをしていますが、**多すぎるとがん細胞が増えやすい環境**をつくってしまいます。

定期的な運動は、これらのホルモンを適正な範囲に戻してくれます。また、運動で内臓脂肪が減ると、脂肪組織から出る悪玉ホルモン(レプチンなど)が減り、逆に**アディポネクチン**という善玉物質が増えます。[1][2]

さらに、脂肪が減ることでエストロゲンの産生も抑えられるため、**乳がんや子宮体がんなどホルモン関連のがん**のリスクも下がると考えられています。[2][5]

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### ② 慢性炎症を抑え、免疫の老化を防ぐ

#### 慢性炎症とは?

血液検査で測れる**CRP**や**炎症性サイトカイン**が、少しだけ高い状態が続くことを「**慢性炎症**」と呼びます。[2]

これは、ケガや感染症のような急性の炎症とは違い、**体の中でじわじわと炎症が続いている状態**です。慢性炎症があると、DNAが傷つきやすくなったり、細胞が異常に増殖しやすくなったりして、大腸がん・肝がん・膵がん・肺がんなど**様々ながんの発生リスク**が高まることがわかっています。[1][2]

定期的に運動している人は、CRP、IL-6、TNF-αといった炎症マーカーが低く、逆にIL-10やアディポネクチンなど「**炎症を鎮める物質**」が多いことが、数多くの研究で確認されています。[1][2][4]

つまり、**運動は慢性炎症を抑える”薬”のような働き**をしているのです。

#### 免疫の老化を遅らせる

私たちの体には、異常な細胞やがん細胞を見つけて排除する**T細胞**や**NK細胞**といった免疫細胞がいます。しかし、年齢を重ねるとこれらの細胞の数や働きが衰えてきます(これを「**免疫老化**」といいます)。[7][8]

運動をすると、交感神経や筋肉からのシグナルによって、これらの免疫細胞が一時的に血液中に動員され、その後リンパ節や全身の組織に再配置されます。[9][10]

この**“出入り”が繰り返される**ことで、古くなって働きが悪くなった細胞が整理され、新しく元気な細胞と入れ替わりやすくなります。その結果、**免疫の若々しさが保たれる**と考えられています。[9][11][12]

実際、マウスの実験では、運動させたグループの方が腫瘍の中にNK細胞やCD8陽性T細胞が多く入り込み、がん細胞を攻撃している様子が確認されています。[10][13] 人でも、運動後にこれらの免疫細胞の”がんを殺す力”が高まることが報告されており、**運動は免疫を鍛えるワクチンのような側面**があるといえます。[9][14]

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### ③ 腫瘍そのものと、その周辺環境を変える

運動中、筋肉からは「**マイオカイン**」と呼ばれる様々なタンパク質が分泌されます。

そのうちの一つである**SPARC**は、大腸がん細胞にアポトーシス(細胞の自滅)を引き起こすことが動物実験で示されています。[13]

さらに、運動は腫瘍の周囲の血流を改善し、**酸素不足や強い酸性といった”免疫が働きにくい環境”**を和らげる効果があります。[10][15] その結果、抗がん剤や免疫療法の薬が腫瘍の中までしっかり届きやすくなり、**治療効果を高める**ことも期待されています。[4][10]

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## どれくらい運動すればいいの?

世界保健機関(WHO)や世界がん研究基金などのガイドラインでは、次のような運動量が推奨されています。[1][16][17]

### 理想的には

- **中程度の強さの運動(速歩など)を週に150〜300分**
- **+ 週2回以上の筋力トレーニング**

### まずは無理なく始めたい方へ

- **今より座っている時間を減らす**
- **1日10分の散歩から始める**

大規模な研究では、「まったく運動しない人」が「週に数回、30分程度歩く習慣」を持つようになるだけでも、**がん全体のリスクが有意に下がる**ことが示されています。[2][18][19]

また、歩数で見ると、**1日7,000〜9,000歩あたりまで**は、歩数が増えるほどがんリスクが下がるというデータもあります。[18]

**「完璧な運動」を目指す必要はありません。まずは今よりも少しだけ、体を動かす時間を増やすこと**が大切です。

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## 歯科からできること

実は、**お口の中の慢性炎症(歯周病など)も、全身の炎症や糖尿病、心血管疾患、そして一部のがんと関連している**ことがわかってきています。[20]

**歯周病の治療・予防**と**定期的な運動**は、全身の慢性炎症と免疫老化を抑える”**二本柱**“と言えます。

当院では、お口の健康を守ることはもちろん、患者さんの全身の健康づくりもサポートしたいと考えています。

- **よく噛んで食べること**
- **適切な体重と筋力を保つこと**
- **毎日少しでも体を動かすこと**

これらを、口腔ケアとセットでお伝えしていければと思います。

ご質問やご相談がありましたら、いつでもお気軽にお声がけください。

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## 参考文献

1. Dhamnetiya D, et al. Role of physical activity in cancer prevention: An update. *Cancer Medicine*. 2025. <https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12400211/>
1. Friedenreich CM, et al. Physical Activity and Cancer Outcomes: A Precision Medicine Approach. *Clinical Cancer Research*. 2016. <https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7877262/>
1. Kyu HH, et al. Physical activity and cancer risk: a dose-response analysis for the Global Burden of Disease Study 2019. *Cancer Communications*. 2023. <https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/cac2.12488>
1. Najem S, et al. Physical Activity and Cancer Care—A Review. *Cancers*. 2022. <https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9454950/>
1. McTiernan A, et al. Physical Activity in Cancer Prevention and Survival: A Systematic Review. *Medicine & Science in Sports & Exercise*. 2019. <https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6527123/>
1. Hojman P, et al. Why exercise has a crucial role in cancer prevention, risk and treatment. *British Medical Bulletin*. 2021. <https://academic.oup.com/bmb/article/139/1/100/6356430>
1. Cheng Y, et al. Immunosenescence, Physical Exercise, and their Implications for Cancer Immunotherapy. *Aging and Disease*. 2025. <https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11781184/>
1. Xu K, et al. Immunosenescence: molecular mechanisms and diseases. *Signal Transduction and Targeted Therapy*. 2023. <https://www.nature.com/articles/s41392-023-01451-2>
1. Hojman P, et al. The effect of physical exercise on anticancer immunity. *Nature Reviews Immunology*. 2024. <https://www.fisiologiadelejercicio.com/wp-content/uploads/2024/04/The-effect-of-physical-exercise-on-anticancer-immunity.pdf>
1. Shi Q, et al. Impact of exercise on cancer: mechanistic perspectives and clinical implications. *Journal of Hematology & Oncology*. 2024. <https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11427289/>
1. Simpson RJ, et al. Does Regular Exercise Counter T Cell Immunosenescence Reducing the Risk of Developing Cancer and Promoting Successful Treatment of Malignancies? *Oxidative Medicine and Cellular Longevity*. 2017. <https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5511671/>
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1. Yan B, et al. Roles and molecular mechanisms of physical exercise in cancer prevention and treatment. *Journal of Sport and Health Science*. 2021. <https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7987556/>
1. Nieman DC, et al. Exercise and the immune system: taking steps to improve responses to cancer immunotherapy. *Journal for ImmunoTherapy of Cancer*. 2021. <https://jitc.bmj.com/content/9/7/e001872>
1. Yan B, et al. Roles and molecular mechanisms of physical exercise in cancer prevention and treatment. *Journal of Sport and Health Science*. 2021. <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32738520/>
1. World Cancer Research Fund. Physical activity and the risk of cancer. 2021. <https://www.wcrf.org/wp-content/uploads/2021/02/Physical-activity.pdf>
1. American Cancer Society. American Cancer Society Guideline for Diet and Physical Activity for Cancer Prevention. 2020. <https://www.cancer.org/cancer/risk-prevention/diet-physical-activity/acs-guidelines-nutrition-physical-activity-cancer-prevention.html>
1. National Cancer Institute. Daily physical activity, even at light intensities, linked to lower cancer risk. 2025. <https://www.cancer.gov/news-events/press-releases/2025/light-intensity-physical-activity-cancer-risk>
1. Moore SC, et al. Leisure-Time Physical Activity and Risk of 26 Types of Cancer in 1.44 Million Adults. *JAMA Internal Medicine*. 2016. <https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2521826>
1. Islami F, et al. Healthy Lifestyle and Cancer Risk: Modifiable Risk Factors to Prevent Cancer. *Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention*. 2024. <https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10974142>/​​​​​​​​​​​​​​​​