わかな歯科

お知らせ

~なぜ「市販薬があるから保険は使えません」が危険なのか~

知っておきたい「OTC類似薬」問題

~なぜ「市販薬があるから保険は使えません」が危険なのか~

## はじめに:今、何が議論されているの?

 最近、政府では「OTC類似薬」と呼ばれる薬について、保険適用から外すかどうかの議論が進んでいます。簡単に言うと、「薬局で買える市販薬と似た成分の薬は、病院でも全額自己負担にしよう」という話です。

 医療費を削減したいという理由ですが、私たち歯科医師は、この動きに大きな不安を感じています。なぜなら、患者さんの健康と安全に深刻な影響を与える可能性があるからです。

## そもそも「OTC類似薬」って何?

**OTC医薬品**とは、薬局やドラッグストアで処方箋なしに買える「市販薬」のことです。風邪薬や胃薬、湿布などがこれにあたります。

 一方、**OTC類似薬**とは、市販薬と同じような成分を含んでいるけれど、医師が診察した上で処方する「医療用医薬品」のことです。

「同じ成分なら市販薬で十分では?」と思われるかもしれませんが、これには大きな落とし穴があります。

## 歯科でよく使う「ロキソニン」を例に考えてみましょう

 歯の痛みでよく処方される「ロキソニン」を例にとって、なぜ医師の処方が大切なのかを説明します。

【問題点1】

痛みの原因を見逃してしまう危険

 歯が痛いとき、多くの方は「虫歯かな?」と思われるでしょう。しかし実は、歯の痛みには様々な原因があります:

- **虫歯や歯周病**(最も多い)
- **口腔がん**
- **副鼻腔炎**
- **心疾患**(まれですが、心筋梗塞の症状として歯痛が現れることがあります)
- **三叉神経痛**

 市販の痛み止めで痛みを抑え続けていると、重要な病気のサインを見逃してしまう可能性があります。私たち歯科医師は、痛みの原因をしっかりと診断し、「重大な病気ではないこと」を確認するという重要な役割を担っています。

【問題点2】

副作用や薬の飲み合わせの危険

 ロキソニンは効果的な薬ですが、以下のような副作用があります:

**よくある副作用**

- 胃痛、胸やけ(1~5%の方に起こります)
- 胃潰瘍になることもあります

**まれだが重篤な副作用**

- 腎機能障害
- 肝障害
- アレルギー反応

特に注意が必要なのは、他の薬との飲み合わせです。例えば:

- **高血圧の薬**を飲んでいる方:血圧を下げる効果が弱くなることがあります
- **血液をサラサラにする薬**を飲んでいる方:出血しやすくなることがあります

 私たち歯科医師は、患者さんのお薬手帳を確認し、全身の状態を把握した上で、最も安全な薬を適切な量で処方しています。

## 患者さんの負担が増えるとどうなる?

 もしOTC類似薬が保険適用外になると、患者さんの自己負担が大幅に増えます。例えば:

- **子ども**:現在は医療費助成で負担がない場合が多い
- **高齢者**:慢性的な痛みで長期間薬が必要
- **慢性疾患の患者さん**:継続的な治療が必要

 負担が増えると、「病院に行かずに市販薬で済ませよう」と考える方が増えるでしょう。しかし、これは悪循環を生みます:

1. **受診を控える** → 専門家の診断を受けない
1. **市販薬で様子を見る** → 根本的な治療にならない
1. **症状が悪化する** → より深刻な状態になる
1. **結果的に医療費が増大** → 手術や入院が必要になる

 つまり、目先の医療費を削減しようとして、かえって大きな医療費がかかってしまう可能性があるのです。

## 私たち歯科医師からのお願い

お口の症状で気をつけて

いただきたいこと

- **歯が痛い**:虫歯だけでなく、様々な原因が考えられます
- **歯ぐきが腫れた**:歯周病以外にも重篤な疾患の可能性があります
- **口の中にできもの**:早期発見が重要な口腔がんの可能性もあります

市販薬を使う前に

考えていただきたいこと

1. **症状の原因は何か?** → まずは専門家に相談
1. **他の薬を飲んでいないか?** → 飲み合わせをチェック
1. **アレルギーはないか?** → 安全性の確認

## まとめ:大切なのは

「予防」と「早期発見」

 私たち歯科医師がお伝えしたいのは、「痛くなってから治療する」のではなく、「痛くならないように予防する」ことの大切さです。

定期的な検診を受けていただくことで:

- **虫歯や歯周病の早期発見**ができます
- **口腔がんなど重篤な疾患**も早期に発見できます
- **結果的に治療費も抑える**ことができます

 また、もし症状が出た時は、市販薬に頼る前に、まずは私たちにご相談ください。適切な診断と治療により、皆さんの健康を守ることが私たちの使命です。

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**お口の健康は全身の健康につながります。小さな不安でも、お気軽にご相談ください。**

*※この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療相談に代わるものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。*

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