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コーヒーと腸内細菌の驚くべき関係:最新研究が解き明かす健康の秘密

# コーヒーと腸内細菌の驚くべき関係:

最新研究が解き明かす健康の秘密

 こんにちは!毎日の診療の合間にコーヒーを飲んでいる歯科医師です。今日は、みなさんが普段飲んでいるコーヒーと、お腹の中にいる小さな生き物たち「腸内細菌」の関係について、わかりやすくお話しします。

## 腸内細菌って何?なぜ大事なの?

 まず、「腸内細菌」について簡単に説明しますね。私たちのお腹の中(特に大腸)には、目に見えないほど小さな細菌が約100兆個も住んでいます。これは人間の体の細胞数とほぼ同じで、まるで体の中にもう一つの「微生物の世界」があるようなものです。

 この細菌たちは、私たちが食べ物を消化するのを手伝ったり、病気から守ってくれたり、免疫力を高めてくれたりする大切な働きをしています。つまり、腸内細菌は私たちの健康にとって欠かせない「パートナー」なのです。

## 世界最大規模の研究で分かったこと

**研究の規模がすごい!**

2024年11月、世界的に有名な科学雑誌「Nature Microbiology」に、コーヒーと腸内細菌の関係を調べた過去最大規模の研究が発表されました。この研究では:

- アメリカとイギリスの2万2千人以上の人々を調査
- さらに世界中の211の研究グループのデータ(約5万4千人分)も分析
- 合計で約7万6千人という膨大な人数のデータを使用

 これほど大きな規模の研究は今まで不可能でしたが、最新のDNA解析技術(メタゲノム解析)の発達により実現しました。

## 特別な細菌「ローソニバクター・アサッカロリティカス」の発見

**コーヒーを飲む人のお腹で大増殖!**

 この研究で最も驚くべき発見は、コーヒーを普段飲む人のお腹に「ローソニバクター・アサッカロリティカス」という特別な細菌が、飲まない人の**4.5倍から8倍**も多く住んでいることでした。

 この細菌は2018年に初めて発見された比較的新しい種類で、まだ詳しく研究されていませんが、「酪酸(らくさん)」という体に良い物質を作ることが分かっています。

**カフェインは関係ない?**

 面白いことに、カフェインを抜いた「デカフェコーヒー」を飲む人でも、同じように細菌が増えていました。つまり、コーヒーに含まれる他の成分(ポリフェノールなど)が細菌の「エサ」になっているようです。

## 酪酸って何がすごいの?

 ローソニバクター・アサッカロリティカスが作る「酪酸」は、腸にとって非常に重要な物質です:

- **腸の粘膜のエネルギー源**:大腸の細胞が元気に働くための燃料
- **腸のバリア機能強化**:悪い菌や有害物質をブロック
- **炎症を抑える**:腸の炎症を和らげて健康を保つ

つまり、コーヒーを飲むことで、この良い細菌が増えて、腸がより健康になる可能性があるのです!

## 腸内細菌全体にも良い影響

研究では、コーヒーを飲む人は:

- **腸内細菌の種類が豊富**(多様性が高い)
- **他の良い細菌も増加**(ビフィズス菌の仲間など)

腸内細菌の種類が多いことは、一般的に健康な腸の証拠とされています。多様な細菌がいることで、様々な状況に対応でき、腸全体が安定して働くからです。

## コーヒーの健康効果の秘密

 これまでコーヒーには多くの健康効果があることが知られていました:

- 心臓病のリスク低下
- 2型糖尿病の予防j
- 肝臓がんや大腸がんのリスク低下
- 死亡率の低下

 今回の研究により、これらの効果の一部が「腸内細菌の変化」を通じて起こっている可能性が示されました。つまり、コーヒーは直接体に作用するだけでなく、腸内細菌という「仲介者」を通じて健康に良い影響を与えているのです。

## 適量が大切!コーヒーの上手な飲み方

**推奨される量**

 多くの研究で、**1日3〜4杯**のコーヒーが最も健康効果が高いとされています。これは約400mgのカフェインに相当し、世界的に安全とされる量です。

**注意すべき副作用**

ただし、飲み過ぎ(1日5杯以上)は以下のリスクがあります:

- **胃酸が増えすぎて胃が荒れる**
- **逆流性食道炎**(胸やけ)のリスク増加
- **歯周病の悪化**(私たち歯科医師が心配するポイント!)
- **下痢や腹痛**

**こんな人は要注意**

- 胃が弱い人
- 過敏性腸症候群の人
- 妊娠中の女性
- 不眠症の人

## 体に優しいコーヒーの飲み方

**飲むタイミング**

- **朝食後**に飲む(空腹時は避ける)
- **夕方まで**に済ませる(夜は眠れなくなる可能性)

**飲み方の工夫**

- **ブラックコーヒー**が最も健康的
- 甘くしたい場合は砂糖を控えめに
- **低酸度コーヒー**や**コールドブリュー**は胃に優しい

## まとめ:一杯のコーヒーが作る健康の輪

今回の研究により、私たちが何気なく飲んでいるコーヒーが、お腹の中で小さな生命の営みを支え、それが私たちの健康につながっているという素晴らしい発見がありました。

コーヒーを飲むたびに、体の中で:

1. コーヒーの成分が腸に到達
2. 特別な細菌(ローソニバクター・アサッカロリティカス)が元気になる
3. その細菌が体に良い酪酸を作る
4. 腸の健康が向上し、全身の健康につながる

というドラマが繰り広げられているのです。

ただし、何事も「適量」が大切です。1日3〜4杯を目安に、ご自分の体調に合わせて楽しいコーヒーライフを送ってくださいね。

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## 参考文献

1. Manghi, P., Bhosle, A., Wang, K., et al. (2024). Coffee consumption is associated with intestinal Lawsonibacter asaccharolyticus abundance and prevalence across multiple cohorts. *Nature Microbiology*, 9(12), 3120-3134. https://doi.org/10.1038/s41564-024-01858-9

2. Sakamoto, M., Ikeyama, N., Yuki, M., & Ohkuma, M. (2018). Draft genome sequence of Lawsonibacter asaccharolyticus JCM 32166, a butyrate-producing bacterium, isolated from human feces. *Genome Announcements*, 6, e00563-18.

3. 健康長寿ネット. (2024). コーヒーの健康効果とは. 公益財団法人長寿科学振興財団. https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/koureisha-shokuji/coffe-kenkokoka.html

4. サワイ健康推進課. (2024). 研究で分かった!毎日のコーヒー習慣がもたらす健康メリット. https://kenko.sawai.co.jp/healthy/202403.html

5. 厚生労働省. カフェインの過剰摂取について. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html

6. 国立がん研究センター. コーヒー摂取と全死亡・主要死因死亡との関連について. https://epi.ncc.go.jp/can_prev/evaluation/2830.html

7. McNulty, N.P., & Gordon, J.I. (2024). Coffee habits help shape gut communities. *Nature Microbiology*, 9, 3088-3089.

8. Tomas-Barberan, F., et al. In vitro transformation of chlorogenic acid by human gut microbiota. *Journal of Agricultural and Food Chemistry*.

9. かわクリニック. (2024). コーヒーの飲みすぎは胸焼けを悪化させる!!. https://kawaclinic.com/blog/77.html

10. エスクァイア日本版. (2025). 「逆流性食道炎」とは?気を付けるべき食べ物&飲み物9つ. https://www.esquire.com/jp/menshealth/wellness/a32060266/

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