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# サプリメントの「落とし穴」と賢い付き合い方:安全な健康管理のために

# サプリメントの「落とし穴」と賢い付き合い方:安全な健康管理のために

 こんにちは。最近、患者さんから「サプリメントを飲んでいるのですが、大丈夫でしょうか?」というご相談をよくいただきます。健康への意識が高まる中で、手軽に栄養を補えるサプリメントを利用される方が増えているのは素晴らしいことです。

 しかし、「食品だから安全」「たくさん飲むほど効果がある」といった思い込みや、「誰にでも同じように効くはず」という期待が、時として思わぬ健康被害を招いたり、期待した効果が得られなかったりすることがあります。今日は、サプリメントを安全かつ賢く活用するために知っておいていただきたいことをお話しします。

## 実は意外に多い?サプリメントによる健康被害

「サプリメントで健康被害なんて本当にあるの?」と思われるかもしれませんが、実際にデータを見ると驚かれるかもしれません。

 国立健康・栄養研究所の報告によると、2021年1月から2023年12月の間に健康食品に関連する注意喚起情報が434件発表され、そのうち実際に健康被害が発生した事例が42例ありました。この中で約8割にあたる34例が、実は「無承認無許可医薬品」という危険な製品によるものでした。

 日本国内だけでも、同期間に6例の健康被害が疑われる事例が報告されており、そのうち4例がダイエット効果を謳った製品、そして4例がインターネット経由で購入されたものでした。健康食品やサプリメントは、医薬品のような厳しい安全性試験が義務付けられておらず、摂取量や使用方法、成分の抽出・加工方法によっては、これまで知られていなかった健康障害の原因となることがあります。また、効果の現れ方や副作用のリスクは、飲む人の体質や健康状態によっても大きく異なります。

## 特に注意していただきたいサプリメント

### 1. インターネットで購入できる「怪しいサプリメント」

**無承認無許可医薬品って何?**

 簡単に言うと、「サプリメント」や「健康食品」と称しながら、実は医薬品の成分が勝手に混ぜられている危険な製品のことです。医薬品を製造・輸入するには、成分や効果、副作用などの詳しい審査を受け、製品ごとに国の承認を得る必要があります。しかし、無承認無許可医薬品はこうした手続きを一切経ずに流通している違法な製品です。

 特にインターネットやSNSで「すぐに痩せる!」「驚きの効果!」「1週間で-5kg!」といった派手な宣伝をしている製品に多く見られます。これらの製品を摂取すると、重大な健康被害が生じる恐れがあります。消費者庁も、インターネット上の健康食品の虚偽・誇大表示に対して改善指導を行っており、特にサプリメントの違反事例が多いと報告しています。

**具体的な危険成分と実際の被害例:**

- **シブトラミン**:食欲を抑える医薬品成分ですが、日本では安全性の問題から承認されていません。血圧上昇、心拍数増加、頭痛、不眠などの副作用があり、実際に2022年には摂取により食欲不振、倦怠感、息苦しさ、貧血が起こり、摂取をやめた後も通院が必要になった方がいらっしゃいます。アメリカでは服用者が死亡したケースも報告されています。

- **フェノールフタレイン**:かつて下剤として使われていましたが、発がん性の懸念から現在は使用が禁止されている成分です。

- **その他の危険成分**:勃起不全治療薬(バイアグラなど)の成分、血糖降下薬の成分、ステロイドホルモンなどが「健康食品」に混入されていた事例も多数報告されています。

### 2. 「天然だから安全」は思い込み?注意すべき天然成分

「天然由来だから体に優しい」と思いがちですが、天然成分由来のサプリメントでも注意が必要です。自然界には毒性を持つ植物も多数存在し、「天然=安全」という考えは間違いです。

**特に注意が必要な成分:**

- **プエラリア・ミリフィカ**:女性ホルモン様作用を期待して美容目的で使われますが、月経不順、不正出血、腹痛、下痢、嘔吐、発疹などの健康被害が多数報告されています。強いホルモン様作用があるため、体のバランスを崩してしまう可能性があります。

- **危険なハーブ類**
  - **コンフリー**:肝臓に深刻なダメージを与える可能性があり、多くの国で食品としての使用が禁止されています。
  - **エフェドラ(マオウ)**:高血圧、動悸、不眠、不安などを引き起こす可能性があります。
  - **カバ**:重篤な肝障害の報告があり、多くの国で販売が制限されています。

**身近なサプリメントでも起こる被害:**

- **カルシウム+ビタミンD**:ある大規模調査では、閉経後の女性が長期間摂取した結果、腎結石のリスクが上昇したという報告があります。また、カルシウムとビタミンDの合剤が脳卒中のリスクを上げる可能性も指摘されています。

- **青汁**:特定保健用食品(トクホ)の青汁でも、肝障害を起こし入院に至ったケースが報告されています。たとえ国が有効性や安全性を評価した特定保健用食品であっても、摂取量や期間など、限られた条件でのデータ確認にとどまります。

- **クロレラ**:下痢や消化器症状を起こしたという報告もあります。

 サプリメントによる健康障害では、肝臓障害が最も多く、次いで急性腎不全、間質性肺炎などが見られます。摂取開始3ヶ月以内の発生が多いものの、10年以上摂取して発生した例もあり、「長く飲んでいるから安心」とは限りません。

### 3. 特に注意が必要:ウコンサプリメントの落とし穴

 私自身も以前、お酒を飲む機会が多かった時期に、「肝臓に良い」と信じて毎日ウコンのサプリメントを飲んでいました。しかし、健康診断で肝機能の数値(ALTやAST)が悪化していることがわかりました。お酒の影響もあったと思いますが、ウコンも関係していた可能性があります。

 実は、この経験は医学的にも裏付けがあります。

**ウコンによる健康被害の実態:**

- 2005年の調査では、薬剤性肝障害の原因薬物としてウコンは報告件数が最も多く、全体の24.8%を占めていました。
- 別の研究では、健康食品・サプリメントが原因の健康被害で、ウコンが原因成分として多く報告されています。
- ウコンの摂取が、自己免疫性肝炎を悪化させた可能性が考えられる症例報告もあります。

 ウコンが肝障害を引き起こす要因としては、ウコンの成分そのものが肝臓の負担になる場合、アレルギー反応、ウコンに含まれる鉄分の過剰摂取などが考えられています。特にC型慢性肝炎など鉄分が過剰になりやすい方は注意が必要です。

## 安全なサプリメント利用のために

 サプリメントは、あくまで食生活の補助として利用するものです。以下の点に注意して、賢く付き合いましょう。

### 基本的な心構え

**「食品」であっても安全とは限らないことを理解する**:大量に摂取すると健康を害するリスクが高まります。ビタミンやミネラルも、サプリメントで摂ると過剰摂取のリスクがあります。例えば、ビタミンEを多量に摂取する習慣のある人で死亡率が上昇したという報告もあります。「多く摂れば摂るほど良い」という考えは危険です。

**効果には個人差があることを知る**:サプリメントの効果は、飲む人の体質、健康状態、遺伝的な要素(酵素の働き方の違いなど)によって大きく異なります。友人には効果があったサプリメントが、自分には全く効果がない、あるいは合わないということもあります。効果を実感できるまでの期間も人それぞれです。

### 選び方と購入時の注意点

**品質管理された製品を選ぶ**:サプリメントを生産する工場には、安全性や品質保持の基準があります。GMP(Good Manufacturing Practice)認定工場で生産された製品は、一定の品質が保たれている目安の一つになります。しかし、アメリカの研究では、スポーツサプリメントの多くでラベル表示通りの成分が含まれていなかったり、量が不正確だったり、禁止成分が含まれていたりしたという報告もあります。表示されている情報を鵜呑みにせず、信頼できる情報源か確認することも大切です。

**安易な宣伝文句に惑わされない**:以下のような表現には特に注意が必要です。
- 「即効性」「万能」「最高のダイエット食品」
- 「ガンが治った」「糖尿病が治る」などの治療・治癒に関する言及
- 「○○日で-○○kg」などの具体的な数値を使った効果の約束
- 「副作用なし」「100%安全」などの安全性に関する断言

 万人に効く健康食品はありません。話がうますぎると感じる宣伝には注意が必要です。

**購入場所を選ぶ**:インターネットやSNSでの個人輸入は、品質や安全性が確認できない製品が紛れている可能性があるため、特に慎重な判断が必要です。できるだけ信頼できる薬局やドラッグストア、公式サイトから購入することをお勧めします。

### 使用時の注意点

**体調に異変を感じたらすぐに中止し、医療機関へ**:以下のような症状が現れた場合は、直ちに使用を中止し、医師に相談してください。
- だるさ、疲労感
- 食欲不振、吐き気
- 皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)
- 尿の色が濃くなる
- 腹痛、下痢
- 発疹、かゆみ
- その他、いつもと違う体調の変化

**持病がある方や薬を服用中の方は事前に相談を**:薬との飲み合わせによっては、予期せぬ影響が出ることがあります。例えば、血液をサラサラにする薬(ワーファリンなど)を飲んでいる方がビタミンKを多く含むサプリメントを摂ると、薬の効果が弱くなる可能性があります。サプリメントを過信して薬や治療を中断すると、病状が悪化する可能性もあります。

### 情報収集の大切さ

**情報を集め、正しく理解する**:どのような健康食品でも、多量に摂取すれば身体に不調をきたす可能性があります。自分が何を摂取しているのかを正しく理解し、情報を集めて把握することが重要です。

 サプリメントの有効性については、専門家の間でも意見が分かれることや、相反する研究結果が出ることも珍しくありません。一つの情報源だけでなく、複数の信頼できる情報を比較検討しましょう。

**信頼できる情報源の例:**
- 国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報
- 厚生労働省の健康食品に関する情報
- 消費者庁の健康食品に関する注意喚起
- 医療機関や薬剤師からのアドバイス

## まとめ

 サプリメントは、私たちの健康をサポートしてくれる便利なものですが、使い方を間違えると逆効果になることもあります。

 大切なことは、サプリメントに頼りすぎず、まずはバランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠といった基本的な生活習慣を整えることです。その上で、不足しがちな栄養素を補う手段として、適切にサプリメントを活用していただければと思います。

 何か気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。正しい知識を持って、安全に健康管理をしていきましょう。

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## 参考文献

1. 公益社団法人 日本整形外科学会. サプリメントの効果について. https://www.joa.or.jp/public/about/supplement.html

2. 「体にいいサプリメント」は2つだけ!? エビデンスを徹底検証. ダイヤモンド・オンライン. https://diamond.jp/articles/-/342381

3. 岐阜県薬剤師会. 健康食品広告の嘘の見破りかた. しいのみつうしん. https://www.gifu-min.jp/pharma/document/488/14.pdf

4. 専門家でさえ意見が食い違う「栄養」についての正しい情報を見分けるにはどうすればいいのか? GIGAZINE. https://gigazine.net/news/20250216-nutrition-advice-misinformation-pseudoscience/

5. 消費者庁、虚偽・誇大表示に改善指導 サプリの違反が圧倒的多数. 日本食糧新聞. https://news.nissyoku.co.jp/news/honmiya20240604052901638

6. 分子栄養学の理論と栄養条件. アトピー外来・サプリメントアドバイス. https://www.hosono-clinic.com/images/atopy/bunshieiyougaku.pdf

7. ヒアルロン酸サプリは本当に効果なし?医師が解説する正しい知識. エスシーシー. https://sclinic.jp/column/1315/

8. 【サプリメントに嘘はないのか?】含有量はどうやって調べる? ビタミンジャングル. https://vitaminj.tokyo/archives/18576

9. 井上病院附属診療所. サプリメント. http://inouefuzokucl.aijinkai.or.jp/image/koramu29.9.pdf

10. スポーツサプリの89%が成分を虚偽記載 米国で調査. Forbes JAPAN. https://forbesjapan.com/articles/detail/64918

11. 【知っておきたい】サプリメントの選び方と購入時の注意点. LIFULL介護. https://kaigo.homes.co.jp/manual/healthcare/medicine/supplement/

12. 国立健康・栄養研究所. 【第13回】健康食品・サプリメントによる健康障害

13. 食品安全委員会. 第4回 「健康食品」は安全とは限らない〜委員長らが異例の呼びかけ

14. 島根県. 無承認無許可医薬品にご注意ください

15. 東邦大学医療センター大森病院 臨床検査部. ウコンと肝障害について

16. 京都市. プエラリア・ミリフィカを含む健康食品に注意しましょう!

17. 伊勢市公式ホームページ. ダイエットゼリーで健康被害

18. 厚生労働省. 「健康食品」の安全性確保に関する現状と課題

19. 厚生労働科学研究成果データベース. 無承認無許可医薬品の調査・分析及び量的概念を含む専ら医薬品の規制に関する研究

20. CiNii Research. ウコンによる薬物性肝障害により影響を受けた自己免疫性肝炎の1例

21. 国立健康・栄養研究所. 国内外で注意喚起されたサプリメントによる健康被害の特徴

22. 医薬品情報学. 健康食品・サプリメントによる健康被害の現状と患者背景の特徴

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