糖尿病患者の寿命に関する最新の研究からわかったこと
【 糖尿病患者の寿命に関する
最新の研究からわかったこと】
## 目次
1. はじめに
2. 日本での大規模調査から見えてきたこと
3. スウェーデンでの研究結果
4. 重要なポイントと今後の展望
5. まとめ
6. 参考文献
## 1. はじめに
糖尿病は世界中で増え続けている病気です。最近の研究で、糖尿病患者さんの寿命について新しいことがわかってきました。ここでは、日本とスウェーデンで行われた大きな研究から、特に重要な発見をご紹介します。
## 2. 日本での
大規模調査から見えてきたこと
中村 二郎, 山内 敏正, 中山 健夫, 他. (2024). アンケート調査による日本人糖尿病の死因 ―2011~2020 年の 10 年間,68,555 名での検討―. 会報告 Report of the Committee.
https://www.jds.or.jp/uploads/files/
article/tonyobyo/67_106.pdf
1) 調査の概要
- 対象:全国208の医療機関の患者さん
- 糖尿病の方:68,555名
- 糖尿病でない方:164,621名
- 期間:2011年~2020年の10年間
2) 主な発見
1. 糖尿病の方の主な死因
- がん:38.9%(特に肺がん、すい臓がん、肝臓がん)
- 感染症:17.0%(特に肺炎)
- 血管の病気:10.9%
2. 平均寿命への影響
- 糖尿病の男性:74.4歳
- 糖尿病の女性:77.4歳
- 一般の方より男性で7.2歳、女性で10.3歳短い
3. 血糖コントロールの重要性
- 血糖値が高めの方は、コントロールの良い方より平均で1.6歳寿命が短くなる
## 3. スウェーデンでの研究結果
Tancredi, M., Rosengren, A., Svensson, A. M., et al. (2015). Excess Mortality among Persons with Type 2 Diabetes. New England Journal of Medicine, 373(18), 1720-1732. https://doi.org/10.1056/NEJMoa1504347
https://www.nejm.org/doi/full/
10.1056/NEJMoa1504347
1) 研究の概要
- 対象:2型糖尿病の方435,369名と、比較対象の一般の方2,117,483名
- 期間:1998年~2011年
2) 重要な発見
1. 55歳未満で糖尿病と診断された方は、特に注意が必要
2. 血糖値が正常に近くても、やや死亡リスクは高い
3. 75歳以上の方で、次の3つの条件を満たす場合は、一般の方より長生きの傾向
- 血糖値(HbA1c)が7%未満
- 尿検査が正常
- 腎臓の働きが良好
## 4. 重要なポイントと今後の展望
1. 糖尿病の治療は大きく進歩
- 特に血管の病気による死亡が減少
- 適切な管理があれば、一般の方と変わらない寿命も可能
2. 年齢による違いが重要
- 若い方(55歳未満)は特に早期発見・治療が大切
- 高齢の方は個人に合わせた治療が効果的
3. 総合的な管理が必要
- 血糖値だけでなく
- 腎臓の働き
- 血圧
- がん検診
など、全身の管理が大切
## 5. まとめ
医学の進歩により、糖尿病の治療は日々進化しています。適切な管理と治療を続けることで、多くの方が健康な生活を送れるようになってきました。特に大切なポイントは:
1. 早期発見・早期治療
2. 継続的な血糖コントロール
3. 定期的な検査と合併症の予防
4. がん検診を含む総合的な健康管理
です。
現在、糖尿病と向き合って生活されている全ての患者さんとご家族の皆様に、心からエールを送らせていただきます。一日も早く治療法が確立され、より良い治療選択肢が増えることを願っています。そして、医療者と患者さんが協力しながら、一人一人の生活スタイルに合った治療を実現できることを心から願っています。
決して一人で抱え込まず、ご家族や医療スタッフと相談しながら、ご自身のペースで治療に取り組んでいただければと思います。より良い未来に向かって、医療は確実に進歩し続けています。
## 6. 参考文献
1. 中村 二郎, 山内 敏正, 中山 健夫, 他. (2024). アンケート調査による日本人糖尿病の死因 ―2011~2020 年の 10 年間,68,555 名での検討―. 会報告 Report of the Committee.
2. Tancredi, M., Rosengren, A., Svensson, A. M., et al. (2015). Excess Mortality among Persons with Type 2 Diabetes. New England Journal of Medicine, 373(18), 1720-1732. https://doi.org/10.1056/NEJMoa1504347