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ブルース・スプリングスティーン映画『孤独のハイウェイ

# ブルース・スプリングスティーン映画

『孤独のハイウェイ』

## “走るために生まれた”ロックスターが見せた、もうひとつの顔

 先日、映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』を観てきました。正直に言うと、観る前は「ファン向けの音楽映画かな」と思っていたのですが、予想はいい意味で裏切られました。これは音楽映画というより、ひとりの人間の物語でした。

### MTVで観た、あの時代

 80年代、テレビから流れてくるMTVに夢中になっていた頃、スプリングスティーンの姿は特別な輝きを放っていました。「Born in the U.S.A.」のミュージックビデオ、星条旗を背景に力強く歌う姿。あの時代のポップスやロックは、画面を通じて、音だけでなく「生き様」そのものを届けてくれていた気がします。

 マイケル・ジャクソン、マドンナ、プリンス――MTV全盛期のスターたちはみんな、音楽と映像で時代を切り拓いていました。その中でスプリングスティーンは、どこか違う空気を纏っていた。華やかさの中に、地に足のついた「リアルさ」があったんです。

### 静けさが語るもの

 映画を観ていて印象的だったのは、派手なライブシーンよりも、むしろ「何も起きていない」ように見える時間の豊かさでした。ジェレミー・アレン・ホワイト演じるスプリングスティーンが、ただ車を運転している場面、スタジオで黙って座っている場面。そんな「静寂」の中に、彼の迷いや不安、そして次の一歩を探している姿が浮かび上がってきます。

 説明的なセリフは少なく、視線やため息、沈黙が多くを語る。この映画は、成功の絶頂にいるはずのロックスターが抱えていた「空虚感」を、静かに、でも確かに伝えてくれました。

 MTVで観ていたあの頃は、画面の向こうの彼らがどんな思いで音楽を作っているのか、想像もしていませんでした。でもこの映画は、華やかなステージの裏側にある、音楽家としての孤独な闘いを見せてくれます。

### 弱さを隠さない強さ

 スプリングスティーンという人は、自分の弱さを隠しませんでした。うつ病との闘い、父親との確執、成功したあとに訪れた喪失感。そうした内面の苦しみを、彼は音楽を通じて、そして自伝やインタビューを通じて、率直に語ってきた人です。

 映画の中でも、彼は決してヒーローとしては描かれていません。悩み、立ち止まり、時に道を見失いそうになる、ひとりの人間として描かれています。でも、だからこそ、彼が再び音楽に向かっていく姿に、深く心を動かされました。

 80年代のあの華やかな時代、画面の向こうで輝いていたスターたちも、きっとそれぞれの「孤独のハイウェイ」を走っていたんだろうな、と思います。

### 待ち続ける日本公演

 実は、スプリングスティーンについて「反日ではないか」という憶測がネット上で語られることがあります。でも、調べてみると、そうした話には根拠がなく、むしろ誤解や噂が一人歩きしているだけのようです。彼の音楽が持つ普遍的なメッセージ――労働者への共感、弱者への眼差し、人間の尊厳――は、国境を越えて世界中の人々の心に届いています。

 日本のファンにとって残念なのは、近年、彼の来日公演がなかなか実現していないこと。体力的な問題もあるのかもしれませんが、多くのファンが今でも「いつか、もう一度日本で生のステージを」と待ち続けています。

 私自身も、MTVで観ていたあの頃から、いつか生で彼の音楽に触れたいと思い続けています。スクリーンの中ではなく、同じ空間で、あの声を、あのギターの音を感じたい。そんな日が来ることを、今も信じています。

### 誰にでもある「孤独のハイウェイ」

 この映画のタイトルにある「孤独のハイウェイ」は、スプリングスティーンだけのものではないと思います。誰もが人生のどこかで、ひとりで歩かなければならない道を持っている。成功していても、家族がいても、心の中には誰にも代われない「自分だけの道」がある。

 「弱さを見せることは恥ずかしいことじゃない。それも含めて、自分の人生なんだ」――そんなメッセージが、静かに伝わってくる映画でした。

### 音楽の力、人間の力

 映画を観終わって思ったのは、「音楽ってすごいな」ということ。そして「人間ってすごいな」ということでした。

 スプリングスティーンは、自分の痛みや孤独を音楽に変えて、それを世界中の人々と分かち合ってきた。彼の歌は、同じように苦しんでいる人たちへのエールになり、励ましになり、「生きていこう」という力になってきました。

 MTVで観ていたあの頃から数十年。当時夢中で観ていた音楽たちは、今も心の中で鳴り続けています。そしてこの映画は、あの時代の音楽が持っていた「人間の本質に触れる力」を、改めて思い出させてくれました。

 ひとりのファンとして、この映画を観られて本当に良かったです。音楽が好きな方も、そうでない方も、「人生」という旅路を歩んでいるすべての人に、何か響くものがある作品だと思います。

 そして、いつかまた日本で、彼の歌声を聴ける日が来ますように。

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### 参考文献・情報源

**映画公式・レビュー**

- 映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』公式サイト
- 「『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ネタバレあり解説」くらべったー
- 「音楽映画の海 Vol.9『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』」TURN
- 「【解説】映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』」Cinemore
- 「その裏にあるのは虚しさだった」Virtual Gorilla Plus
- 映画感想・レビュー各種(映画.com、Yahoo!ニュースほか)

**アーティスト解説・音楽評論**

- 「ブルース・スプリングスティーン【前編】『誠実』という言葉が一番似合う男」cocotame
- 「『ボーン・イン・ザ・USA』は、戦争が産んだ時代のギャップをこそ歌った曲」note
- 「ブルース・スプリングスティーンの名曲『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』」Rolling Stone Japan
- 西寺郷太「It’s a Pops」音楽コラム
- Yahoo!知恵袋ほか、スプリングスティーン関連Q&A​​​​​​​​​​​​​​​​

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