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AIが変える「働き方の常識」: 本当に価値ある能力とは何か?

# AIが変える「働き方の常識」:

本当に価値ある能力とは何か?

「努力は報われる」「専門知識があれば安泰」――私たちが長年信じてきたこの常識が、今、大きく揺らいでいます。

 最近、米国で「ブルーカラービリオネア」という興味深い現象が注目されています。AIの発展により、弁護士や会計士などのホワイトカラー職が影響を受ける一方で、熟練した技術を持つ肉体労働者が高い報酬を得るケースが増えているというのです。

 医療の現場で働く私たちにとっても、この変化は決して他人事ではありません。今回は、この現象から見えてくる「働き方の本質的な変化」について考えてみたいと思います。

## なぜ「知識労働」の価値が

変化しているのか

 これまで高収入の源泉だった「専門知識」や「情報処理能力」は、確かにAIによって一部が代替可能になりつつあります。

### AIが得意なこと・不得意なこと

**AIが得意:**

- 大量のデータ検索と分析
- パターン認識による予測
- 定型的な文書作成や計算

**AIが不得意:**

- 複雑な現実世界での物理的作業
- 文脈を読んだ柔軟な判断
- 人の感情に寄り添った対応
- 倫理的判断を伴う意思決定

 医療現場を思い浮かべてみてください。診断支援AIは有用ですが、患者さんの微妙な表情の変化に気づき、不安に寄り添い、その人に合わせた説明をすることは、やはり人間にしかできません。

## これからの時代に大切な3つの能力

### 1. **現場での実践力と応用力**

 理論や知識だけでなく、実際の現場で「手を動かし」「五感を使って」問題を解決する能力。医療でいえば、教科書通りにいかない患者さんの状態を、経験と勘を総動員して判断する力です。

### 2. **対人スキルと共感力**

 人の話を深く聴き、信頼関係を築き、チームをまとめる力。AIがどれだけ発達しても、「この先生に診てもらいたい」と思ってもらえる関係性は、人間同士でしか築けません。

### 3. **問いを立てる力と創造性**

 AIは与えられた問いには答えられますが、「何が本当の問題なのか」を見抜き、新しい視点で課題を設定する力は人間特有のものです。

## AIツール活用の「落とし穴」に注意

 ここで一つ、注意すべき点があります。

 AIツールを使って仕事が効率化されても、それが必ずしも「あなたの価値」の向上に直結するとは限りません。効率化されたタスクは、やがて「誰でもできる仕事」と見なされる可能性があるからです。

 大切なのは、**AIに任せられる部分は任せつつ、自分にしかできない価値を磨くこと**。これが、これからの時代を生き抜く鍵になります。

## 医療現場での実践

 当院でも、事務作業の一部にAIツールを活用し始めています。しかし、それは「患者さんと向き合う時間を増やす」ためです。

 AIが得意な作業はAIに任せ、私たち医療者は:

- 患者さんの小さな変化に気づく観察力
- 不安に寄り添う共感力
- その人に合わせた治療計画を提案する判断力

 これらの「人間にしかできないこと」に、より多くの時間とエネルギーを注げるようになりました。

## まとめ:変化の時代をチャンスに

 AIの発展は、確かに働き方を大きく変えています。しかし、それは必ずしも脅威ではありません。

 むしろ、私たちに「本当に人間がやるべきこと」「本当に価値あること」に集中する機会を与えてくれている、とも言えるのではないでしょうか。

**「手を動かすこと」と「心を通わせること」**――この人間らしい能力を大切にしながら、AIという道具を賢く使いこなす。これが、これからの時代を豊かに生きる鍵だと、私は考えています。

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**【参考文献】**

- 日本経済新聞「米国で『ブルーカラービリオネア』現象 AI発展で潤う肉体労働者」NIKKEI The STYLE 文化時評

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