## 赤ちゃんはなぜミルクを飲みながら 息ができるの?
## 赤ちゃんはなぜミルクを飲みながら
息ができるの?
大人との違いと歯科治療時の呼吸について
授乳中の赤ちゃんを見ていると、一生懸命ミルクを飲みながらもちゃんと息をしていますよね。でも私たち大人は、飲み物を飲む時に息を止めないとむせてしまいます。さらに、歯科治療を受ける際に「鼻が詰まっていると苦しい」と感じたことはありませんか?この違いには、赤ちゃんと大人の体のつくりが深く関わっています。
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### 赤ちゃんの体の特徴と
“飲みながら呼吸”の仕組み
赤ちゃんには、安全に授乳するための特別な体の構造があります。
**喉頭(のどの入口)の位置が高い**
- 赤ちゃんの喉頭(声帯がある部分)は、大人よりもずっと高い位置にあります
- そのため、鼻からの空気の通り道(気道)とミルクの通り道(食道)がしっかり分かれています
- この構造により、授乳中も鼻呼吸を続けられるのです[8][11][12][14]
**腹式呼吸が中心**
- 赤ちゃんはお腹を使った腹式呼吸が主体で、胸はあまり動きません
- 飲み込む動作と呼吸が干渉しにくい構造になっています[1][6][7][11]
**口とのどの構造**
- 赤ちゃんの口腔や咽頭は狭く、液体を吸うのに適した形状です
- 舌の動きも授乳に特化しています[14]
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### 大人との決定的な3つの違い
#### 1. **喉頭の位置が下がる**
成長とともに喉頭は首の下の方へ移動します。その結果:
- 空気の通り道(気道)と食べ物・飲み物の通り道(食道)の分岐点が近くなります
- 飲み込む時には気道をしっかり閉じる必要が生まれます
- そのため、大人は飲み込む瞬間、必ず呼吸を止めなければなりません[8][12]
#### 2. **呼吸様式の変化**
- 大人は胸式呼吸(胸郭を広げる呼吸)が主体になります
- 飲み込む動作に胸まわりの筋肉も関与するため、「一度息を止めて飲み込む」という動作が必須です[1][7][12]
#### 3. **嚥下反射の発達**
- 大人は飲み込む時、嚥下(えんげ)反射によって気道の入口(喉頭蓋)が自動的に閉じます
- これは誤嚥(食べ物が気管に入ること)を防ぐ重要な仕組みです
- 赤ちゃん期は喉頭が高いため、この反射に頼らなくても安全に授乳できる構造なのです[9][12]
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### 歯科治療と鼻呼吸の重要性
ここで、日常の診療でよく経験するお話をさせていただきます。
**治療前に鼻をかんでいただく理由**
歯科治療中、お口を開けた状態が続くと、どうしても口呼吸ができなくなります。そのため:
- **鼻呼吸だけに頼ることになります**
- 鼻が詰まっていると、治療中に息苦しさを感じてしまいます
- 特に奥歯の治療や型取りなど、お口の奥を触る処置では、鼻呼吸がより重要になります
**当院からのお願い**
- 治療前に鼻をかんでいただくと、治療中も楽に呼吸ができます
- 鼻炎や花粉症がある方は、事前にお薬を服用されることをお勧めします
- 治療中に息苦しさを感じたら、遠慮なく手を挙げてお知らせください
大人が口呼吸できない理由
前述のとおり、大人は喉頭の位置が低く、気道と食道の分岐が近いため:
- お口を大きく開けた状態では、唾液を飲み込む動作も制限されます
- 口呼吸しようとすると、唾液の誤嚥リスクが高まります
- そのため歯科治療中は、鼻呼吸が基本となるのです
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### ミルクと空気を一緒に飲み込む
(呑気)について
授乳時、赤ちゃんはミルクと一緒に空気も飲み込みます(呑気)。これは異常ではありません。
- お腹が張ることがありますが、げっぷとして空気を排出できます[13][15][16]
- 赤ちゃん特有の構造が、安全にたくさんのミルクを飲める仕組みになっているのです
- げっぷが出ないからといって過度に心配する必要はありません。お腹が張っていなければ問題ありません[13]
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### まとめ
**赤ちゃん期の特徴**
- 喉頭が高い位置にあり、鼻呼吸しながら授乳できる
- 腹式呼吸が主体で、飲み込みと呼吸が干渉しにくい
- 気道と食道がしっかり分離された構造
**大人になると**
- 喉頭が下がり、気道と食道の分岐点が近くなる
- 飲み込む時は必ず息を止める必要がある
- 胸式呼吸に変化し、嚥下機能も発達する
**歯科治療では**
- お口を開けた状態では鼻呼吸が基本
- 治療前に鼻をかんでおくと快適に治療を受けられます
- 鼻炎がある方は事前にご相談ください
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### 参考文献
1. Aprica「赤ちゃんは腹式呼吸」<https://www.aprica.jp/manabiya/c5/3-1/>
1. Kango-roo「小児の呼吸器系の生理学的・解剖学的特長は?」<https://www.kango-roo.com/learning/4600/>
1. 産科・婦人科医療のQ&A「新生児の呼吸窮迫症候群」<https://www.sanka-iryo.com/trouble/neonatal-respiratory-distress-respiratory-distress-syndrome/>
1. ベスタキッズ「新生児の呼吸が苦しそう…考えられる原因と受診の目安を解説」<https://www.besta-kids.jp/2025/10/01/3042/>
1. ピジョン株式会社「哺乳運動のメカニズムの解明と機能の再現を探求するピジョンの研究」<https://ai.pigeon.co.jp/report/report202104.html>
1. Medical Note「赤ちゃんのげっぷ:医師が考える原因と対処法」<https://medicalnote.jp/symptoms/%E8%B5%A4%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93%E3%81%AE%E3%81%92%E3%81%A3%E3%81%B7>
1. 中野こども病院「胃軸捻転 胃捻転 ミルクの嘔吐 吐乳 げっぷ(家族編)」<https://nakano-kodomo.or.jp/shounigeka/family/fam_gv01.htm>
1. ベネッセ教育情報サイト「赤ちゃんのげっぷはなぜ必要?上手なげっぷのさせかたは?」<https://benesse.jp/kosodate/201510/20151015-1.html>
1. 武蔵村山市歯科医師会「子どものお口(話す、咀嚼・嚥下、呼吸)」[https://www.mm-dc.com/子どものお口](https://www.mm-dc.com/%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%8A%E5%8F%A3)(話す、咀嚼・嚥下、呼吸)/
1. MSDマニュアル家庭版「乳幼児の呼気性喘鳴」[https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/23-小児の健康上の問題/乳児および小児における呼吸器疾患/乳幼児の呼気性喘鳴](https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/23-%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E4%B9%B3%E5%85%90%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E5%91%BC%E5%90%B8%E5%99%A8%E7%96%BE%E6%82%A3/%E4%B9%B3%E5%B9%BC%E5%85%90%E3%81%AE%E5%91%BC%E6%B0%97%E6%80%A7%E5%96%98%E9%B3%B4)
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