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NMNサプリメント vs 運動

# NMNサプリメント vs 運動  

## 健康寿命を延ばすために、

本当に効果があるのはどちらか?

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### はじめに
 私たちは「できるだけ長く、自分らしく元気に生活すること=健康寿命を延ばすこと」に強い関心があります。そこで注目されているのが、話題の **NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)サプリメント**と、古くから健康の王道とされてきた**運動**です。  

 最新の科学的エビデンスをもとに、この2つを比較してみましょう。  

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### 長寿サプリ、実際どうなの?


- 現時点で「ヒトの寿命を直接的に延ばす」と証明されたサプリメントは存在しません。  
- NMNやNAD⁺関連サプリは、マウス実験では有望な結果が得られていますが、人間での効果はまだ確立されていません。  
- 研究数は少なく、多くが参加者数100名以下、期間も最長6か月と短期です。  
- さらに深刻な問題として、市販NMN製品の67%は表示より含有量が不足しており、表示の0〜128.6%とばらつきが大きいことが報告されています。  

 つまり、「研究は進んでいるが、まだ信頼できる段階にはない」というのがNMNサプリの現状です。  

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### NMNに関する研究結果(ヒト)

- **閉経後女性25人に10週間投与**:インスリン感受性は改善したが、筋肉内NAD⁺は増えず(Yoshino 2021)  
- **健康男性への単回投与**:血液中のNAD⁺は増加し安全性も確認されたが、長期効果は不明(Irie 2020)  
- **中高年男性66人対象**:6分間歩行距離がわずかに改善した程度で、大きな効果は未確認(Liao 2021)  

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### 運動の確立された効果

 一方、運動については数十年、数十万人規模の追跡研究で **はっきりと寿命延長効果が確認**されています。  

- **死亡率30〜40%低下**  
- 心疾患リスク35%減  
- 糖尿病リスク58%減  
- 認知症リスク28%減  

 さらに、運動は老化の根本メカニズムにも作用します。  

- ミトコンドリア機能の回復(Robinson 2017)  
- テロメア維持(Werner 2019)  
- 慢性炎症の抑制(Gleeson 2011)  

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### どれくらい運動すればいいの?

 世界保健機関(WHO)や米国CDCの推奨は以下の通りです。  

- 有酸素運動:  
  中強度150〜300分/週(例:ウォーキング)または  
  高強度75〜150分/週(例:ランニング、HIIT)  

- 筋力トレーニング:  
  週2回以上、全身の大きな筋肉を鍛える運動  

 ウォーキングはコスト0円で、しかもすぐに効果を実感しやすい活動です。  

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### 健康を延ばすための優先順位


1. **まずやるべきこと**  
   禁煙、定期的な運動、バランスの良い食事、十分な睡眠、ストレス管理  

2. **次のステップ**  
   HIITなどの運動バリエーション、地中海食や和食ベースの食事、社会的なつながりづくり  

3. **補助的選択肢**  
   品質保証があり成分が確認されたサプリメント(NMNなど)の試用。ただし生活習慣が整っていることが前提。  

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### 費用対効果の比較


- **運動**:ウォーキングならコスト0円。寿命延長や病気予防の効果は科学的に確立。  
- **NMNサプリ**:高品質製品で月8,000〜15,000円(年間約10〜18万円)。効果は不確実で品質リスクもある。  

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### 結論


- サプリメント単体で寿命を延ばすことは証明されていません。  
- NMNは「研究途上の新しい可能性」として注目されていますが、まだ十分な科学的根拠はないのが現状です。  
- 一方で **運動は人間の寿命と健康寿命を確実に延ばす**ことが証明済みです。  

 つまり、最も価値のある健康投資は「サプリ」ではなく「運動習慣」です。NMNはあくまで補助的な手段として位置づけるのが現実的といえるでしょう。  

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### 参考文献


1. Yoshino M, et al. (2021). *Science*. 372(6547), 1224-1229. PMID: 33888596  
2. Irie J, et al. (2020). *Endocr J*. 67(2), 153-160. PMID: 31685720  
3. Liao B, et al. (2021). *J Int Soc Sports Nutr*. 18(1), 54. PMID: 34238308  
4. Sandalova E, et al. (2024). *GeroScience*. 46, 1653-1667. PMID: 38200240  
5. Robinson MM, et al. (2017). *Cell Metab*. 25(3), 581-592. PMID: 28273480  
6. Werner CM, et al. (2019). *Eur Heart J*. 40(1), 34-46. PMID: 30496493  
7. Gleeson M, et al. (2011). *Nat Rev Immunol*. 11(9), 607-615. PMID: 21818123  
8. Lee IM, et al. (2012). *Lancet*. 380(9838), 219-229. PMID: 22818936  
9. WHO (2020). *Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour*. Geneva: WHO  
10. Li Y, et al. (2018). *Circulation*. 138(4), 345-355. PMID: 29712712  
11. Verdin E. (2015). *Science*. 350(6265), 1208-1213. PMID: 26785480  
12. Gomes AP, et al. (2013). *Cell*. 155(7), 1624-1638. PMID: 24360282  
13. Barzilai N, et al. (2018). *Nat Med*. 24, 1649–1659. Longevity interventions in humans  
14. Seals DR, et al. (2016). *J Physiol*. 594(8), 2281–2295. Exercise and vascular aging  

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※本記事は2024年12月時点の科学的エビデンスに基づいて作成されたものであり、個別の医療的判断を代替するものではありません。健康に関する具体的な選択は、必ず主治医とご相談ください。  

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