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認知症高齢者と経管栄養:本当に必要?

# 認知症高齢者と経管栄養:

本当に必要?わかりやすく解説します

 みなさんこんにちは!今回は、認知症のおじいちゃんやおばあちゃんが食べられなくなったとき、どうすればいいのか、特に「経管栄養」という方法について、最新の研究からわかったことをお伝えします。

## 経管栄養って何?

 まず「経管栄養」とは、口から食べられない人に、チューブを使って栄養を送り込む方法です。

具体的には:
- **鼻からチューブを入れる方法**(経鼻胃管)
- **お腹に小さな穴をあけてチューブを入れる方法**(胃瘻[いろう])

  これらを使って、液体状の食事を直接胃に届けます。

 認知症が進むと「食べ方を忘れてしまう」「飲み込みが難しくなる」などの問題が起きて、十分な栄養が取れなくなることがあります。そんなとき、この方法が検討されるのです。

## 最新の研究で何がわかった?

 2025年にJAMA Network Openという医学雑誌に発表された研究では、14万人以上の認知症高齢者について調べました。結果はとても興味深いものでした。

### 研究結果のポイント

1. **経管栄養を受けた人はわずか0.9%**
   - 143,331人中、たった1,312人だけでした

2. **経管栄養を受けた人は:**
   - 入院期間が長かった(65.6日 vs 14.8日)
   - 集中治療室に入る確率が高かった(42.5% vs 10.2%)
   - 入院中に亡くなる確率も高かった(22.4% vs 10.3%)

3. **退院後1年以内の死亡率:**
   - 経管栄養あり:50.0%
   - 経管栄養なし:28.4%

### 経管栄養を受ける可能性が高くなる要因

- 飲み込みが難しい状態(嚥下障害)がある
- 日常生活の自立度が低い

### 経管栄養を受ける可能性が低くなる要因

- 女性である
- 高齢である(5歳上がるごとに25%可能性が下がる)
- 蘇生拒否の指示がある
- 地方に住んでいる

## 世界中の研究結果からわかること

 世界中の研究結果をまとめた「コクランレビュー」(医学界で最も信頼性の高い研究方法の一つ)によると:

- 経管栄養をしても、**寿命は延びない**可能性が高い
- 逆に、**床ずれ(褥瘡)のリスクが少し増える**
- 生活の質(QOL)への影響はよくわかっていない

この分析には約5万人のデータが使われ、そのうち約6千人が経管栄養を受けていました。

## 日本の研究では?

 日本での研究(2020年)では、嚥下障害のある高齢者を対象に、胃瘻と静脈から栄養を送る方法を比較しています:

- 胃瘻の方が生存期間は長かった(317日 vs 195日)
- 胃瘻は肺炎のリスクが高く、静脈栄養は敗血症のリスクが高かった

 ただし、この研究は認知症患者だけを対象にしたものではないので、そのまま当てはめることはできません。

## 医学界の現在の見解

 過去20年の研究をまとめると、認知症が進行した患者さんに経管栄養を行うと:

- 生存率は改善しない
- 誤嚥(食べ物が気管に入ること)のリスクは減らない
- 栄養状態の改善も限定的
- 患者さんの不快感が増えたり、チューブを抜かないように体を拘束する必要が生じることもある

 こうした理由から、アメリカ老年医学会など多くの専門家グループは、進行した認知症患者への経管栄養を推奨していません。

## 別の選択肢:

「快適な経口摂取」という考え方

 最近注目されているのが「Comfort Feeding Only(快適な経口摂取のみ)」という考え方です。これは:

- 患者さんのペースに合わせた丁寧な食事介助
- 食べやすい姿勢の工夫
- とろみをつけるなど、飲み込みやすい食事の工夫
- 高カロリーのサプリメントの活用

このアプローチなら、チューブを使わずに患者さんの快適さを保ちながら、可能な範囲で栄養をサポートできます。

## まとめ:一番大切なのは?

 この研究からわかることは、認知症患者さんへの経管栄養の使用は限られており、医学的な効果も限定的だということです。

 大切なのは、単に「栄養を送り込む」という医学的な観点だけでなく、患者さんの生活の質や希望、家族の思いなども含めて総合的に考えることです。

 医学には「腸が機能しているなら、それを使いましょう」という原則がありますが、認知症の進行期では、患者さんの負担が少ない方法を選ぶことが重要かもしれません。

医療者、患者さん、そして家族が協力して、その人にとって最も適した栄養サポート方法を見つけることが、認知症ケアの重要な側面と言えるでしょう。

## 参考文献

1. Hartford AM, et al. Use of Feeding Tubes Among Hospitalized Older Adults With Dementia. JAMA Netw Open. 2025.
2. Sampson EL, et al. 重度の認知症の人への経腸経管栄養. Cochrane Database Syst Rev. 2021.
3. 真崎茂法, 河本俊. 嚥下障害を有する高齢者における胃瘻栄養と中心静脈栄養の長期アウトカムの比較:傾向スコアマッチングを用いた解析. JSPEN. 2020.
4. Palecek EJ, et al. Comfort Feeding Only: A Proposal to Bring Clarity to Decision-Making Regarding Difficulty with Eating for Persons with Advanced Dementia. J Am Geriatr Soc. 2010.
5. American Geriatrics Society Ethics Committee. American Geriatrics Society feeding tubes in advanced dementia position statement. J Am Geriatr Soc. 2014.
6. 日本老年医学会. 高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン. 2012.
7. 経管栄養(経腸栄養)とは|種類・手順・看護のポイント. ナース専科. 2019.
8. 日本神経学会. 「認知症疾患診療ガイドライン」作成委員会. 認知症疾患診療ガイドライン2017. 医学書院.​​​​​​​​​​​​​​​​

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