わかな歯科

お知らせ

よく食べて毎日排便することは健康の第一歩

# よく食べて毎日排便することは

健康の第一歩

## はじめに

 みなさんこんにちは。毎日の健康について考えるとき、「バランスの良い食事」や「適度な運動」はよく耳にすると思います。でも、「毎日きちんと排便すること」の大切さについて、深く考えたことはありますか?

 実は、私たちの排便習慣は単なる体の不要物を出す作業ではなく、腎臓や肝臓といった大切な臓器の健康と密接に関わっているのです。今回は、最新の科学研究をもとに、排便習慣が内臓の健康にどのように影響するのか、そして健康的な排便習慣を維持するためのヒントについてお話しします。

## 排便の理想的な頻度:

「ゴールディロックスゾーン」

 「1日に何回排便するのが健康的?」と聞かれたら、何と答えますか?

 最新の研究によると、健康な内臓機能を維持するための最も適切な排便頻度は**1日に1〜2回**だということがわかっています。この頻度は「ゴールディロックスゾーン」(適温帯)と呼ばれています[^1]。

 これは「おとぎ話の『ゴルディロックスと三匹のくま』で、彼女が「熱すぎず、冷たすぎず、ちょうどいい」と感じたポリッジ(お粥)にちなんで名付けられた言葉です。つまり、多すぎず少なすぎず、ちょうどいい頻度という意味です。

 1,400人以上の健康な成人を対象にした研究では、排便頻度によって次の4つのグループに分けて調査しました:
- 「便秘(週2回以下)」
- 「低正常(週3〜6回)」
- 「高正常(1日1〜3回)」
- 「下痢(1日4回以上)」

この中で「高正常」グループ、特に1日1〜2回の排便がある人々において、腸内環境が最も健全であることが示されました[^1]。この頻度では、腸内の善玉菌が活発に活動し、私たちの健康に役立つ物質を作り出しています。

## 便秘と腎臓の意外な関係

便秘(週に2回以下の排便)は多くの人が経験する一般的な症状ですが、実は腎臓の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

 どうしてでしょうか?便秘の状態では、便が腸内に長く留まります。すると、腸内細菌の働きが変化します。通常、腸内細菌は私たちが食べた食物繊維を発酵させて、腸の健康に良い「短鎖脂肪酸」という物質を作ります。しかし、便が長時間腸内に留まると、腸内細菌は使える食物繊維を使い果たし、代わりにタンパク質を分解し始めます[^1]。

 このタンパク質分解の過程で、**インドキシル硫酸**(3-IS)などの毒素が生成されます。研究によると、便秘の人はこの毒素の血中濃度が高いことがわかっています。インドキシル硫酸は腸内の悪玉菌がタンパク質から作るインドールが体内で変化したもので、腎臓に対して特に有害です[^2]。

 つまり便秘は単に「出にくい」という不快感だけでなく、腎臓の機能低下や慢性腎臓病のリスクを高める可能性があるのです。これは健康な人でも同じことが言えます[^6]。

## 下痢と肝臓機能の関係

 一方、頻繁な下痢(1日に4回以上の排便)も健康上の問題を引き起こす可能性があります。研究チームは、下痢の状態にある人々において、炎症と肝機能障害を示す指標を発見しました[^1][^6]。

 下痢の状態では、体は過剰な胆汁酸を排出します。通常、肝臓はこの胆汁酸を再利用して、食事から摂取した脂肪を溶かして吸収するために使います[^5]。しかし、下痢によってこの再利用のプロセスが妨げられ、その結果として肝機能に影響が出ると考えられています[^6]。

 研究では、「下痢の頻度が多い人は、炎症のサインと肝機能低下のサインの上昇が見られた」と報告されています[^1]。また、下痢の状態では腸内の通過時間が短すぎるため、栄養素の吸収が不十分になり、食物からのエネルギーや必要な栄養素を体が十分に取り込めなくなる可能性もあります[^5]。

## 腸内細菌と私たちの健康

 私たちの腸には約100兆個もの細菌が住んでいて、これを「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」や「腸内フローラ」と呼びます。この腸内細菌は、単に食べ物の消化を助けるだけでなく、私たちの健康全体に大きな影響を与えています。

 健康な人と慢性腎臓病の患者さんでは、腸内細菌の種類やバランスが違うことがわかっています[^2]。腎臓病の患者さんでは、乳酸菌やビフィズス菌などの「善玉菌」が減少し、「悪玉菌」が増加している傾向があります。

 善玉菌が減ると、腸内で有害物質が作られやすくなります。これらの物質(インドキシル硫酸など)が血液中に蓄積すると、腎臓に負担をかけます[^7]。

 面白いことに、腸内環境を改善することで腎臓病の進行を抑える可能性があることもわかってきました。例えば、ビフィズス菌の摂取によって腸内環境が改善し、有害物質が減少したという報告もあります[^2]。

 腸内細菌が作り出す「短鎖脂肪酸」(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)は、単にうんちの臭いの元になるだけでなく、私たちの免疫システムを強化する働きもあります[^3][^8]。

## 健康的な排便習慣を維持するためのヒント

健康的な排便習慣を維持し、内臓の健康を守るために、日常生活で実践できるいくつかの方法をご紹介します。

### 1. 食物繊維をたっぷり摂ろう

 食物繊維は腸内の善玉菌のえさになり、健康的な腸内環境を維持するために不可欠です。野菜、果物、全粒穀物、豆類などの食物繊維が豊富な食品を積極的に食べましょう。

 食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があり、両方をバランスよく摂ることが理想的です:
- **水溶性食物繊維**:腸内細菌のえさになり短鎖脂肪酸を生成します(例:バナナ、りんご、オートミール)
- **不溶性食物繊維**:便のかさを増して腸の動きを促進します(例:ブロッコリー、玄米、豆類)[^8]

### 2. 十分な水分を摂ろう

 水分は便の硬さを適切に保ち、消化管を通過しやすくするために重要です。1日あたり約1.5〜2リットルの水分摂取を目指しましょう。特に朝起きてすぐにコップ一杯の水を飲むと、腸の動きを活性化させる効果が期待できます。

 意外かもしれませんが、私たちの消化管からは1日に約6リットルもの消化液(胃液や胆汁、膵液など)が分泌されています。これに食べ物の水分や唾液を加えると、合計9リットルほどになります[^5]。この大量の水分の大部分は腸で再吸収されるため、適切な水分摂取は消化器系全体の機能を支えるために不可欠です。

### 3. 定期的に体を動かそう

 適度な運動は腸の動き(ぜん動運動)を促進し、便秘を予防するのに役立ちます。ウォーキングやストレッチなどの軽い運動でも効果があります。例えば、毎朝20分の散歩を習慣にすることで長年の便秘が解消されたケースも報告されています。

 運動は血流を改善し、内臓を含む全身の健康を促進します。さらに、運動によってストレスが軽減されることも、腸の健康にとって重要です。研究では、最適な排便頻度(1日1〜2回)を持つ人々は、定期的に運動を行う傾向が強いことが示されています[^6]。

### 4. ストレスをコントロールしよう

 腸と脳は「腸脳相関」と呼ばれる双方向の通信システムで密接につながっており、ストレスが腸の機能に大きな影響を与えることがわかっています。過度のストレスは腸内細菌のバランスを乱し、腸の運動を変化させ、便秘や下痢などの症状を引き起こす可能性があります[^6]。

 瞑想、深呼吸、ヨガなど、ストレスを軽減するためのリラックス法を取り入れてみましょう。

### 5. 発酵食品を食べよう

 ヨーグルト、ケフィア、キムチ、味噌などの発酵食品は、プロバイオティクス(善玉菌)を豊富に含んでおり、腸内の善玉菌を増やすのに役立ちます。これらの食品を毎日の食事に取り入れることで、腸内環境のバランスを整え、腸の健康を促進することができます。

## 内臓を守るための腸のケア

 最新の研究から、腸は単なる消化吸収の場ではなく、体内の毒素排泄を担う重要な器官であることがわかってきました。腸は「第三の尿毒症物質排泄経路」とも呼ばれており、腎臓や血液透析と並ぶ重要な排泄路として認識されています[^7]。

 腸内環境が悪化すると、腸内で作られる毒素が血中に吸収され、腎臓や肝臓に負担をかけることになります。一方、腸内環境を改善することで、これらの毒素の生成を抑制し、内臓の機能を保護することができます。

 例えば、便秘が続いていた人が食生活を見直し、水分摂取を意識したところ、腎機能の数値が改善したケースや、発酵食品を取り入れることで肝臓の状態が良好になったケースが報告されています。

ビフィズス菌の摂取により血中の有害物質が減少することも報告されています[^2]。これは、腸内環境の改善が有害物質の減少に直接つながることを示しています。

 大切なのは、臓器間のつながりを理解し、腸の健康を維持することが全身の健康につながるという認識を持つことです。腸内環境を整えることは、消化器系の問題だけでなく、腎臓病や肝臓疾患などの予防にも貢献する可能性があります[^1][^6][^7]。

## まとめ:

健康な排便習慣が健康な体をつくる

 排便習慣と内臓機能の関連性についての研究結果をまとめると、1日1〜2回の排便頻度を維持することが、腸内環境のバランスを保ち、内臓の健康を支えるために最も適していると言えます[^1][^6]。

 便秘や下痢は単なる一時的な症状ではなく、長期的な健康リスクとなる可能性があることを認識しましょう。便秘による腎機能の低下や、下痢による肝機能の障害は、研究によって明らかになっています[^1][^6]。

 日常生活の中で、食物繊維の摂取、適切な水分補給、定期的な運動、ストレス管理などに意識的に取り組むことで、健康的な排便習慣を維持し、内臓の健康を守ることができます[^6]。これらは特別なことではなく、誰もが日々の生活の中に取り入れられる健康習慣です。

 最新の研究は、「しっかり食べて排泄することで内臓は正常に維持できる」という考え方に科学的根拠を与えています。私たちの体は複雑につながったシステムであり、一つの部分の健康が他の部分の健康に影響を与えます。腸の健康を大切にすることは、全身の健康を守るための基本的かつ重要なステップなのです。

日々の便の状態をチェックし、規則正しい排便習慣を心がけることが、内臓の健康維持につながります。「便秘くらい大したことない」「下痢はすぐ治るだろう」と軽視せず、継続的な異常がある場合は医療専門家に相談することをお勧めします。健康な腸、健康な内臓、そして健康な身体のために、今日から排便習慣を見直してみませんか。

## 参考文献

[^1]: 便秘は腎臓、下痢は肝臓にダメージ与える可能性 - マイナビDoctor, https://doctor.mynavi.jp/mednews/1min-worldnews/news_list/p1990.html
[^2]: ビフィズス菌製剤による慢性腎不全の進行抑制効果の検討, https://jsn.or.jp/journal/document/45_8/759-764.pdf
[^3]: 腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が樹状細胞の突起伸長を誘導する - 岡山大学, https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r5/press20230907-1.pdf
[^4]: 本日の症例は 29 歳男性、慢性下痢、嘔吐、肝機能障害の患者です。, https://www.city.sakaide.lg.jp/uploaded/life/20645_52023_misc.pdf
[^5]: 便の形成・体内から腸管への水分の移動|消化・吸収のメカニズム, https://www.carenavi.jp/ja/jissen/ben_care/shouka/shouka_01.html
[^6]: 排便回数は健康状態に関連 - ケアネット, https://www.carenet.com/news/general/hdn/58992
[^7]: 便秘症の治療薬に慢性腎臓病の進行を抑制する効果 - MONOist, https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/1501/13/news033.html
[^8]: 腸内細菌からのメッセージ - J-Stage, https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/32/1/32_1_23/_pdf

元のページへもどる