登録歯科医研修会のおまけ 〜インクレチンについて〜
「糖尿病治療の新しい味方:
インクレチンってなに?」
前回の研修会の重要なおまけをもう一つ紹介します。
皆さんは「インクレチン」というホルモンをご存知でしょうか?
今回は、この体にやさしい血糖値コントロールの仕組みについてお話しします。
■インクレチンの基本のキ
インクレチンは、私たちが食事をしたときに小腸から出される特別なホルモンです。
主に2種類あります:
・GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)
・GIP(胃抑制ペプチド)
■体の中でのインクレチンの働き
食事をすると、インクレチンは次のような素晴らしい働きをしてくれます:
1. 血糖値を優しくコントロール
血糖値が上がると、インクレチンは膵臓に指令を出してインスリンの分泌を促します。これにより、血液中の糖が体の細胞に取り込まれ、自然と血糖値が下がっていきます。
2. 食後の急激な血糖値上昇を防止
胃から小腸への食べ物の移動スピードを調整し、血糖値が急に上がることを防いでくれます。
3. 適度な満腹感をサポート
脳に働きかけて程よい満腹感を作り出し、食べ過ぎを防ぎます。
4. 健康的な体重管理をお手伝い
上記の働きが組み合わさって、自然な形での体重管理に貢献します。
■インクレチンを活用した最新の治療法
現在、インクレチンの働きを利用した薬には主に2種類あります:
・DPP-4阻害薬:体内で作られるインクレチンの効果を長く持続させる薬
・GLP-1受容体作動薬:インクレチンの働きを強める薬
これらは特に2型糖尿病の方に効果的で、心臓や腎臓の健康維持にも良い影響があるとわかってきています。
■歯科医院での活用
私たち歯科医師も、糖尿病の患者さんと接する機会が多くあります。お口の健康は全身の健康と深く関わっているため、このようなホルモンの働きを理解することで、より良い歯科治療とアドバイスにつなげることができます。
参考文献:
1. 酒井麻有ほか, 「DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬」, 総合診療 33巻3号, 2023年.
2. 宮川潤一郎ほか, 「インクレチンの糖尿病治療への応用」, 日本内科学会雑誌, 第97巻第4号, 2008年.
3. 日本糖尿病学会, 「インクレチン関連薬の安全な使用に関するRecommendation 第2版」, 2024年.
4. 南九州大学, 「食事組成が血漿インクレチン値に及ぼす影響」, 南九州大学研究報告書, 2022年.