わかな歯科

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入れ歯に慣れること 〜part3〜

# 高齢者の入れ歯適応 - 超高齢社会に向けた長期的視点からの考察

## はじめに

 昔、ある日の診療で印象深い出来事がありました。70代の上品な女性が、なんと40個もの入れ歯をビニール袋に入れて来院されたのです。それらは、著名な先生方が丁寧に作られた入れ歯でした。しかし、患者さんが実際に使用していたのは、地域の歯科医師が作った比較的シンプルな「ヒモ義歯」。そして「これと同じような入れ歯を作ってほしい」とのご要望でした。この経験から、入れ歯への適応について深く考えさせられました。

## 入れ歯の特徴と利点

### 体の変化に対応できる装置
 私たちの体は年齢とともに変化します。入れ歯の優れている点は、この体の変化に合わせて調整できることです。つまり、入れ歯は単なる人工の歯ではなく、患者さんの状態に応じて進化する「生きた装置」なのです。

### 取り外しができる利点
 入れ歯の最大の特徴は取り外しが可能なことです。これにより:
- 口腔内の状態を目視確認できる
- 入れ歯自体の清掃が容易
- 介護時の口腔ケアがしやすい
- 誤嚥性肺炎の予防にも効果的

## インプラントから入れ歯への移行について

### 長期的な視点の重要性
 インプラント治療は素晴らしい選択肢ですが、生涯にわたってインプラントだけで過ごせるとは限りません。将来的に入れ歯への移行が必要になることもあります。

### 早めの準備が大切
 高齢になってからの入れ歯への適応は困難です。80代の患者さんの例では、長年インプラントを使用された後に病気により、入れ歯への移行を余儀なくされましたが、うまく適応できませんでした。これは縄跳びと同じで、仮に昔縄跳びが得意だったとしても、使い方を忘れてしまったり、高齢なって始めて跳ぼうとおもっても習得は難しいのと一緒です。

 入れ歯は、口に入れれば食べられるわけではなく、オーラルリハビリテーションを行う意思とそれを行うタイミングがとても重要であることがわかりました。

## これからの歯科治療に求められること
1. 10年、20年先を見据えた治療計画
2. 定期的なメンテナンスと早めの対策
3. 介護時期を想定した口腔環境づくり

## おわりに
 ある日、恩師から聞いた言葉を思い出します。「同じように作った入れ歯なのに、ある患者さんは使えず、別の患者さんは喜んで使う。なぜだろう?」この問いの中に、入れ歯適応の本質が隠されていたのかもしれません。

入れ歯への適応は、早めの準備と継続的なケアが重要です。定期的な歯科検診で、皆様の生涯の口腔健康をサポートさせていただければと思います。​​​​​​​​​​​​​​​​


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