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がん転移を防ぐ新たな希望:Adhibin(アドヒビン)の可能性

がん転移を防ぐ新たな希望:Adhibin(アドヒビン)の可能性

 がん治療において、転移の制御は最も重要な課題の一つです。近年、がん細胞の転移を特異的に抑制する新しい合成物質「Adhibin(アドヒビン)」が開発され、大きな注目を集めています。

 Adhibinは、がん細胞の移動や接着を選択的に阻害する画期的な物質です。特筆すべき点は、がん細胞を特異的に「麻痺」させる作用を持ちながら、健康な細胞への影響を最小限に抑えられることです。従来の抗がん剤が細胞増殖を標的としていたのに対し、Adhibinは転移プロセスそのものを標的とする新しいアプローチを採用しています。

 作用メカニズムとしては、RhoGAP class-IX myosin(ミオシン9)というタンパク質の機能を阻害することで、がん細胞の移動能を抑制します。また、細胞膜突起の形成を阻害して細胞接着を抑制し、収縮環の形成にも影響を与えることで細胞分裂を遅延させます。

 試験管内実験やオルガノイドを用いた研究では、Adhibinががん細胞の移動を効果的に抑制することが確認されています。特に、腺がん、メラノーマ、頭頸部がんなどの転移性がんに対する効果が期待されています。さらに、3次元スフェロイド培養モデルでも抗転移作用が確認され、毒性が低く安全性が高いことも報告されています。

 歯科領域においても、口腔がんの転移抑制や顎骨転移の予防、さらには歯周病関連の炎症抑制などへの応用が期待されています。

 現在、Adhibinは臨床応用に向けた研究段階にありますが、この画期的な物質の登場は、がん治療における新たな選択肢として大きな期待を集めています。今後の臨床試験を通じて、その有効性と安全性が確立されることが望まれます。

参考文献:
1. Gaul, C., et al. (2023). Adhibin inhibits cancer cell motility and adhesion. Nature Communications, 14(1), 7012.

2. Sanz-Moreno, V., & Marshall, C. J. (2010). The plasticity of cytoskeletal dynamics underlying neoplastic cell migration. Current Opinion in Cell Biology, 22(5), 690-696.

3. Steeg, P. S. (2016). Targeting metastasis. Nature Reviews Cancer, 16(4), 201-218.

4. Gandalovičová, A., et al. (2017). Migrastatics—Anti-metastatic and Anti-invasion Drugs: Promises and Challenges. Trends in Cancer, 3(6), 391-406.​​​​​​​​​​​​​​​​

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