わかな歯科

お知らせ

入れ歯に慣れる人、慣れない人 〜論文から Part.1〜

 訪問診療をしていると、ご本人の希望だけでなく家族の希望で、入れ歯の作成を依頼されることがあります。特に、はじめて入れ歯を使用する場合は、かなり慎重に診査、診断をしますが、それでも、全く使わなかったり、どっかにしまって紛失してしまったりして、入れ歯を使用しないで捨ててしまうことも多々あります。口の中に入れればすぐに使いこなせるというわけはありません。

 入れ歯を使いこなせる人とそうでない人にどんな違いがあるのかという論文を、まずは紹介します。

「新しい義歯への適応に関する研究」の

やさしい解説


- 1995年の研究より -

【なぜこの研究が行われたのか】
 高齢者の方が新しい義歯に慣れるのは、思った以上に大変な場合があります。この研究では、「口の動かし方の上手さ」と「手先の器用さ」が、新しい義歯に慣れることにどのように関係しているのかを調べました。

【研究の方法】
対象:
- 長年義歯を使っている60名の患者さん(平均年齢72.3歳)

調べた内容:
1. 口の動かし方の上手さ
2. 手先の器用さ
3. 新しい義歯への慣れ具合

評価のタイミング:
- 新しい義歯を使い始めてから2~3週間後

【わかったこと】
1. 口の動かし方が上手な人ほど、新しい義歯にスムーズに慣れることがわかりました
2. 手先の器用さよりも、口の動かし方の方が重要でした
3. 年齢による影響:
   - 手先の器用さは年齢とともに低下しやすい
   - 口の動かし方の上手さは、年をとってもあまり衰えにくい

【治療への活かし方】
1. 治療前の確認:
   - 治療を始める前に、口の動かし方をチェックすることで、どのくらい慣れやすいかを予測できます
   - その結果に基づいて、個人に合った治療計画を立てられます

2. 高齢の方への配慮:
   - 年齢に関係なく保たれやすい「口の動かし方」に注目して治療を進めます
   - 必要に応じて、口の体操などのトレーニングを取り入れます

3. 段階的なサポート:
   - 最初の1週間は特に丁寧なフォロー
   - 3ヶ月、6ヶ月、1年と定期的な確認
   - 必要に応じて調整や指導を行います

4. 個人に合わせた対応:
   - 人によって慣れるスピードは違います
   - 一人一人の生活習慣や困りごとに合わせてアドバイスします

【まとめ】
この研究で、新しい義歯に慣れるには「口の動かし方の上手さ」が特に大切だということがわかりました。この発見により、特に高齢の方の義歯治療がより良いものになることが期待されます。

【患者さんへのアドバイス】
- 新しい義歯に慣れるまでには個人差があります
- 困ったことがあれば、早めに歯科医院に相談しましょう
- 定期的なチェックを受けることで、長く快適に使うことができます

この研究は、その後の義歯治療の発展に大きく貢献し、現在の治療方法の基礎となっています。​​​​​​​​​​​​​​​​

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