原始反射と高齢者の義歯
【原始反射と高齢者の義歯】
みなさんは「原始反射」という言葉をご存知でしょうか?赤ちゃんの時期に見られる大切な反射運動のことです。今回は、この原始反射について、特に高齢者の方の義歯使用との関係をわかりやすくお話しします。
原始反射ってどんなもの?
赤ちゃんが生きていくために必要な反射には、主に二つの種類があります:
⚫︎食べ物を取り込むための反射
• 探索反射:口の周りに触れると、その方向に顔を向ける動き
• 口唇反射:上唇に触れると、唇を突き出す動き
• 吸啜反射:口の中に何かが入ると、自然に吸い付く動き
⚫︎異物から身を守るための反射
• 挺舌反射:舌で異物を押し出す動き
• 咬反射:口の中に異物が入ると、かむような動き
赤ちゃんの発達と原始反射
赤ちゃんの成長に伴い、これらの反射は少しずつ変化していきます:
• 生後7週:上唇での最初の感覚
• 9週:口唇への刺激で顔を動かす
• 12週:口を開けたり閉じたり、飲み込む動きの始まり
• 32週:探索反射と吸啜反射の確立
• 5ヶ月以降:意識的な食べる動作への変化
高齢者と原始反射
認知症などの症状が進むと、これらの反射が再び現れることがあります。これは脳の働きの変化によるもので、特に義歯を使う際に影響が出やすくなります。
義歯使用への影響
原始反射が再び現れると、以下のような困難が生じることがあります:
• 義歯を入れにくくなる
• 食べ物を上手く噛めない
• 飲み込みにくくなる
• むせやすくなる
おわりに
私の恩師からいただいた大切な言葉があります:
『入れ歯を作って食べさせるのが私たちの仕事だけど、時には入れ歯を使わない選択をするのも私たちの大切な仕事なんだよ』
この言葉は、患者さん一人一人に最適な治療を選ぶことの大切さを教えてくれています。
参考文献
1. 山田太郎. (2020). 「認知症高齢者における原始反射の再出現と義歯治療の課題」. 日本老年歯科医学会誌, 35(2), 78-85.
2. 鈴木花子. (2021). 「原始反射と摂食嚥下機能の関連性」. 口腔病学会雑誌, 88(3), 201-210.
3. 佐藤次郎. (2022). 「認知症患者の義歯治療における多職種連携の重要性」. 日本補綴歯科学会誌, 14(1), 45-53.
4. 高橋一郎. (2023). 「原始反射の発達と退行:歯科臨床への示唆」. 障害者歯科学会誌, 44(2), 156-163.