口の動きと消化関係 〜ミミズから学ぶ健康のヒント〜
消化管は、口から始まりお尻まで続く一本の長い管のようなものです。口はその最初の入り口であり、食べ物が入ってくる場所です。この管の中で食べ物が消化され、体に必要な栄養が吸収されます。
【ミミズと消化の仕組み】
ミミズが頭の方から順番に伸び縮みして前に進むように、私たちの消化管も同じように動いています。この動きを「蠕動運動」と言います。口を動かすことで、この蠕動運動が始まり、食べ物が消化管を通っていきます。
【口を動かすことの重要性】
口を動かすことは、消化の始まりを意味します。食べ物をしっかり噛むことで、唾液がたくさん出てきます。唾液には消化酵素が含まれており、食べ物を小さく分解し始めます。この最初の段階がとても重要で、後の消化プロセスをスムーズに進めるための準備をします。
1. 消化を助ける
口の中で食べ物を細かく噛むことで、胃や腸が食べ物を処理しやすくなります。しっかり噛むことで、食べ物が唾液とよく混ざり、消化がスタートします。このように、口の動きは消化管全体の働きを助けます。
2. 唾液の分泌
口を動かすことで、唾液がたくさん出ます。唾液は食べ物を柔らかくし、飲み込みやすくするだけでなく、消化酵素が含まれているため、食べ物の分解を始めます。また、唾液は口の中を清潔に保ち、バイ菌を減らす働きもあります。
3. 蠕動運動の活性化
口を動かすことで、消化管全体の動きが活発になります。食べ物を飲み込むと、胃や腸が動き始め、食べ物を体の中で移動させる蠕動運動が促進されます。これにより、消化プロセスがスムーズに進み、栄養の吸収が効率的になります。
面白い文献があったので紹介します。
『Nonnutritive sucking during gavage feeding enhances growth and maturation in premature infants』
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6401358/https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6401358/
体重が1500以下の低出生体重時30名の研究です。母乳を吸えないので全員、鼻からの経管栄養をしています。対照群と実験群にわけ、実験群にはおしゃぶりを与えました。両郡の摂取カロリーに差はありませんでした。
図1 おしゃぶりの有無とカロリー摂取
図2 おしゃぶりの有無と体重増加
しかし、実験群では顕著に体重が増加しました。
図3 おしゃぶりの有無と腸管通過時間
図4 経口摂取と退院に関するおしゃぶりの影響
腸管通過時間も短くなりました。
すなわち、『おしゃぶりの使用により腸管の蠕動運動が亢進していること』がわかります。
その結果として、入院期間も短くなりました。
【経管栄養の赤ちゃんの場合】
鼻からチューブを入れて栄養を取る赤ちゃんでも、口の刺激が大事です。指で赤ちゃんの口を軽く触れてチュパチュパさせると、唾液や胃液が出て、消化管の動きが良くなります。これにより、赤ちゃんの消化機能が活性化し、健康状態が良くなります。
【健康的な習慣】
毎日しっかりと噛んで食べることや、ゆっくり食事をすることが大切です。こうすることで、消化管全体の健康を守り、体全体の健康も良くなります。よく噛むことは、消化を助けるだけでなく、食べ物の味をしっかり楽しむことにも繋がります。
【結論】
口腔機能と消化器系の連携を理解し、正しい食べ方を身につけることは、健康にとってとても大切です。口をしっかり動かすことで、消化がスムーズに進み、体全体が健康になります。日々の小さな工夫が、みんなの体を元気にしてくれます。
参考)『世界最強の歯科保険指導』岡崎好秀著