わかな歯科

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Q.なぜ食べられるようになると、顔に表情が出てくるのですか?

『なぜ食べられるようになると、

顔に表情が出てくるのですか?』

 食べる動きがなくなると、顔の表情が次第になくなり、凹凸のない“のっぺりとした顔”になってきます。

 表情のない顔は、顔面表情筋が拘縮して動かなくなることで、口角と鼻を結ぶ鼻唇溝がなくなります。

鏡を見て微笑で試してみてください。顔面表情筋は喜怒哀楽の表情を醸し出します。大頬骨筋により笑った時に鼻唇溝が浮きでます。

◎鼻唇溝は、顔面表情筋によって現れる筋であり、顔面神経麻痺では消失します。

 麻痺があると①顔面の表情が非対称②麻痺側の口角が下がる。健側に引かれる。③麻痺側の鼻唇溝が浅くなる。④麻痺側の閉目が不十分。⑤麻痺側の額の皺寄せができないなどの特徴が現れます。

 口腔ケアを行うとき、口唇のマッサージや歯ブラシで口腔内から頬の筋肉を伸ばすことは、口腔周囲筋のマッサージも兼ねています。

『顔面表情筋はどうしてできたの?』

 蛇やトカゲなどの爬虫類には顔面表情筋はありません。爬虫類は、口が裂けて頬がないので、食物も横から落ちます。一方、哺乳類は、名前の通り哺乳をします。頬がないと乳汁がこぼれてしまいます。だから頬ができました。

 

出生直後の赤ちゃんもまだ表情がありません。顔面表情筋は、目や口の開閉のために発達する筋肉だから、授乳などにより発達します。この動きが、赤ちゃん表情を次第に豊かにします。また、哺乳類は、頬があるおかげで口に食物を溜めて咀嚼することができます。これが、顔面表情筋をさらに進化させたと考えられます。

Ans.『哺乳すること・食べることが顔面表情筋を作り出してきた。だから、食べることができると、表情が豊かになります』

 赤ちゃんは、頬がぽっちゃりしています。頬の中には脂肪床があり、このおかげで口腔内の容積が少なくなります。それで、わずかの吸啜力であっても母乳を飲むことができます。

 その後、離乳が進み、咀嚼運動が始まると脂肪が咬筋に置き換わり、顔つきが変わってきます。

赤ちゃん顔から幼児顔、丸顔から卵形の顔になってくると、鼻翼から口角にかけての溝である鼻唇溝も見えるようになってきます。だから、この溝が見えない脳性麻痺児では、口腔機能のレベルが低いと考えられます。逆に、摂食訓練を行っていて、鼻唇溝が見えてきたら機能が高くなったと言えると思います。

 これは、成長期だけのお話ではなくて、入れ歯を装着した高齢者にも当てはまることで、義歯の使用は、咀嚼機能の回復のみならず、審美機能、さらに嚥下機能の弱っている場合に口腔容積を少なくすることで少ない労力で嚥下をサポートします。

『謎解き口腔機能学』岡崎好秀 他

顔面表情筋の発達より

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