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口内炎のお薬、なにかいいのがありませんか?①

口の中に口内炎がよくできるので、口内炎のお薬いただけませんか?』と言って来院される患者さんがしばしばいらっしゃいます。そんなとき、口の中の炎症を抑える目的でステロイドの含まれた軟膏を処方する事があります。口内炎の痛みは炎症によって生じているので、炎症を抑える効果のあるステロイドの入った軟膏を使って痛みを和らげることができるかもしれません。ただし、この口内炎の原因次第では、ステロイドの含まれた軟膏は使用出来ません。では、どのような時に使ってよくて、どのような時に使ってはいけないのか?使ってはいけない時にはどうすればよいのか?そもそもステロイドってどういったものなのかについて少しお話ししたいと思います。

ステロイドとは、副腎皮質から分泌される、生命の維持に必須のホルモンであり、炎症を引き起こす体の中での反応を強く抑える効果があるとされています。薬剤として使われるステロイドは、通常、抗炎症・抗アレルギー作用や免疫抑制作用による効果を期待して用いられます。ステロイド薬には、糖質コルチコイド作用と鉱質コルチコイド作用があり、糖質コルチコイドには、抗炎症・抗アレルギー作用と免疫抑制作用があり、また鉱質コルチコイド作用には、Na貯留作用から生じる浮腫や高血圧、電解質異常などの副作用があります。このことから、ステロイド薬を使用した場合には、注意しなければならない副作用が生じることがあります。たとえば、感染症(細菌・ウイルス・真菌)、高血糖、高血圧、骨粗鬆症、消化性潰瘍、脂質異常症、精神症状、眼科的合併症(白内障・緑内障)肥満などが挙げられます。従って、ステロイド薬の投与は、疾病に罹患していたり、抗がん剤の治療中であったり、加齢で身体の機能が低下している高齢者には特に注意が必要なことがわかります。

そんな副作用のあるステロイド軟膏を口の中に使用するわけですから、大半は流れて胃の中へ飲み込んでしまうことや、皮膚よりも口の中の粘膜の方が薬の吸収率はよいと言う理由から、これまで、ひどい口内炎を除いて、私はほとんどこのステロイド軟膏を副作用の発現を危惧してあまり処方しませんでした

しかし、最近では、

①内服薬に比べて、塗り薬はステロイドが0.1%程度しか含まれていない(だからといって副作用が起こらないとはいえない)。使い方を間違わなければ効果が大きい(最初はしっかり塗って、その後徐々に減らしていく)

②ステロイド軟膏を使わないことで痛くて食事がとれない場合など軟膏を塗らない事で起こる不利益が、塗った場合に起こりうる副作用による不利益を上回った場合

以上の理由から、適切に使用すれば、高い効果が得られ副作用は少ないとされていると言うこともあり、時と場合によっては処方する様になりました。

【口内炎にステロイドを含む軟膏を使うことのある疾患とは】

ステロイドの軟膏をつかっても良い場合は、ウイルスに感染していない口内炎や、口の中にカンジダなどの真菌(カビ)が繁殖していない場合です。本来、口内炎などの炎症反応とは、例えば、からだに侵入して悪さをする細菌やウイルスとからだを病気から守る働きをする白血球とが戦うことであり、赤くなったり熱を持ったりするのは血管を拡張して赤くなったり発熱したりすることで、傷を治そうとする生体の防御反応なので、その防御反応を止めてしまうことで、異物であるウイルスやカビがいる場合には、カビやウイルスたちが暴れ出してしまうことがあります。

よって、ステロイド軟膏をつかってさしつかえないのは 1.頬や舌を嚙んでしまってできた傷 2.栄養不足でできてしまった口内炎 3.義歯性潰瘍 4.自己免疫疾患による炎症 などといった場合に使用します。

【口内炎にステロイドを含む軟膏を使ってはいけない疾患とは】

ステロイドの軟膏を使ってはいけない場合は、ウイルス感染があったり、カビに感染している場合です

口の中や周りにできる口内炎の原因ウイルスの一つに口唇ヘルペスがありますが、このウイルスに感染している状態でステロイドの含まれた軟膏を塗るとウイルスが急激に増殖して症状が悪化します。体の中の免疫反応がウイルスの増殖を抑えてくれているのに、その免疫反応を抑えてしまうことで、ウイルスが増殖して暴れ出します。

では、細菌に感染している場合はどうでしょうか?細菌感染の場合はウイルス感染ほどステロイドにによる影響は受けないと言われています。これは、細菌に抵抗する免疫機構とウイルスに抵抗する免疫機構の違いからくるものです。それでも、ある程度はステロイドによって細菌に抵抗する免疫機構も抑制されます。そんなときは抗菌薬の含まれたステロイド軟膏もあります。

一方、カンジダなどのカビ(真菌)の場合は、カビに抵抗する免疫機構はウイルスに抵抗する免疫機構と同じ系統なので、ステロイドによってカビは暴れ出してしまいます。真菌に対してもステロイドを使った軟膏を使うことができません。

例えば、抗がん剤投与10日前後をピークに、下唇・舌の縁・頬粘膜に口内炎ができやすくなります。抗がん剤の副作用により、免疫機能の低下している患者さんの口内炎に対して、ステロイド軟膏はカンジタ性口内炎の誘因や細菌感染による悪化といった創傷治癒遅延作用などのように感染リスクを上げるために不向きとなります。

【口内炎を早く治すには】

では、具体的にどうしたら早く治るでしょうか?何らかの副作用をおこすかもしれないしれないお薬に頼るのではなく、先ずは、自分の自然治癒力を高めて、自分の免疫力で治すことが一番の治療法だと思います。

それには、

  1. 口腔内環境を整える:日常の歯みがきやうがい、さらに歯磨きやうがいだけでは取り切れない歯石を除去して、口の中の細菌を減らしていきます。定期的に歯のクリーニングを行う事で口内炎のできにくい口腔内環境にしていくことが大事です。さらに、放置された虫歯や歯周病があると、口の中が汚れて口内炎の原因となります。また、尖った歯や、外れかかった詰め物、合わない入れ歯は口の中の粘膜を傷付けます。
  2. 睡眠・栄養・休養:睡眠不足、栄養不足、偏食、ストレスは口内炎の原因となります。十分な睡眠、栄養、休息は口内炎の予防に欠かせません。さらに、痛みがひどいときは、刺激物や極端に熱いものや冷たいもの、辛いものは避ける。
  3. 口の中の保湿:乾燥した口の中は、唾液の粘膜の保護や修復する機能が失われてしまいます。加齢やストレス、口呼吸、薬の副作用により口腔乾燥の人が増加している昨今、水分の摂取やうがい、特に保湿が重要です。
  4. ハチミツなどを口内炎に塗って様子をみることも有効です。

まずは、このことからはじめると良いでしょう。ただし、① 同じ所の口内炎が2週間以上治らない場合や、 ② 痛みが強く、食事や会話に支障がある場合③ 口内炎が徐々に大きくなる場合④ 再発を繰り返す場合⑤ 口内炎が同時に多発にできる場合⑥ 口の中に痛みのない貼れやしこりのある場合は、速やかに医療機関に相談して診断を受けてから、ステロイド軟膏や含嗽のお薬を処方してもらって下さい。

患者さんにとって本当に必要な治療は何か?その治療を行った際、体に悪い影響はないか?長期的に快適にすごいことができるかを考えて治療を行うようにしております。

次回は、具体的にステロイド軟膏やうがい薬の種類についてお話致します。

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