口内炎のお薬、何かいいのがありませんか?②
前回、口内炎ができたら、すぐに薬に頼るのではなく、自分自身の免疫力を高めて治すことが長期的にみて体への負担が少ないのではないか?というお話をさせていただきました。ただし、2週間たっても同じ場所の口内炎が治らなかったり、痛みが強くなったり、次第に大きくなったり、たくさん口内炎ができる様な場合には、医療機関を受診して適切な診断を受けてから、ステロイド軟膏や含嗽剤を処方してもらうことが重要です。口内炎は、色々な種類があり、適切にステロイド軟膏を使用しなければ、更なる症状の悪化をもたらす場合があります。口の中にカビやウイルスが繁殖して、食事がとれなくなるくらい口の中が荒れてしまう事もあります。口内炎が何が原因でできたのかを正確に診断する事は難しいですが、適切な処置をしないと口内炎を引き起こしている本当の原因を見過ごしてしまうことにもなりかねません。
https://medicalnote.jp/contents/200821-003-DM
『口内炎の種類~種類ごとの症状、原因、できやすい場所とは?~』
東京歯科大学口腔腫瘍外科学講座 主任教授 野村 武史先生
【歯科で処方される軟膏】
ステロイド軟膏を処方する事ができる口内炎は、ウイルスに感染してなく、カンジタなどの真菌(カビ)が繁殖していない状態で、① 栄養不足、睡眠不足でできてしまったような口内炎、② 頬や舌を咬んでしまって出来た傷 ③ 義歯が擦れて出来てしまった傷などの時は、
”歯科用アフタゾロン”や”デキサルチン軟膏”、”オルテクサー口腔用軟膏”や”ケナログ口腔用軟膏”などのステロイド軟膏を処方することがあります。
(ケナログは、平成30年12月を持って販売中止となりました。)
さらに、細菌感染を伴っている場合は、”アクロマイシン軟膏”のような抗生剤の軟膏を使用します。
”テラコート・リル軟膏”は、感染症の治療に用いるテトラサイクリン系の抗生物質と副腎皮質ホルモンの配合剤なので、細菌の殺菌作用とステロイドの抗炎症作用の両方を併せ持っています。
また、口腔カンジタには”フロリードゲル経口用”がありますが、副作用や他の飲み薬との薬剤相互作用があるので注意が必要です。
あと、軟膏ではないのですがステロイドの貼付剤、”アフタッチ”は口内炎の部分に薬を貼り付けて使用します。外れやすいという欠点もありますが、薬の効果に加えて、食物などの刺激を遮断できる効果があります。
【被覆・保護剤】
被覆・保護剤として、2018年に”エピシル口腔溶液”を使用した口内炎治療が健康保険適応になりました。がん治療による口内炎(口腔粘膜炎)に適応され、口内炎の周囲に塗るとバリアができ、痛みを和らげます。1回の使用で8時間ほど効果が続きます。エピシルは薬効成分がなく、あくまで口腔粘膜炎表面を物理的に覆っているので薬の副作用はありません。ただし、保険適用になってるのはあくまでがん治療に伴う粘膜炎です。
あと、噴霧型のステロイド成分を含有した被覆材、”サルコートカプセル”は、通常一回1カプセルを1日2~3回、専用の小型噴霧器を使って、口内炎の所に均一に噴霧します。
【漢方薬】
難治性で軟膏や貼付剤で効果がなかったり、ステロイド薬が使いにくい方には漢方薬を使用する場合もあります。歯科でも処方される漢方薬もあり、”半夏瀉心湯”、”黄連湯”、”茵陳蒿湯”、”立効散”などが使用されます。
【うがい薬 (含嗽剤) 】
口内炎による痛みのために歯磨きが十分にできないことがあります。うがい薬を使用することで、口の中の細菌を減らして清潔にしていきます。効果としては、炎症を抑える効果のあるもの、消毒作用のあるものがあります。
炎症を抑えるものとして、含嗽用アズレン、アズノール錠、含嗽用ハチアズレがあります。
消毒作用のあるものに、ヨウ素の殺菌作用を利用するイソジン、界面活性作用のあるネオステリングリーンがあります。食後や寝る前に使用します。
口腔カンジダにはファンギソンシロップ(アンホテリシンB)などが使用されます。
上の写真は、どちらかが普通の口内炎でどちらかが初期の口腔がんです。はじめの頃は、専門家が見ても区別がつきにくいです。
一般的な口内炎(アフタ性口内炎)は、1~2週間程度で自然に治ります。しかし、治りにくい口内炎は、時に病院で治療を受ける必要があるものや口内炎以外の病気である可能性もあります。いつもと症状が違うと感じたときは、まずはかかりつけの歯科医院の受診を検討すると良いでしょう。また、常用している薬剤や治療が原因となっている可能性もあるため、治療を受けている主治医へ相談する事も大事です。